ジープの新しい「グランド・チェロキー」と「コマンダー」の上陸にあわせて、ラウンドテーブルがおこなわれた。近年、販売好調なジープの特徴や魅力、そして社の変革などを首脳陣が語る!
ジープは家族の愛の道具になった
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10月24日(月)、ジープの新型車2車種の発表会が、東京・上野にある国立科学博物館で開かれた。ひとつは3列7人乗りの中型SUVの「コマンダー」、もうひとつはジープのフラッグシップSUV、「グランド・チェロキー」の5人乗り仕様で、どちらも同日から受注が始まっている。
発表会がなぜ国立科学博物館だったかというと、ジープとユニバーサル映画「ジュラシック・ワールド」とのコラボレーションを記念して、巨大な化石標本が展示された地下2階の空間が選ばれたのだ。発表会が始まる直前まで、会場には動物や鳥の鳴き声がとどろく、という演出もあって太古の地球に思いをはせた。おそらく参加した記者の多くがそうだったろう。世界の主役は恐竜たちだった……。
ステランティス・ジャパンのポンタス・ヘグストロム社長によると、ジープ・ブランドの販売はニッポンでも好調で、2021年は1万4000台を達成、「他の追随を許さない成長」を遂げている。しかも2009年から2021年にかけて売り上げを伸ばし続けていた。
パンデミックに半導体不足、ロシアによるウクライナ侵攻と、たいへん厳しい環境にある2022年は、それでも1~9月で7689台を販売。これは前年同期比69.2%ながら、受注は新記録で、年末までに1万台超えを目指す。
もっとも売れているのはウィリス・ジープの系統に連なるラングラーで、2021年秋に国内で発表したジープ・ブランド初のピックアップ・トラック、グラディエーターは「期待をはるかに超える反応」だという。同じく昨年の年末に発表した新型グランド・チェロキーLも、「高めの価格にもかかわらず、プレミアムな内装が評価されて大成功」。「恐竜とは違い、ジープは進化し続ける」ということばで、ヘグストロム社長は自身のスピーチを締めくくった。
続いて、ステランティス・ジャパンのマーケティング・ディレクターのトマ・ビルコ氏が登壇し、「ジープには長い歴史がある。コア・バリューは自由(フリーダム)、本物(オーセンティシティ)、冒険(アドベンチャー)、情熱(パッション)の4つである」とあらためて紹介した。
「クラフツマンシップによる、ディテールとノウハウによるモノづくり。ジープはつねにオリジンに忠実で、ジープの精神を守りながら、あなたのために進化してきた。ジープはアメリカの大自然のなかで移動するための理想的なツールです。頑丈でシンプル、信頼できるクルマとして生まれ、商品も洗練されて魅力が広がってきた。ジープ・ファミリーもますます大きくなり、多様で豊かになっている。ジープは現代では家族になくてはならないツールになった。外出するときにも、だれかに会いに行くときにも、家族のラブのツールだと思います」
なるほどなぁ。故・徳大寺有恒さんから、子どもの頃、進駐軍のジープを見て、「なんてカッコいいんだ!」と思ったという話を聞いたことがあるけれど、そういう体験した方も少なくなり、ジープは家族の愛の道具になったのである。
クオリティの大幅改善ここからは個別の話に移り、まずはコマンダーのデザインについて、デトロイトから来日したインテリア・デザインの副社長、クリス・ベンジャミン氏がその意図を語った。
すなわち、エクステリア的にはラインのバランスをとることを重視した。ショルダー・ラインとクロームのラインで、エレガントな感覚、ダイナミックな感覚を与えている。ジープのDNAを意識し、台形のホイール・アーチを採用している。
「ほかのメーカーでも採用例がありますが、私たちがオリジナルです」ということばで、筆者はトヨタ「RAV4」をすぐさま思い浮かべた。
