次世代レンジローバー・スポーツ
text:Hilton Holloway(ヒルトン・ホロウェイ)
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次世代レンジローバー・スポーツが初めて目撃されてから数週間が経つが、今回はウインターテストを受けている様子が発見された。
氷につつまれた湖でテストを受けるプロトタイプは、発売を2年先に控えたモデルとしては、カモフラージュが少な目だ。
現行モデルのデザインの発展形にも見えるが、このモデルはヴェラールからインスピレーションを得たもので、より角張った輪郭と、はっきりとしたスタイリングラインを備えている。
当初、スポーツより先に発売を予定されている、レンジローバー、フルサイズSUVのプロトタイプはまだ明らかにされていない。
新しいディフェンダーの売り上げが好調な、ジャガー・ランドローバーは、昨年、同社の事業再編計画「プロジェクト・チャージ」の下、黒字化を達成している。
さらに大きな利益を生み出すべく、デザイナーとエンジニアは、2022年版レンジローバー・スポーツの開発に力を注いでいる。
3代目ポルシェ・カイエンのライバルとなる、新しいモデルは、金型から作り直すようなフルモデルチェンジは期待されていない。
新しいプラットフォーム、電動パワートレイン、最新のテクノロジーを採用し、既存モデルのような、高級感とダイナミックな機能の、絶妙なバランスを保つことが目標とされている。
今年の3月で、発売から7年となる現行のレンジローバー・スポーツは、今年、マイナーチェンジされ、マイルドハイブリッド直列6気筒インジニウム・エンジンが追加される。
7年経ったモデルは通常打ち切りになることが多いが、新しい「スリーインワン」MLAハイブリッド・プラットフォームの導入のための大規模なエンジニアリング業務によって、次期型モデルの開発が遅れているようだ。
利益を生み出すモデル
来年発表される予定となっている、レンジローバーの新しいフラッグシップモデルが優先的に発表されると言われているが、2005年に初代モデルが発売されて以来、スポーツは大きな利益をもたらしている。
2008年にフォードがランドローバーを売却するまでは、フォードが世界で展開するモデルラインナップの中で、初代スポーツが最も高い利益率を生み出していると言われていた。
年間売上台数は3万5000台程度だったが、ニーズが高く、健全な取引価格を保っていたことが大きいだろう。
ジャガー・ランドローバーの運命を大きく変えたのは、レンジローバーを上回り、年間販売台数8万台を達成した、現行の2代目スポーツだ。
ランドローバーは、他のメーカーと同様、2代目スポーツの平均取引価格を明らかにしていないが、控えめに見積もって1台あたり8万ポンド(1131万円)としても、小売価格での年間収入は、64億ポンド(9054億円)に相当する。
この成功を維持するため、初代と2代目で達成された、重量を抑える取り組みは、新しいモデルでも非常に重要となってくるだろう。
3代目スポーツの概要
競合メーカーのベテランデザイナー達からは、現行スポーツは、現代的でそのパフォーマンスに非常に合ったデザインだと、賞賛の声が上がっている。
3代目スポーツは、初代から2代目へのような、大がかりなデザインシフトは施されないと予想されている。
極端な変更はリスクが大きいだろう。
新しいMLAハイブリッド・プラットフォームへの移行を考えると、クラストップのハンドリングを備えた別のスポーツを開発することは、大したことはないだろう。
このアーキテクチャの最初のモデルはバッテリー駆動のジャガーXJのEVモデルで、3月以降に発表されるとのことだ。
MLAはアルミニウム製という以外、具体的な詳細はほとんど明らかにされていない。
スチール製プラットフォームのライバルよりも重量があると言われている、同じくアルミニウム製プラットフォームを採用している現行Dシリーズよりも、はるかに軽量となっている。
BMWとメルセデスの新しいアーキテクチャと同様、MLAによって、ジャガー・ランドローバーは同じ生産ラインで、同じモデルのマイルドハイブリッド、プラグインハイブリッド、およびEVを生産できるようになる。
プラグインハイブリッドと、ハイブリッドモデルの場合、電気モーターによって後輪へ電力が提供される。
舗装道路では、トルク・ベクタリング機能により俊敏性が大幅に向上する一方、オフロードでは、トルクの後輪への安定供給により、ステップチェンジを保障する。
2021年版レンジローバーは、ラグジュアリーSUVらしく、BMWから供給されるV8エンジンを採用すると言われているが、新しいレンジローバー・スポーツには、環境に配慮したパワートレインの搭載が期待されている。
3代目スポーツには、マイルドハイブリッドとフルハイブリッドの直列6気筒ターボエンジンが採用される。
