■400クラスで4気筒エンジン、独創のバルブ制御システム搭載とは出来すぎた1台
もし私(筆者:松井勉)が「日本が誇るバイク5台を選べ」と言われたら、間違いなくリストアップするのが、ここに紹介するホンダ「CB400 SUPER FOUR(CB400スーパーフォア)」です。
「おお400。」と鮮烈なキャッチコピーで登場した「ホンダドリームCB400FOUR」
このバイクの歴史は古く、1992年「PROJECT BIG-1(プロジェクトビッグワン)」の名のもと、「ホンダのCB」、「4気筒」はかくあるべきと「CB1000 SUPER FOUR」とともに、その中型免許(普通自動二輪免許)版として登場します。
7年後の1999年には現在もその進化版が採用される「HYPER VTEC(ハイパーブイテック)」搭載のエンジンを採用してフルモデルチェンジ。このHYPER VTECとは、1気筒あたり吸排気バルブがそれぞれ2本づつ、合計4本あるうち、吸気、排気それぞれ1本を、シリンダーヘッドの対角線上にバルブ休止させるシステムのことです。
その目的は、高回転時の高性能を確保したまま、2バルブだけ可動する時、吸気渦による高い充填効率で豊かなトルク特性を得る、というものです。4輪のVTECシステムは、異なるカムプロファイルでバルブタイミングを可変させるものに対し、2輪版はカムはそのままというのが特徴です。
1983年に登場した「CBR400F」に搭載された「REV」システムも同じく、バルブ休止システムでした。REVがロッカーアームを介してバルブ休止機構を動かしていたのに対し、HYPER VTECはシリンダーヘッドがより小型化できるよう直押しタイプのバルブ構造の中にバルブ休止システムを組み込んだのが特徴です。
2002年1月には「HYPER VTEC SPEC II(スペック・ツー)」が登場します。バルブ休止回転数を6750rpmから6300rpmへ変更し、パワフルな領域をより広げる制御としました。
さらに2003年12月には「HYPER VTEC SPEC III(スペック・スリー)」へと進化させます。バルブ休止領域を1速から5速は6300rpm、6速のみ6750rpmを切り替えポイントとして、高速道路での巡航燃費性能を高めることが目的でした。
2007年には現行モデルでも採用される「HYPER VTEC REVO(レボ)」が登場します。エンジンのインジェクション化とともに、ECUでバルブ休止領域をエンジン回転数のほか、アクセル開度に応じて可変させる制御を盛り込み、ライダーの意思にナチュラルに答える完成形へと進化しています。
そして2014年には10本スポークホイールやLEDヘッドライトを採用し、テールカウルデザインも変更した現行スタイルとなります。その後、2017年にはエンジンのスロットルボディの変更などもあり、パワーアップして現在に続くのです。
改良に改良を重ねた4気筒エンジンはまさに珠玉。400ccクラスに相応しいサイズであり、艶やかな音、スムーズなトルク特性とパワーを持つユニットに仕上がっています。
跨がるとやや前傾姿勢となるポジション、ハンドルの幅、レバーの位置、ミラーの見え方、ニーグリップした時の燃料タンクとの接触感、シートの形状……どれも自然に溶け込んできます。
いまや比較するライバルが皆無になった400ccの4気筒ユニットは、相変わらず魅力を発します。アクセル開度の少ない時、日常的な速度で走る時など、多用する2バルブ領域で太いトルクを生み出します。そう、HYPER VTECの魅力は、じつはこの2バルブ領域にこそあるのです。
大排気量に慣れたライダーが「400ccだから」というトルクの細さを意識する必要はありません。CB400スーパーフォアは、軽快に、スムーズに車体が動き出します。
スポーツ嗜好のサスペンションながら、市街地でも乗り心地は良く、もっと排気量の大きな4気筒バイクすら想像させるどっしりとした直進性を見せてくれます。それでいて、車線変更や交差点を曲がる時の身のこなしは、一体感ある軽快さでまるでバイクが体の一部になったような走りを見せてくれます。
このどっしり感と軽快さのバランスはワインディングでも同様で、傾けたバイクがスムーズにラインをトレースする印象は速度に関わらずスポーティー。バイクに乗る楽しさが凝縮されています。
エンジンの盛り上がりや排気の音色の変化、またシフトアップやダウンしたときの回転や音のつながりの良さなど、日常的な速度で楽しめるのはさすがこのクラスです。高速道路の合流などでダッシュを決めたいときでも、躊躇なく高回転を多用できます。むせび泣く4気筒。これこそ「日本のバイク5選」に入れたい理由です。
そうして昂ぶった心も、沈着冷静、意思通りの減速を引き出せる上質なブレーキのお陰でしっかりと速度もコントロールできます。
どれも当たり前のようにこなすCB400スーパーフォアですが、そのスキのない高次元バランスこそ、多くの人に味わって欲しい最大の魅力であり、バイクそのものを走らせる悦びだと考えます。
400ccクラスがこの先どこまで続くのか。日本4メーカーのラインナップを見ても心細いいま、バイクライフで一度は体験しておきたい1台かもしれません。
※ ※ ※
2018年型ホンダ「CB400スーパーフォア」の価格(消費税10%込み)は、「アトモスフィアブルーメタリック」と「キャンディークロモスフィアレッド」が91万1520円、「ダークネスブラックメタリック」が86万8320円です。
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廃盤になりそうになったら、買って保存しておいたら損は無いだろう。