市販車にかなり近い状態だと推測できる
ソニーホンダモビリティが、2026年に納車をスタートさせるアフィーラに、テスラのNACS規格を採用することを決定。さらに、判明した最新モデルのアフィーラのプロトタイプのEV性能、および懸念点などを含めて解説します。
ソニーとホンダはEVに何をもたらすのかーEVにおけるプロダクトデザインとは
まず、ソニーホンダモビリティは、ソニーとホンダが合弁して立ち上げた自動車ブランドです。初のEVであるアフィーラのプロトタイプを発表し、実際の市販バージョンにおいてどのようなスペックとなるのかに大きな注目が集まっている状況です。
そしてソニーホンダは、直近においてアフィーラの新たなプロトタイプを発表しました。この「アフィーラプロトタイプ2024」で重要な観点は、その発売時期が刻一刻と近づいてきているという点です。具体的には2025年の春、つまりあと半年ほどで北米市場においては先行受注がスタート。そして、2026年の春にも、北米市場におけるアフィーラの納車がスタート。そして日本市場は2026年の後半の納車スタートとなります。
いずれにしても、2025年の春までには、先行受注する際に主要なスペックを公表する必要があります。よって、今回発表された2024年モデルのプロトタイプは、じつは市販車バージョンにかなり近しいのではないかと推測することができるわけです。
まず、車両サイズが全長が4915mm、全幅が1900mm、全高が1460mm、そしてホイールベースが3000mmという中大型セダンセグメントに該当します。たとえばメルセデス・ベンツEQEが、全長4955mm、全幅1905mm、全高1495mm、そしてホイールベースが3120mmと、EQEに非常に近しいサイズ感というイメージです。
そして、今回のアフィーラにおいて注目するべきは充電性能でしょう。まず期待できる点として特筆するべきは、その充電規格です。すでにホンダと高級ブランドのアキュラは揃って、北米市場でテスラのNACS規格への移行を表明済みです。2025年以降のモデルから、順次CCS規格からNACS規格を搭載する方針を示しています。
ところが今回、北米とともに発売される日本でも、NACS規格を採用する方針を表明してきた格好です。
じつは私自身、繰り返しアフィーラに対してNACS規格を実装するべきであると主張してきたという背景が存在します。
NACS規格を採用するテスラスーパーチャージャーの利便性の高さというのは、
・充電プラグと充電ケーブルが非常に軽量であることによって片手で充電プラグを車両と接続することが可能 ・250kW級という日本国内では最速級の超急速充電性能を発揮可能 ・1カ所に複数基設置されているために、充電渋滞であったり充電器の故障に遭遇するリスクが極めて少ない ・あらかじめ紐づけてあるクレジットカード経由で充電料金が自動的に決済されることで、別途充電カードを作成したりスマホアプリを追加でインストールする必要がない ・車両側のディスプレイ上から、リアルタイムの充電器の利用状況を把握可能であったり、目的地に充電器をセットすると、自動的にバッテリーの昇温を行って最短の充電時間を実現 ・新東名や東北、関越自動車など、主要高速道路上のインター近隣に設置していることで、経路充電としての利便性が極めて高い
これらの観点を総合すると、現状、日本国内で最高の充電体験を提供できており、そのテスラスーパーチャージャーを使用するためには、NACS規格の採用が不可欠です。よって、NACS規格の採用を正式表明しながらテスラとも提携することによって、2026年末に発売されるアフィーラは、日本でもテスラスーパーチャージャーを利用することが可能となったわけです。
その一方で、懸念するべき点は、その最大充電出力という点でしょう。アフィーラプロトタイプでは最大150kWという急速充電出力に対応すると発表しています。じつはこの充電出力から、800Vシステムの採用を断念したという可能性が浮上しています。じつはホンダは現在発売中のプロローグとZDXでは400Vシステムを採用。中国市場のeNシリーズ、イエシリーズ、Lingxiシリーズも揃って400Vシステムを採用しています。
他方で、このアフィーラに求められるのは、フラグシップとしてのEV性能を含めた車両性能、およびソニーのもつエンタメ性能の融合です。つまり、現在フラッグシップの主流となっている800Vシステムの採用を見送るということは、EV性能である種の妥協を行ってきたという見方が出てくるわけです。
ハード面の最適化を妥協している可能性も
