歴代モデルに捧げるオマージュ、発売までのスピードに期待
日産がフラッグシップスポーツカー、フェアレディZの2021年モデル、新型400Z(米国名)を発表(プロトタイプ)した。米国ではオンライン発表会だったが、340Zの発売から12年ぶりとなる新型だけに、大きな注目を集めた。
「Z-CARグラフィティ」新型フェアレディZプロトタイプ登場記念、写真で歴代モデルを見比べる
米国では年間に販売されるクルマの半分以上がピックアップトラックや大型バン、SUVなどのライトトラックと呼ばれるカテゴリーに該当する。乗用車は縮小傾向で、ここ数年の人気の中心は、ミッドサイズSUVやクロスオーバーだった。しかし流行にはサイクルがあり、昨年からスポーツカー人気の復活が指摘されている。台数こそ少ないが、新型コロナウイルスの影響下でも、スポーツカー販売は健闘。今年上半期の日産370Zの販売台数は1310台で、前年同期比4.6%増、ポルシェ911は4835台(同4.7%増)マツダMX-5ミアータは4320台(同10.4%増)だ。
昨年はトヨタが久々にスープラを発売し、シボレーは新型コルベットを発表するなど、スポーツカーへの注目が集まりつつある。そうした中で登場した新型Zだけに、期待度も高かった。
米国では1stフェアレディZの人気が非常に高く、いまも現役で走っている車両は多い。状態のいいZの価値は年々上がっており、10万ドル以上で取り引きされるケースもあるほどだ。1stモデルをキープしながら新しいZを乗り継いでいるユーザーもいる。50年以上にわたってこれだけ愛され続けるモデルというのは珍しい。ほかには、シボレー・コルベットくらいだろうか。
今回の新型は、1st・240Zを思わせるノスタルジックなデザインとなっており、その意味でも注目度は高い。とくに横からのシルエット、斜め後ろから見たラインは1stモデルの面影を残している、と評判だ。
エンジンはV6ツインターボを搭載、しかもMTと、スポーツカーエンスーにとってはうれしい内容だ。小型スポーツカーはアメリカでもニッチマーケットになりつつあり、日産ZもEV化、あるいはSUVにシフトするのでは、という予測もあった。
スポーツカーを巡る環境は厳しく、最大のライバルといわれるトヨタ・スープラはBMWとチームアップした成果だし、マツダMX-5はフィアット/アバルト版も生産している。そんな中で日産が独自に新型スポーツカーを発売する、という「攻めの姿勢」に対する評価も高い。
米国におけるSUV人気の定着、そして急速なEVへのシフトの中、いまやリアルスポーツを作り続けることに意義がある、という意見には説得力がある。逆にいうと日産がアイコンとしてのZというモデルにどれだけ思い入れがあり、大切にしているかが浮き彫りになった。
ただし新型Zの内容には「驚くほどの新しさはない」と、失望感も聞かれる。12年待ったファンからは、「Zらしいしっかりした作りではあるが、サプライズに欠ける」の声もあった。また「3月にプロトタイプを発表する」とアナウンスがあり、実際にプロトタイプが登場したのが9月、そして「販売は早くて来年」と聞いて、多くのユーザーは「じらされている」と感じているようだ。
新型コロナウイルス流行の中、自動車メーカーはどこも厳しい状況におかれている。今年の新車販売台数は世界で20%減以上になる、という悲観的な予測もある。そんな中で、新型Zの発表は明るいニュースとして歓迎されていることは間違いない。
新型Zは伝説的なクルマの系統を引き継ぐモデルであり、確かな地位を獲得するのは間違いないだろう。発売日が待ち遠しい。
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