1980年代、「クロカン」ブームを支えた4WDが、各自動車メーカーから続々と発売された。この連載企画では、今でいうSUVとは、ひと味もふた味も異なる「泥臭さやワイルドさ」を前面に押し出したクロカン4WDを紹介する。第7弾は「ランドクルーザープラド90」だ。
先代プラドのレトロなデザインを払拭
1996年にランドクルーザー90プラドは誕生した。先代の70プラドは、パワフルでクリーンな1KZ-TE型ディーゼルターボエンジンを搭載したことで、さらに人気となったが、レトロ感ただようルックスやディーゼルエンジンのみという少ない選択肢からか、パジェロやビッグホーンの人気には及ばずの存在だった。
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それを打破するために90プラドはそのジャンルに挑んだのだ。ランドクルーザーファミリーというブランド力とオフロード性能を維持しつつ、時代の先を見据えた車両でなければいけない。それらすべてを叶えるべく、デザイン、エンジン、4WDシステム、アクスルレイアウトなど、従来のスタイルを激変させてのモデルチェンジであった。
モデル構成は3ドアと5ドア、そして標準ボディとワイドボディを設定した。3ドア車は丸型ヘッドランプと縦スリットグリルの組み合わせでスポーティに。5ドア車は大型の角形ヘッドランプにランドクルーザー80のような横スリットグリルを用いて力強い印象に仕上げた。
また、トヨタのSUVでは初となる衝突安全ボディーGOA(Global Outstanding Assessment)を採用した。細かい箇所だが、エアコンレスの海外仕様を見据えたのか、当時ほとんどのSUVがハメ殺しとしていたクオーターウインドウが、ほんの少し開く点もポイントが高かった。なお、3ドアの丸型ヘッドランプは、1999年のマイナーチェンジで5ドアと同じ仕様に変更された。
待望の4L V6ガソリンエンジンをラインナップ
当初、エンジンは2タイプ設定されていた。ひとつは70プラドで定評があった2982cc直4ディーゼルターボの1KZ-TE型エンジン。これを細部に到るまで見直し、さらにインタークーラーを装着したことで最高出力は10psアップの140ps、最大トルクは4.5kgmアップの34.0kgmまでパワーアップした。
そして90プラドから待望のガソリンエンジンが追加された。ハイラックスサーフや海外仕様のタコマに搭載され定評があった3378ccV6の5VZ-FE型(185ps/30.0kg-m)だ。これを3ドアと5ドアのトップグレードに、1KZ-TE型を全グレードに搭載した。またグレードによって、電子制御4AT(ECT)と5速MTを選択することもできた。
さらに1997年には、2693cc直4の3RZ-FE型(150ps)ガソリンエンジンを追加し、バリイエーションをさらに増やした。一方、1KZ-TE型は2000年にコモンレール式燃料噴射装置を採用した直噴1KD-FTV型に進化し、最高出力170psというガソリンエンジンにも引けを取らないパフォーマンスを発揮した。
ダブルウイッュボーンはリジッドサスを凌ぐ性能を発揮
プラド90はフレームも一新され、軽量化と衝突安全対策、音振対策が施された新しい性質のラダーフレームを搭載した。さらに、サスペンションも大幅なリニューアルを施し、フロントに、ランドクルーザーシリーズでは初となるコイルスプリングを用いたダブルウイッュボーンを採用した。
リアは悪路走破性に強いことで定評のあるコイルリジッドを先代より受け継いでいる。フロントがダブルウイッュボーンになることで、サスペンションストローク量や耐久性などの問題が懸念されたが、トヨタはそれを技術で払拭し、リジッドサスを凌ぐストローク量とタフさを誇るレイアウトを作り上げたのだ。
これに伴い、ステアリングも定番のボールナットからパワーアシストのついたラックアンドピニオンに変更された。これらのタックにより、オフロードの走破性を高いレベルで維持しながら、乗り心地やハンドリングを大幅に改良し、ストレスフリーのSUVに仕上げている。
また4WDシステムは、従来のパートタイム4WDから、ランドクルザー80と同じ、フルタイム4WDが採用された。オプションでリア電動デフロックやウインチも選択できるなど、ランドクルーザーらしい装備も充実させている。
ランドクルーザーというブランドと時代が求めるニーズ。それらをバランスよく取り入れた90プラドの人気はどんどん高まり、宿敵・パジェロの販売台数を凌ぐまでになった。ランドクルーザーは特殊なクルマではない。オールマイティな存在だと幅広いユーザーに広めた90プラドは、大きな功業を成し遂げたのだ。
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