とくに800Vシステムの採用見送りで問題となるのは充電時間という観点です。アフィーラには91kWhという、比較的大容量バッテリーが搭載されることも発表。よって150kW級の充電性能の場合、SOC80%まで少なくとも30分以上の充電時間がかかるはずです。そしてホンダは、グローバルで展開していくEV専用シリーズであるゼロシリーズの発表会において、充電時間を15分程度にまで縮める方針を表明済みです。それを踏まえると、充電時間30分以上というのは、2026年に発売されるEVとしてはスペック不足感が否めません。
さらに、その800Vシステムの採用見送りの場合、動力性能という点でも懸念が残ります。というのも、アフィーラは前後にモーターを搭載するAWDシステムを採用するものの、それぞれ最高出力180kWを発揮する永久磁石同期モーターを搭載すると発表。最高出力は360kWということになります。おそらく2.2トン程度となるであろう車両重量を総合すると、おそらくゼロヒャク加速は概ね4秒程度になるのではないかと推測可能です。この動力性能はフラグシップモデルとして至って平凡となります。
つまり、これらの点から何がいえるのかといえば、このアフィーラは、おそらく開発期間の短さなどの制約から、EV性能や動力性能などのいわゆるEVとしてのハード面の最適化をある程度妥協している可能性があるということです。つまり裏を返せば、このソニーインサイドともいえる、エンタメやADASの性能が期待以下であった場合、アフィーラの競争力の大部分はなくなってしまうわけです。
ちなみに、この360kWという最高出力と91kWhというバッテリー容量に関して、じつはプロローグとZDXのスペックに酷似しているという点が気になります。というのも、まず400Vシステムの91kWhのバッテリーについて、プロローグでは85kWh、ZDXでは102kWhバッテリーを搭載。もしかしたら、バッテリーマネージメントシステムなどの骨格を共有しながら、バッテリーセルの搭載数を調整しているだけの可能性が出てきています。
その上で、360kWという最高出力は、じつはアキュラZDXのAWDグレードとまったく同じ出力です。よってアフィーラの搭載モーターは、アキュラZDXのモーターをそのまま流用している可能性が出てきているわけです。
よってこの点からも、ソニーホンダがハードウェアの開発で、アフィーラのために1から設計開発する時間がなかったのではないかと推測できるわけです。果たして、このハード面の性能を補うような、ソフト面での価値をどこまで追求することができているのか。その期待を超えるような完成度に期待できるでしょう。
エンタメ性能という観点では、静粛性・音響性能・ハイエンドADASという観点に注目しています。とくに、
・静粛性はドイツ御三家に匹敵するような静粛性を達成できているか ・音響システムはエンタメ性能を最大化する上で極めて重要。30スピーカー、最高出力2000W級、ヘッドレストスピーカーやロードノイズキャンセリング機能なども含めたハイエンドスピーカーシステムの搭載 ・ハイエンドADASは、すでにQualcommとタッグを組んで、SoCの演算能力も800TOPSを実現するとも説明。スマートサモンや自動駐車機能は当然として、高速道路上における追い越しや分岐、工事などへの対応を含めたハイウェイNOA。 さらにOTAでのアップデートを通じて、信号対応や右左折、ラウンドアバウトや転回、障害物などに対する緊急回避挙動などを含めた市街地NOAの将来的な導入
これらの点にも期待することができるでしょう。
いずれにしても、2024年最新のプロトタイプとして発表されたアフィーラは、先行受注があと半年後に迫っていることから、プロダクションバージョンにかなり近しいのではないかと推測可能です。EV性能や動力性能というメインスペックは、このままプロダクション仕様に継承される可能性があります。
他方で、これらのスペックが概ね踏襲された場合、EV性能や動力性能という点で、やはりソニーホンダが開発期間の短さなどを理由として、800Vシステムの採用を見送ったり、2024年に発売されたアキュラのモーターを流用するなど、ハード面のスペックの最適化を妥協してきたのではないかと推測することもできます。
よって、NACS規格の採用による充電体験の向上によって、ハード面のスペック不足感をどこまで埋めることができるのか。何よりも、ハード面のスペック不足感を打ち消すような、エンタメ性能や自動運転システムをどこまで作り込んでいるかが、アフィーラが成功するのかどうかのもっとも大きなわかれ目でしょう。
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みんなのコメント
車メディアって稚拙だなぁ