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【ヤマハ XSR900GP】開発者が語る「ただの80年代オマージュやレプリカを作ったわけじゃない」

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【ヤマハ XSR900GP】開発者が語る「ただの80年代オマージュやレプリカを作ったわけじゃない」

ヤマハ発動機から間もなく登場する、新たなスポーツヘリテイジモデルが『XSR900GP』(発売日2024年5月20日/価格143万円)だ。今回、その開発メンバーに話を聞くことができたため、ディティールやハンドリングに込められたこだわりを、前編と後編の2回に渡ってお届けしよう。

【インタビュー参加メンバー】(敬称略)
PF車両ユニット PF車両開発統括部 SV開発部
プロジェクトリーダー
橋本 直親

発表直後の『XSR900 GP』に長蛇の列も、赤レンガにヤマハ車ずらり 新規ファン創出へ魅力アピール

PF車両ユニット PF車両開発統括部
SV開発部
野原 貴裕

PF車両ユニット PF車両開発統括部
車両実験部 プロジェクトグループ
細 彰雄

PF車両ユニット PF車両開発統括部
車両実験部 プロジェクトグループ 主事
田中 大樹

PF車両ユニット 電子技術統括部
システム開発部 設計1グループ
中田 周太郎

◆欧州での『XSR900DB40』発表は、開発者にもサプライズだった
「XSR900GP」らしきモデルが公の場に姿を現したのは2023年7月、イギリスで開催された「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」でのことだ。会場では、元GPライダーのニール・マッケンジー氏がデモンストレーション走行を行い、その時は「XSR900DB40」という車名がカウルに記されていた。

DBとは、かつてのGPマシン「YZR500」に投入されたデルタボックスフレームに由来する。その40周年を記念し、ネイキッドの『XSR900』をベースに制作したモデルがXSR900DB40だった。XSR900のフレーム断面は中空のボックス状ではないが、デルタ状の外観には確かにあの頃の雰囲気がある。その意味で、時代の継承を表現するにふさわしい素材であり、イベントに彩りを添えるショーモデルとして、大きな役割を果たすことになった。

----:振り返ってみると、XSR900DB40は限りなく市販車に近い、言わば匂わせモデルでしたね。保安部品を外し、本来ヘッドライトが収まるスペースにはダクト風の擬装が施されていたものの、XSR900GPとの間に差異はほとんど無く、大部分がそのままの意匠で送り出されることになりました。

橋本:欧州におけるプロモーションの手法は、欧州の拠点に委ねている部分も多く、グッドウッドでの公開は、実は我々にとってもちょっとしたサプライズだったんです。結果的に大きな反響があり、ポジティブな声を多数聞くことができました。

----:その後、XSR900GPは「ジャパンモビリティショー2023」(日本)、そして「EICMA」(イタリア)での正式披露へ至ったわけですが、企画自体はいつ立ち上がったのでしょうか。

橋本:XSR900はデルタボックス風のアルミCFダイキャストフレームを持ち、リアまわりにはシングルシートを思わせる造形が与えられています。また、80年代のGPマシンを思わせるカラーも用意していましたから、その発展形の模索は、ごく自然な流れでした。とはいえ、XSR900の開発と並行していたわけでも、その構想が当初からあったわけではなく、カウルの有無を含めた様々なスタイルを探る中、徐々に具体化していきました。

◆「80年代」への思いを形にした
----:XSR900にも80年代の要素が散りばめれていますが、XSR900GPは、それ以上ですね。

野原:「あの頃」を思わせる意匠を挙げていくとキリがありませんが、だからと言って、なんでもかんでも盛り込むと、チグハグな印象になりかねません。どこか一部分が際立つのではなく、全体のバランスが整うように気をつかいました。

----:それでもあえて、デザイン上のポイントになる部分があるとすれば、どのあたりでしょうか。

野原:個人的には、フレームをシルバーにしたところが、当時感にひと役買っていると考えています。スケッチ段階ではブラックで進んでいたのですが、途中でこの色を提案させてもらいました。

----:確かに80年代のYZR500のフレームはシルバーで、90年代に入ってからはブラックに塗装されました。XSR900GPのシルバーは、当時と同じ色なのでしょうか?

