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古き良き時代と未来を感じる「2023クラシックカーミーティング&発動機運転会」イベントレポート

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古き良き時代と未来を感じる「2023クラシックカーミーティング&発動機運転会」イベントレポート

運営元:旧車王
著者 :野鶴 美和

今年の主役はカレラRS!約150台のポルシェが参加「エキサイティングポルシェ2023」

去る2023年11月3日(金祝)、岡山商科大学附属高校(岡山市北区)にて開催されたこちらのイベント「2023クラシックカーミーティング&発動機運転会」には、9時から13時過ぎまでの約4時間の間に、多くの見学者が訪れて賑わった。

●イベントのなりたちイベントは、同校の創立100周年記念事業として2011年にスタート。

「自動車整備コース・工業技術コースのPR」、「自動車への興味と知識を深める」という目的をもって開催されている。

2011年の第1回には、地元の愛好家団体「倉敷旧車倶楽部」、「吉備旧車倶楽部」、「岡山石油発動機愛好会」の協力を得て、車輌60台と発動機50台が集まった。

以降2012年、2013年と開催。

新校舎建築のためブランクを経て、2017年には車輌110台、発動機60台と盛大に開催された。

◆5年ぶりの開催

コロナ禍を乗り越え、5年ぶりに開催された今回は、車輌140台と発動機30台が参加。

工業系列の生徒、教員、ビジネス系列の生徒の皆さんが「販売実習」として出店で参加するなど、過去最大の規模となった。

来年も継続させていく予定だという。

今回は、そんなイベントの魅力をレポートする。

■玄関前駐車場:国産&輸入スポーツカーがずらり正門をくぐった玄関前駐車場には、1960年代から1990年代に生まれた国内外のクルマたちが通路の両脇に並んでいた。

「青空の下の自動車博物館」といった雰囲気。

ホンダ NSXやマツダ RX-7などの国産スポーツカーを、熱心に眺める来場者の姿が印象的だった。

▲玄関前駐車場に並ぶ名車たち

▲手前のマツダ RX-7(FD3S)は二桁ナンバー。大切に乗られているのがわかる

▲途中から徳島工業短期大学が所有する燃料電池車(FCEV)トヨタ MIRAIも展示され、来場者から熱視線

■自動車実習室:「国産車第一号・山羽式蒸気自動車」のレプリカや貴重なクラシックカー自動車科の自動車実習室には、科の皆さんが製作した「国産車第一号・山羽式蒸気自動車」のレプリカをはじめ、フォード モデルT(T型フォード)やフィアット 509、トヨタ MIRAIが展示された。

▲徳島工業短期大学が所有する1912年式のT型フォードと並ぶ山羽式蒸気自動車レプリカ

▲こちらのフィアット 509は1929年式。大澤利久さんが所有する個体で、国内で現存する3台のうち唯一の実働車だという

●国産車第1号・山羽式蒸気自動車レプリカ製作プロジェクトに注目▲山羽式蒸気自動車レプリカ(2022年お披露目当時)

旧車王ヒストリアでは、同校の自動車科の生徒の皆さんが取り組む「国産車第1号・山羽式蒸気自動車」レプリカ製作を取材してきた。

イベント来場者の中にはレプリカ展示を見て、岡山県が「国産自動車発祥の地」であることを知った方もいたそうだ。

レプリカは今後、2024年1月「岡山県高校生テクノフォーラム」、 3月2日「本州四国連絡橋公団バス祭り」で展示予定。その後RSK山陽放送に納められる。

◆これまでの取材記事

●国産自動車第一号は岡山生まれ!「山羽式蒸気自動車」を後世に伝えるレプリカ製作プロジェクト
https://www.qsha-oh.com/historia/article/yamaba/

●国産自動車第一号「山羽式蒸気自動車」レプリカ製作プロジェクト最新レポート
https://www.qsha-oh.com/historia/article/yamaba-vol2/