「7スロット・グリル」と呼ばれる、ジープのアイコンの縦に細長い7つの溝を持つグリルとヘッドランプと統合にアスペクト・レシオを強調している。視覚的にフロントとグリルが統合されている。クロームの上下のラインがあって、クラムシェル(貝殻)のように挟み込む。ヘッドライトは宝石のようなイメージ。内部は黒くなっていて神秘的な感じ。
リアのライトの赤い部分は細い線にして、アスペクト・レシオを幅広く見せている。その下のアイス・キューブ状の白いライトは軽い感覚を出している。
ロング・キャビン、ブラック・ルーフで、美しいクロームのラインが、ほかのクルマとは違ったものに見せている。どこに行っても、なんでもできる(「Go Anywhere. Do Anything」はジープの掲げる標語のひとつ)。本当にそれができるクルマ、いろんな状況に立ち向かって、想像を超えた冒険に連れて行ってくれる、そういうクルマであることを示している。
一方、クリスさんの担当であるインテリアは違うやり方を使っている。まず、プレミアム感を与えたい。「手の届く価格のクルマであっても、なかに入るとお金を払った以上の価値がある」と思ってもらえるような工夫が施されている。
ダッシュボードをクリーンでシンプルな形状のメタルのフレームが横断している。ダッシュボードとドア・トリムの上部はブラックになっており、下部はボディ色との組み合わせで、ブラックかブラウンになる。黒と黒の2トーンだとモダンなコントラストに、黒と茶色だと温かみがある。
「1mmの単位までこだわった。細かくつくり込んでいる。センター・ディスプレイのデザインは浮いているようだが、しっかりと統合されている」と、クオリティについても自信たっぷりだった。
アメリカ車の内装は、全般に急速によくなっている。もちろん他社のことまで訊ねようと思ったわけではなくて、なにがあったのでしょう。質疑応答の時間に、筆者はこんな質問をクリスさんに投げかけた。
「2008年頃、当時、あるジャーナリストが、アメリカ車の内装はプラステイックの水鉄砲と同じだと酷評しました(笑)。FCA(現ステランティス)で、インテリアの改善が始まったのはちょうどその頃です。あとは自然に進化して、いまに至っています。ミッションは“つねにベストであること“です」
それまでジープ、クライスラーでは、内装の生産はサプライヤー頼りだった。社内でインテリアの基準をつくり、それをサプライヤーに要求するようになったのが2000年代だという。つまり、クリスさんがボルボからやってきた頃のことだ。自身ははっきり語らなかったけれど、クリスさんの功績は大きいらしい。
その後、インテリアの賞を受賞したりして、パートナーシップが強化された。サプライヤーにも、「こういうところと一緒にやっていきたい」という気持ちが固まったというのである。なんでもそうだけれど、改革というのは骨の折れる仕事である。最初は嫌がれたのではあるまいか。勝手に筆者が映画みたいなストーリーを想像しているのかもしれない。とのかくクリスさんは「We love it. 続けていきたい」と語ったのだった。
なお、コマンダーはエンジン横置きのレネゲード、コンパスと同じプラットフォームを使って開発された、ブラジル、インドなどの新興国向けの7シーターで、インドで生産されている。ダッシュボーのデザインはコンパスと基本的に同じだけれど、コマンダーはよりプレミアムな位置づけなので、素材が異なる。日本仕様のパワートレインは、2.0リッター4気筒ディーゼル・ターボと9速ATのみ。駆動方式は4WD、グレードは「リミテッド」の1択だ。
最高出力170ps、最大トルク350Nmを発揮するディーゼル・エンジンはフィアット系で、インドで生産している。日本にやってくるのもインド生産車だ。日本向けのチェロキーは昨年で生産が終了になり、同時期にインド名「メリディアン」ことコマンダーが発表になった。あ。チェロキーの後継にピッタリ! コンパスとグランド・チェロキーのあいだを埋めるモデルになる。ということで白羽の矢が立ったのだそうだ。価格は597万円。30~40代で、子どもがひとり以上いるファミリー層をターゲットにしている。
