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もう大衆車とは言わせない──上質&スポーティへと大胆に変貌した新型カローラ スポーツ公道試乗記

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もう大衆車とは言わせない──上質&スポーティへと大胆に変貌した新型カローラ スポーツ公道試乗記

カローラは1966年に誕生した初代からかぞえ、50年を超える歴史を持つトヨタのメインモデルのひとつだ。世界16拠点で生産され、これまで150以上の国と地域で4600万台以上販売されたというからスケールが違う。

初代からライバル(日産 サニー)よりもちょっと上をいく余裕と高級感を売りにしていたが、長い歴史のなかにはスポーツドライビングの楽しさが受けた1983年登場のカローラレビン、兄弟車のスプリンタートレノがあった。型式をAE86と呼び、今の86のネーミングの元になったモデルである。

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そんな歴史の中で12代目のカローラが誕生した。セダンのカローラアクシオ、ワゴンのカローラフィールダーとは別のハッチバックスタイルで、「カローラスポーツ」という名前を与えられた。コンパクトなハッチバックスタイルのクルマにパワーのあるエンジンを搭載し、スポーティに元気よく走るクルマを「ホットハッチ」と呼ぶことがあるが、このクルマは正にここを狙ったのだ。

カローラユーザーの年齢層がどんどん高くなっているが、カローラスポーツは20代、30代の若い人達に受け入れられるクルマを作ろうと企画されたモデル。この12代目がAE86、昔のカローラレビンの再来になるのか興味あるところだ。

エクステリアはここ何代かのカローラとは別物の、立体的な造形になった。特にリアはハッチバックのドア外板を樹脂製とし、3次元デザインになっている。大きな空気取り入れ口があるフロント部分も含めボディ全体に躍動感がある。タイヤは条件が許す限り四隅に配置するので、外観から“踏ん張る”イメージが受け取れる。フェンダーギリギリまでタイヤが横に張り出せるよう、アーチの折り曲げをL字型からI字型にするなど、これまでのカローラにはないチャレンジをしているのも、若い人達へのアピールになるだろう。

インテリアはクオリティが上がっている。チープさを感じないマテリアル類は、手触りも含めて上質感がある。デザインもこだわっており、たとえばダッシュボードも、助手席側はあっさりさせて空間的ゆとりを持たせ、ドライバー側はスイッチなどの操作類をまとめてメリハリをつける。シートもスポーティなハイバック風セミバケットタイプとし、座り心地、身体のホールド感ともに良くできている。また、ハイバック風ではあるが、ヘッドレストは別体で動くようになっている。

また、グレードによってシートがツートーンカラーになり、ダッシュボードにステッチが入るなど、乗り込むときのワクワク感を増し、運転時の心地良さを向上させるための対策が取られているのも新型の特徴だ。 

最初に試乗したのはハイブリッド G の”Z”というグレードだ。1.8リッターエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッド車である。タイヤは225/40R18 88WというダンロップSP Sport MAXX 050だった。

赤いアクセントが入ったセミバケットシートに収まると、腰がきっちり収まり、走り出す前からちょっとスポーティなドライビングをする雰囲気になる。すでに熟成したトヨタのハイブリッド技術により、アクセルペダルの反応はとても自然で扱いやすい。電気モーターで走り始めて、エンジンに切り替わるところでもショックはなく、またモタモタした感じもない。アクセルペダルを深く踏み込むとそれに比例したように速く走れるからストレスもない。

ハイトが低く太いタイヤを履いているので、しっかりしたグリップによって安心感は高い。また、乗り心地が良いのは意外だった。履いているタイヤから乗り心地の面は期待していなかっただけに、良い意味で裏切られた。これはしっかりしたボディ、シャシーによって不快な振動が乗員に伝わってこないからだと思われる。スポーティな味付けだけにサスペンションはやや硬めだが、乗員は悪い印象を受けることはない。

この良さはプリウス、CH-Rに続く第3弾のTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)によるもので、新型カローラ用に熟成したこのプラットフォームにも磨きがかかっている。これにくわえて新開発のダンパーが功を奏しているようだ。

今回試乗して1番感心したのはハンドリング性能だった。これまでのトヨタ車にはなかった上質な味である。単にコーナリングスピードが高いとか、強いグリップで安定して走れるというものではなく、ハンドルを切っていったときにボディが捻れず素直にノーズが入ってくるから気持ちが良かった。そのときの手応えもダイレクトな感触で良い。またカーブを曲がって直進に戻るときも、ハンドルの戻る力が自然で良かった。これはステアリングシャフトの径を大きくして剛性アップした効果だそうだ。

次に乗ったのはカローラスポーツGで、1.2リッターターボエンジン車だった。ホットハッチでターボエンジンというと“ジャジャ馬”で楽しそうなイメージがあるが、そこまでのパワーがあるエンジンではない。サーキットを走ったらパワー不足を感じるかもしれないが、一般道では充分なトルクによって軽快な走りができる。

トランスミッションはスーパーCVT-i(10速スポーツシーケンシャルシフトマチック付き)で、ハンドルの裏に付いたパドルによってドライバーは自在にレシオを選択できるし、Dレンジのまま走ってもCVTによくある“エンジン回転だけ先にいく”といった、不自然さはないプログラムになっているので走りやすい。

6200rpmからレッドゾーンが始まるターボエンジンだが、トルクの出方はフラットな印象だ。ドライブモードはスポーツ、ノーマル、エコの3種類から選べるが、それぞれの特徴(スポーツは引っ張り気味でシフトアップ)を出しつつもフラットトルクによりクセがないので、好みでどれかを選んで走る価値はある。

燃費性能は、ハイブリッド車にこそ及ばないがリッターあたり17.2km(JCモード)を達成する。標準のアイドリングストップ機構は、エンジン停止時間がこれまでより長く、エアコン温度などの条件が許せば連続で3分間可能である。インストルメントパネルにその時間表示もでる。また、高速道路の100km/h巡航時、エンジン回転数はノーマルモードで1600rpm(スポーツモードで2200rpm)と低く、燃費良く走れると思う。それでいて、ワインディングロードではパドルシフトを駆使し高回転域まで使い楽しく走れるだろう。

ハンドリングと乗り心地は、18インチを履いたハイブリッド車の方が良かった。ガソリンターボ車の履くタイヤは205/55R16 91VのエコピアEP150だった。いわゆる“エコタイヤ”のせいか、グリップ不足のようで応答性のシャープさとダイレクトさがなくなり、ややモノ足りない。また、乗り心地も硬さは問題ないが、スッキリした感じではなく、タイヤのハイトが高い分だけ振動の残りを感じる。ターボエンジン車でも18インチを選べるから、ハンドリング性能を求めるならそちらを選ぶといいだろう。

ハイブリッド車もターボエンジン車もクルマの基本であるプラットフォーム(TNGA)の仕上がりが良いので、どちらを選んでも良いと思う。名前からくるイメージとは異なりターボエンジン車の方が普通で、ハイブリッド車の方がパワフルに走れる。

ただし、市街地走行が多いならハイブリッド車が良いだろう。スピードのアップダウンが多いほどハイブリッドの特性が生きるからだ。低いスピードでは低回転からトルクがある電気モーターで、その先は1.8リッターのエンジンが力強く走れる元になり、どのスピード域でも元気よく走れる。

新型カローラは飛び抜けているところこそないが、そつなく作られているのでドライバーを選ばない。若者が選ぶクルマとしても悪くないと思う。ただし、パワーソースはハイブリッド/ガソリンどちらを選ぼうと、タイヤは18インチを選択することを強く勧めたい。

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