■【VOICE】生徒さんに聞くイベントでは、生徒の皆さんがスタッフとして活動していた。同校の2年生で自動車科の藤本晃生さんに、イベント開催までの気持ちや参加した感想を尋ねてみた。

●「イベントが決まったときからうれしくて楽しみにしていました」自動車科2年 藤本晃生さん▲2年藤本晃生さん。好きなクルマはER34(日産 スカイライン)

藤本さん:

「このイベントが決まったときはすごくうれしかったです。皆さんのクルマを傷つけないように気をつけて、しっかりやりきろうと思いながらワクワクしていました。

今日は色々なクルマを見ることができ、新たな知識も得られて、好きなクルマもできました。TC24-B1を搭載したトミタクさんのZとハコスカがすごかったですし、パープルの塗装でガルウィングのセリカもかっこよかったです!」

5年ぶりに開催されるイベントを楽しみにしていた気持ちが伝わってきた。続いて、将来の目標も伺った。

藤本さん:

「旧車からEVまで整備できるよう、知識と経験を積んでいきたいと思います」

と、頼もしいコメントで締めくくる藤本さん。

藤本さんが学ぶ自動車科(自動車整備研究部)は、12月24日(日)に開催される全日本高等学校ゼロハンカー大会への出場を控えている。

予選を通過し、24分耐久レースへの出場を目指す。

■グラウンド:時代を彩った名車がずらりメイン会場となったグラウンドには、多様なクラシックカーと発動機が集合。

交流の場としても盛況だった。

来場していた40代男性からはこんな感想が。

「多様なジャンルのクルマを見ることができて楽しかったですね。ダイハツ シャルマンやスバル レオーネバンなど、レアなクルマにも会えてうれしい。私も整備学校に行ったので。自動車実習室も懐かしかったです」