野原:YZR500のシルバーフレームはアルミそのものの色なので、塗装によるXSR900GPのそれとは異なります。塗料の調合によって、雰囲気を近づけているわけですが、現行の他のモデルにはない色味で、印象を大きく変えているポイントだと思います。

----:野原さんには2年ほど前、XSR900が登場した時にも話をうかがいました。その時もやはり、80年代への強い思い入れを感じました。

野原:リアルタイムではないのですが、昔からモータースポーツが大好きだったため、歴史を振り返っていくと、必然的に80年代に行き着くことになります。それが高じて学生の頃は当時のレーサーレプリカを乗り継ぎ、たとえばフレームとアッパーカウルをつなぐステーなどは、XSR900GPの開発にも活かすことができました。

----:ステーの存在もさることながら、大きくラウンドしたスクリーンの形状、別パーツで構成されたナックルガード、イエローのゼッケンベースなど、一定の世代には懐かしいアイテムばかり。開発陣が楽しんで作っている様が伝わってきます。

橋本:バイク全体の見た目もそうですが、乗車した時のコクピットビューの雰囲気や質感に気を配っています。ステー先端のアルミナットとカラー(TZR用と同寸のものを復刻)、それを留めるベータピン、肉抜き加工を施したメーターステーなど、その頃のレーサーを下敷きに、可能な限りアイデアを盛り込みました。

◆レーサーレプリカやSSを作りたかったわけじゃない
----:開発メンバーは、若い人が多いですよね?

細:かつてのレーサーは弊社で多数保有していますし、ビデオや動画もかなり観ました。やはりあの頃のことになると、世代に関係なく、みんな熱くなるんですよね。お客様にとっても憧れが強い時代でしょうから、その期待に応えられる仕上がりでなくてはいけません。ディスカッションを幾度となく繰り返しながらの、楽しい時間でもありました。

----:レースとレーサーレプリカ全盛期が背景にあることを踏まえると、あえてハーフカウルにしたことは、大きな決断だったのではないでしょうか。

野原:ここは当然フルカウルでしょう、という議論はかなりありましたし、実際試作もしています。ただし、このモデルはあくまでもGPマシンを「モチーフにした」ものであり、レーサーレプリカやスーパースポーツとして作っているわけではありません。幅広いユーザーに、カジュアルに楽しんで頂きたい、という思いから今回の仕様になりました。

田中:とはいえ、単にそれっぽい形状のカウルを装着したわけでもありません。ウインドプロテクションと放熱効果のバランスを図り、あのナックルガードやウインドスクリーンも当時のGPマシンをオマージュしつつ、普通に流して走っていても空気を効果的に整流する機能パーツになっています。

----:昔の意匠と最新の機能の融合という意味では、メーターにもそれが表れていますね。

中田:フルカラーTFTメーターでありながら、アナログ風タコメーターを中央に大きく配した専用画面を用意しています。グラフィックデザイナーを交え、様々な案を経て形になったビジュアルもそうですが、スロットル開度や吸排気音に対する針の動きにもこだわり、テストライダーに逐一試してもらいながら作り込みました。

田中:見え方と体感と音。これらがすべて揃ってこそのタコメーターですから、少しでもずれがあると違和感が残ります。ハンドリングやエンジン特性はもちろん、こうした部分もまた、コントロール性や一体感に影響するため、かなり時間を割きました。

----:ありがとうございます。後編では実際の乗車感も含め、さらに詳しくお聞かせください。

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みんなのコメント

5件
  • nao********
    あの頃のレーサーレプリカ、当たり前のように見て触れて感じていました。
    が、しかし今にして思えば技術やデザインは信じられないくらい特別でチャレンジのマシン達だったんだなと思います。 
    現代は排ガス規制やマーケットの縮小、人口減、バイク車離れなどなど様々な要因がありますね。 そんな中でもバイク人気が続いていくことを願います。
    皆様安全ライディングで良いGWをお過ごし下さい。
  • son********
    シートカウル長くして。
    イエローストロボとTECH21カラーも欲しいね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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