4気筒ハイブリッドモデルも搭載される可能性が高く、BMWとのパワートレイン・アライアンスの交渉がまとまれば、BMW製の新しい4ポットが採用される可能性もある。
電動化への取り組み
新しいモデル向けのパワートレインの選択と組み合せは、新しいプロジェクトの最も重要な要素であると同時に、最もコストのかかる部分でもある。
ジャガー・ランドローバーの調査によると、同社が参入しているセグメントで、バッテリー式EVが、2026年までに世界市場の23%を占めると予測されている。
ハイブリッドとプラグインハイブリッドは市場の16%、ディーゼルは12%、驚くべきことにガソリンは49%と予測されている。
ジャガー・ランドローバーも認めているように、予測は困難だが、同社の大型のモデルは、重量が大きく、面積も広いため、純粋なEVモデルには適していない。
5代目レンジローバーのEVモデルの導入の可能性はあるが、アジアの大都市をターゲットとした短距離のシティモデルとなるだろう。
ジャガーIペイスは、この先まだ何年もモデルライフがあり、新しい「ロードローバー」は、同社のEV販売の代表的存在となるだろう。
昨年、ジャガー・ランドローバーは、MLAの投入計画について、「大型セダン」(ジャガーXJ)と大型SUV(5代目レンジローバー)から始まり、「中型SUV」とロードローバーが後に続くと、書面で公表している。
しかし、新しいスポーツは、同社に最も大きな利益をもたらすはずだ。
ジャガー・ランドローバーは、停滞した利益率が2023年以降7-9%にまで回復し、プレミアムブランドの地位を取り戻し、新しい穏やかな時期がやってくると予想している。
販売にスポットライト
新しいレンジローバー・スポーツの重要性を確認するためには、過去数年間のランドローバーの売上を確認する必要があるだろう。
2016年1月から11月の、レンジローバー・スポーツの販売台数は7万8600台で、ディスカバリー4万6700台や、レンジローバー4万9900台をはるかに上回っていた。
昨年の同様の期間では、スポーツは7万4400台、4万7400台のレンジローバーを販売した。
新しいヴェラールが、昨年1月から11月に5万5000台販売されたことを考慮すると、姉妹モデルの販売は著しく伸びたと言えるだろう。
ジャガー・ランドローバーの4つのプレミアムモデル(レンジローバー、レンジローバー・スポーツ、ヴェラール)のうち、3つがはっきりと差別化されたブランドとして確立されたことは賞賛に値する。
しかし、残念ながら5代目ディスカバリーは、同様の成功を収めることがことが出来なかった。
2016年1月から11月にかけて、4代目ディスカバリーの販売台数は4万6800台に上ったが、2017年同期間で販売された5代目ディスカバリーは、わずか3万2232台だった。
2018年の同時期ではさらに19%減少した。
ディフェンダーが発売されてから、わずか数週間しか経っていないため、ランドローバーのプレミアムファミリーメンバーとしての、ディスカバリーの地位を再確立することは難しいだろう。
昨年11月のプレゼンテーションで、ジャガー・ランドローバーは4月から9月までの利益率が前年の-2.2%から-0.2%に回復したことを明らかにした。
さらに、その改善は7月から9月にかけて4.8%に増加した。
これは、中国での販売が大幅に増加したこと(4月から6月にかけて24%増加)と、より仕様の高いモデルの販売と、製造業務のコスト削減によるものだった。
夏には、販売から得た収益を使って、新世代のMLAモデルへの巨額の投資(3か月で8億4100万ポンド(1189億円))を行うことを明らかにした。
莫大な負債を抱えずに、将来への投資を行う能力を得たということは、非常に大きな成果と言える。
パワートレインでの協力で生き残る
ジャガー・ランドローバーが、昨年初めに行った「有形固定資産」の30億ポンド(4244億円)の大規模な減価償却は、独自のエンジン開発の一部を段階的に廃止し、将来の電動ドライブトレインでBMWと協力する方向に進んでいるためだと、一部のアナリストは指摘している。
同社はすでにウルバーハンプトンのエンジン工場で、電気駆動ユニットを製造する計画を立てている。
偶然にもBMWの英国エンジン工場の隣に位置する、ハムスホールのバッテリー工場も計画に含まれる可能性がある。
ジャガー・ランドローバーはまた、投資家に対し、メカニカル・エンジニアリングの従業員を大幅に減らすことを伝えている。
また、電動化に移行するための莫大な費用による負担を軽減するため、パワートレインとプラットフォームで他の自動車メーカーと協力することが必要だと強調している。
ジャガー・ランドローバーの財務文書によると、同社は今後3年間、新しい投資と研究開発に年間最大40億ポンド(5658億円)を投資する計画がたてられている。
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