受注の4割が1000万円を超える最上級グレードもう1台のグランド・チェロキーの発表は休憩をはさんでおこなわれた。筆者も小休止させていただきます。
グランド・チェロキーの発表会は、ステランティスのインド・アジア太平洋地域のセールス・マーケティング・オペレーション上級副社長のビリー・ヘイズ氏のお話から始まった。
東京在住で、コネッチカット出身。レッドソックスの大ファンで、4人の子どもがいて、グランド・チェロキーに乗っている。と自己紹介し、ファミリーについて語った。
「ジープというのは単にクルマのことではない。自分が心から願う場所に連れて行ってくれるクルマです。家族、ファミリーとはなんでしょう? だれもがなんらかの形の家族に属しています。血縁、養子縁組、結婚、それを超えるモノではないでしょうか。家族というのは色々な形がある。伝統的な家族、ひとり親、パートナー、おじ、おば、親類まで含めた大家族。その家族も完璧ではありません」
「ジープの家族というのは、オーナーがつながって関係を築いていくことで、家族になるのです。オーナーが参加して交流できるジープ・クラブは世界中にたくさんある。前回インドに行った時には9つのジープ・クラブのひとびとに会いました。多くのブランドは、クラブ、ファミリーをつくるために投資を必要とします。ジープの場合は自然につくられたもので、私たちがやるべきはコミュニティをしっかりつくる製品を提供することです」
前段の家族とジープの家族は、ちょっとばかりレベルが違うような気もしますけれど、おっしゃりたいことの意味はよくわかる。人間にとってとても深い話をしたくなるほど、ジープというのは、単にクルマのことではないのである。そういうブランドは本当に数少ない。
5代目となるジープのフラッグシップは、2021年にまず3列シートのLWB(ロング・ホイールベース)のグランド・チェロキーLが1月に、9月に2列シートのグランド・チェロキーが発表になった。Lは本年2月に日本に上陸しており、今回はSWB(ショート・ホイールベース)が発表となったわけだ。
新型グランド・チェロキーはすでにアメリカで数々の受賞をしており、専門誌「ロード&トラック」などの彼の地のメディアが、「BMW X5と互角のハンドリング性能を持ちながら、まだみんなが知らない冒険の扉を開いてくれる」とか、「なんちゃってSUVに身のほどを知らせた。こんなことは、ニセモノにはできない」とか絶賛していることをビリー・ヘイズさんは紹介し、こんなことばで締めくくった。
「ジープをつくっているのは私たちではなく、みなさんだからです」
グランド・チェロキーのデザインについて語ったのは、もちろん、引き続きクリス・ベンジャミン氏である。トラックのメカニックでクルマ好きだった父親の血を受け継ぎ、子ども頃は『デュークス・オブ・ハザード』(邦名『爆発!デューク』)や『ナイトライダー』などのテレビ・ドラマを夢中で見ていた。8歳のときに初めて買ったマッチボックスとホットウィールの3台をいまも持っていて、コレクションも続けている。デトロイトの大学でカー・デザインという仕事があることを発見、「カー・デザインはクルマへの愛とアートを結びつける」、すなわち天職だと思っているカー・ガイだ。デザイナーとしてのキャリアはメルセデスに始まり、前述したように10年前にボルボから現在のステランティスに移って、ジープとクライスラーのインテリアを担当しておられる。
「グランド・チェロキーのデザイン・チームは第5世代ということで、違ったものにしたい。そうはいいながら伝統を引き継いでいきたいと考えました」
そこで、「コントラストの美」というコンセプトが用いられたという。たとえば、バイクの冷たい金属製のパーツと温かみのあるスティッチの入った革のシートに代表されるような……。それによってひとびとの感覚を刺激したい。そして、それを思い切って目立つようにしたい。
デザイナーはスケッチから始めるものだけれど、第5世代グランド・チェロキーの要素をまとめると、まず、台形のホイール・アーチ。グラウンド・クリアランス。これはすべてのジープにとって大事なことだ。
