スバルのモータースポーツ活動を担い、そこで得られた知見やノウハウを基にコンプリートカーやパフォーマンスパーツを開発・販売するSTI(スバルテクニカインターナショナル)。
その活動内容を知れて、ファンの集う場となる施設が、東京都三鷹市大沢にある「STIギャラリー三鷹」。コロナ禍による緊急事態宣言に伴い一時休館をしていたが、2021年10月2日(土)に営業を再開した。当面の間は土・日曜日の10:00~17:00のみの開放となる。
同時に、新たな企画展示[What’s Driving?「ドライビングとはなんだ」展]が公開。なにやら深いテーマに感じるこの企画展示はどんなものなんだ? ひと足先に体験・取材した。
STIギャラリーは、これまでのモータースポーツ活動で活躍した歴代レース参戦車両トロフィー、コンプリートカーの展示をはじめ、ミニチュアカーを用いた年表などで構成された「常設展示」に加え、2019年9月に規模拡大し、スバルや未来のSTIとカスタマーとの関わり方について、思いを伝える場として「企画展示」エリアを開設した。
第3弾となる[What’s Driving?「ドライビングとはなんだ」展]では、運転を趣味とするドライバーを増やそう!をテーマに、プレイステーション4の「グランツーリスモSPORT」を用いたドライビングシミュレーターや、「ハンドリングマシン tS」と名付けられた体験装置を設置。STIが提唱する「運転が上手くなるクルマ」の体験が気軽にできる。
取材に対応してくれたSTI広報宣伝の篠田さんは、「来場者がドライビングとは何か?を振り返り、自分はどんなドライビングが好きなのか思い返してもらうことで運転する喜びを再認識してもらおう、という思いを込めました」と企画意図を説明してくれた。また、「来場者が語らうコミュニケーションの場所として、さらにはここでの出会いが、例えば一緒にバーベキューやツーリングに出かけるようになったり、クルマとともにある生活を楽しんでいただくなど、自分の好きなドライビングスタイルの気づきをこの場で感じていただきたい」という思いが企画展示の根底にあると語ってくれた。
STIギャラリーに入って左側が企画展示エリアで、真っ先に目に留まるのが壁に掲げられた「ドライビングとは? What’s Driving?」の文字に呼応する問答のパネルディスプレイ。100人100様、正解のないこの問いに対する自分の思いはどんなもの? 奥の体験で何かが変わるかもしれないし、変わらないかもしれない……、企画テーマの第一の仕掛けだ。
最高スペックのシミュレーターでニュルを走る
体験は大きく3つあり、注目はやはりドライビングシミュレーター「グランツーリスモSPORT」だろう。プレイステーション4に、FANATEC Podium racing wheel f1のシステムと4Kのモニターを組み込んでいる。シートは実際にモータースポーツでも使用されるレカロ製。カーボン素材のフルバケットタイプだ。FIAグランツーリスモチャンピオンシップでも使用される機材を体感できる、何ともぜいたくなひとときとなる。
「グランツーリスモSPORT」のソフト自体も今企画展示の専用設定だ。STIが参戦するニュルブルクリンク24時間レースのコース約25kmをスバル車でドライブできる(スバル車しか選べない仕様となっている)。
しかも、グランツーリスモSPORT全世界チャンピオン 宮園拓真選手のゴーストを収録しており、世界一の走りを経験できるのだ。
実際に体験したのだが、未経験だったのでコース上を走るのもままならないうえに、8分台で周回するという宮園選手のゴーストが一瞬で見えなくなるという散々な状態だった。路面状態をフリクションやキックバックで伝わるステアリングを握りしめ、なんとかコースを一周したあとの腕の疲労感は相当なもの。ホンモノのレースカーを駆るドライバーってスゴいねと感心しつつ、以前にNBRレースカーの取材をしたときに、“いかに楽に走れるマシンを作り上げるかが勝利につながる”と辰己総監督が語ったことばがより身近に感じられた。実際レースカーの乗り心地はかなりいいらしい。
別のブースには、宮園選手や辰己総監督がニュルの攻略法を直筆で細かく指南したホワイトボードがある。これとじっくり向き合いながら、シミュレーターに挑めばレコードラインを踏めるかもしれない……。過去のレースのできごとなども記されていたりと見どころも十分以上にある。
シミュレーターやホワイトボードには今後、スーパーGTでドライバーを務める井口卓人選手や山内英輝選手、さらには辰己英治NBR総監督がドライブしたゴーストの収録することも検討中とのこと。
STIの思想「運転がうまくなる」を凝縮したワンオフもののボール落としゲーム
STIに欠かせないモータースポーツとの関わりを体験するシミュレーターとは対照的なのが、「ハンドリングマシン tS」だ。円筒形からステアリングホイールとペダルが飛び出した筐体の実体は、ボール落としゲーム。ステアリング(左右)とペダル(前後)で傾きを調整しながら黒く引かれた線(0.1mmの溝状)をトレースしてゴールまでボールを転がすだけなのだが、これがまた難しい。
しかもステアリングの操作に関しては、剛性の可変機構があり、初期操舵応答性の変化を体験できるようになっている。
その目的は、ふだんのドライビングでどれだけていねいに運転できるかということ。ていねいな操作でスムーズにボールを転がせれば、実際の運転で同乗者が酔わなくなったり、クルマがどのような挙動をしているのかがわかるようになる、ということらしい。
剛性の可変機構はいわゆる車体の遊びや緩さのあるノーマル状態と、STIが開発したパフォーマンスパーツ「フレキシブルドロースティフナー」を装着して引き締めた車両をそれぞれ再現するもの。
前出の篠田さんは「スポーツシューズの紐を緩めて運動するのと、キュッと締めて運動するのとではどっちがやりやすいか? というのと同じようなものです」という。ボディの剛性を引っ張ってキュッと固めることで運動性能ってよくなるという、STIのクルマづくりアプローチを知れるものだ。
ダルなステアリング操作が締め上げられる(剛性が上がる)と、操作に対してリニアリティが増してより“意のまま感“が感じられるようになる。ていねいな運転をするためにふだんからセンサーを働かせるきっかけが楽しく学べる。しくみも操作も単純だから子供でも遊べる。そしてこの体験が未来のクルマ好きになったり、クルマとの関わり方に好ましい影響につながったりするかもしれない。シンプルだが奥が深い。
「ハンドリングマシン tS」はSTIの完全オリジナルでワンオフもので、操作性などにも徹底的にこだわったという。奥深さとしてはシミュレーターよりも上かもしれない。
セルスター、3カメラで前方や車内の360°と後方を鮮明に録画するドライブレコーダー「CD-30 /CS-361FHT」が発売
「ドライビングとはなんだ」の答えを誰かに伝える
3つめの体験は「ドライビングカルテ for STI」。このブース内には、STIの全社員が一番大事にしている道具の写真とともに、「ドライビング」への思いをつづっている。
企画展示エリアの中心には、床にTHINKとTALKと書かれた語らいのスペースがある。ここはドライビングについて考えたり、知らない人どうしが語らう場所。「ドライビングとはなんだ」についての答えは、ベンチに置いてある用紙に書き込んで「ドライビングカルテ for STI」内に貼れる。みんなの答えが、誰かのヒントになるのだ。
もしかしたら、STIの未来は来場者によって動かされるかもしれないし、知らない人たちどうしが新たなコミュニティを創出するかもしれない。
レースだけじゃない、意外と敷居の低いSTIを知り、楽しめる体験型企画だったのだ。
〈文と写真=ドライバーWeb編集部・兒嶋〉
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マギーんちのシムのほうがすごいちゃうんか