そこに、スポーティさを持ち込んだのがグランド・チェロキーで、「アンダーカット・ライン」によってボディをスリムに見せている。ボディの側面、ヘッドライトの上端からリアのライトまで、ほぼ水平に入った折り目も、アッパー部分がダークに塗られているのも、リアまでAピラーからルーフに沿ってクロームが走っているのも、同様の効果を狙っている。
グリルはシャーク・ノーズで、もちろん7スロット・グリルがついている。ヘッドライトの上にスリムなDRL(デイ・ライニング・ライト)があり、ダイナミックでスポーティさを加えている。
リアはクリーンで、テールライトはスリムでリアを広く見せて、スポーティな特徴を与えている。スリムでアスレチックな感覚、アッパーはエレガントでスポーティな雰囲気、それでいてジープ。というのがエクステリアのデザインの狙いだ。
インテリアは、旗艦だけに「特別にしたい。お客さまの期待を超えていきたい」。それでいて、ファミリー・ラインナップをつくっていきたい。「モデル間で似ているところはある。でも、それぞれのモデルを個性的にしていきたい」というのが総論だ。
具体的には、ダッシュボードにはクロームのラインがダッシュボードの端から端まで走っている。これを「メタル・ウィング」とグランド・チェロキーでは呼んでいる。そして、そのメタル・ウィングの周辺と、さらにその上と下で異なる色と素材を用いてレイヤーをつくり、ダッシュボードにレイヤーを積み重ねることによって、上質感と「コントラストの美」を表現している。
ステアリングホイールも新しいアプローチで、ウッドを一部に使っている。クラシックで、非常に目立ち、シルバーとブラック、メタル・パーツとレザー、と「コントラストの美」を生み出している。「コントラストの美」は、エクステリアもさることながら、インテリアのほうが効果的かもしれない、と筆者は思った。
ウッドは温かみあるし、クラフツマンシップを思わせもする。最注目の素材といえるかもしれない。インテリアは、夜は見えなくなるということで、アンビエント・ライトがメタルウィングの下に仕込まれている。マッキントッシュのサウンド・システムで美しいサウンドを聴きながら、ムード満点でしょうなぁ。
マーケティングの担当者によると、2028年、輸入車のSUVはプラス19%の成長が見込まれている。そのうち、グランド・チェロキーを含むラージSUVセグメントは2万台を占め、が今後5年間維持するという。そのうちの15%のシェアを獲得することがグランド・チェロキーの目標だ。
2月に導入した3列シートのグランド・チェロキーLは全長5.2mという巨体にもかかわらず、1300台受注しており、600台のバックオーダーを抱えているという。「予想を裏切る」ヒットで、受注の4割が1000万円を超える最上級グレード「サミットリザーブ」だったことに、担当者もビックリしたという。
新登場の2列5人乗りのグランド・チェロキーは、Lよりも300mm全長が短い4900mm(PHEVのe×4は4910mm)。ホイールベースは125mm短い2965mmで、その分、取り回しは良さそうだ。
パワートレインは、272psと400Nmを発揮するガソリンの2リッター直4ターボと、そのPHEV版の2種類。3列のグランド・チェロキーLの3.6リッターV6はいまのところ設定がない。
ステランティス・ジャパンとしては、30cm短くなる全長と、2.0リッター・エンジン、さらにPHEVもあるということで、先代よりもより広い層にアピールし、輸入ラージSUVのトップのポジションを奪回したいと考えている。価格は、「リミテッド」の892万円から。PHEVの「e×4」は1037万円、PHEVの最上級グレードの「サミットリザーブ」は1227万円。
恐竜とは違い、ジープは進化し続けている。
文・今尾直樹
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みんなのコメント
ディスりたいアンチが喜ぶだけ。
もう少し記事の書き方考えたほうがいい。