このように、思い出や思い入れのある懐かしい1台に再会できた方も多かったのかもしれない。あらためて会場の様子を詳しく振り返っていこう。

◆日産 ホーマーの「特設ステージ」で開会式

▲開会式で特設ステージとしても活躍した日産 ホーマー

9時から開会式が行われた。

日産 ホーマーの荷台を特設ステージにして、畠浩二副校長をはじめ関係者の挨拶があった。

こちらのホーマーは1973年式。

プリンス自動車が日産と合併した後のモデルとなる。

なんと映画「とんび」に登場している個体そのもの。

現在も農機具を積載するなど現役で活躍しているという。

使い込まれて経年変化した木製の荷台も美しかった。

▲時代を彩ったモデルが並ぶ

▲スズキ アルトハッスルは1992年式。所有して7年、オーナーの普段の足として元気に走っているそう

▲1991年式の日産 スカイラインGT-R(R32)。初期33ナンバーを保持する美しい個体

▲1975年式のトヨタ セリカLB。ガルウィングドアにカスタマイズされていて、エンジンはスープラなどに搭載される「1JZ型」に換装されている

◆「文化遺産として大切に守りたい1台」いすゞ ピアッツァ ネロ

▲ジョルジェット ジウジアーロが手がけたデザインは先進性を想起させる。車名の「ネロ」はイタリア語で「黒色」の意味

取材中、いすゞ ピアッツァ ネロをじっくり見せていただく機会に恵まれた。

「いすゞのこの名車を、文化遺産として布教していきたい!」とオーナー。

抜群のコンディションを誇るこちらの個体は1988年式。

ピアッツァ(初代モデル)は1981年から1991年まで生産。

「ピアッツァ ネロ」として、ヤナセでも販売された。

▲ネロのヘッドライトは最終型のみ北米仕様“まぶたなし”の4灯タイプ

▲直列4気筒SOHCターボエンジン「4ZC1型」は150馬力を発揮する

▲洗練されたインテリア

▲ステアリングの両脇にスイッチ類が集約された「サテライトスイッチ」。手を離さず操作できる

運転席に座らせていただいて驚いたのは、洗練された室内空間。

直線を基調としたデザインを壊さないこだわりが随所に見られ、スタイリッシュな空間を演出している。

そしてこの「スーパーロボット感」。

サテライトスイッチを配したコックピットの景色はもちろん、これらのスイッチ操作は複雑で、オーナー以外の人間はひと目で操作できないはずだ。

そんなところにもスーパーロボットならではの「ロボットが主と認めた者だけが扱える」を感じられ、筆者はグッときてしまった。

■【VOICE】クラシックカーオーナーに聞く参加車輌のオーナーにインタビュー。

愛車との出会いやこだわりを聞いた。

●「最愛アーティストの直筆サイン入り!唯一無二の1台」トゥクトゥク:オーナー ぴいさん▲三輪タクシーは 国によって呼び方が変わる。「トゥクトゥク」はタイ独自の呼び方だそう

トゥクトゥクは、東南アジアで利用されている三輪タクシー。

ぴいさん:

「このフォルム、スタイルが大好きなんです!」

そう話すオーナーのぴいさんが、トゥクトゥクを手に入れたのが10年以上前。

塗装などのカスタムを施し、日常の足として利用しているそうだ。

エンジンは、スズキ ジムニーなどに搭載される「LJ50型」。

2サイクルの音がお気に入りだという。

さらにボディには、ぴいさん最愛のアーティスト「かぐや姫」フルメンバーの直筆サインが入っている。

実際にこのトゥクトゥクを見た3人に「こんなの乗ってんのー!」と驚かれたのが思い出に残っているそう。

最高の宝物だ。

▲右上が南こうせつ氏、右下に伊勢正三氏、左に山田パンダ氏の直筆サイン

▲かぐや姫のコピーバンドも結成しているぴいさん。完全なる「かぐや姫仕様」だ

●「古き良き昭和の空気をまとって」トヨタ ミニエース:オーナー 五十嵐純一さん▲東北在住の五十嵐さんは自走で各地のイベントへ出かけているそうだ

パブリカと同じ空冷水平対向2気筒エンジンを搭載する小型商用車、トヨタ ミニエース。

五十嵐さんの個体は1975年式だという。

「人と被らないクルマを」とオークションでこの個体を手に入れた五十嵐さん。

自走で遠征できるように修理しつつ大切に乗っている。

五十嵐さん:

「岡山には新車ナンバーが多くて珍しいですね。50年以上も所有している人に今日だけでも7人会いました。すごいですね」

と、岡山の旧車シーンにも驚いていた。

▲トラックタイプは珍しい

▲古き良き昭和の空気をまとう。目にするなり「懐かしい」と声に出す人も

●「安心感が魅力」トヨタ セリカ GT-FOUR:オーナー 末宗安之さん▲オーナーの末宗さん。1998年式のGT-FOURとは約8年の付き合い

トヨタ セリカ GT-FOUR(ST205)は、シリーズでは6代目のモデルだ。

末宗さんの所有する個体は、ボディ、樹脂パーツに至るまで新車を思わせる美しさだった。

末宗さん:

「以前は5代目(ST185)のGT-FOURを10年ほど所有していました。また乗りたいと思っていたところ、関西のショップにあったこの個体を見つけました。

気に入っている点は、安心感があるところでしょうか。頑丈なエンジンですし、フルタイム4WDなので雪の日も問題なく移動できます。

フロントにスーパーストラットサスペンションが採用されているのですが、特殊な構造のため、整備性が良くないところが難点かもしれません。

普段のメンテナンスでは、予防整備に力を入れています。熱で劣化する部品を早めに交換したり、多車種から部品を流用したり。少しでも長く乗っていたいなと思います」

 

▲ホイールは燃費向上と乗り心地改善のため、エンケイの16インチを選択。キャリパーの大きさゆえにホイールの選択肢は限られてしまうのだそう

▲最高出力255馬力を誇る直列4気筒DOHCターボエンジン「3S-GTE型」を搭載。ヘッドライトはガラス製。黄ばみとは無縁だ

■グラウンド:実物を見て感じる石油発動機(發動機)の魅力発動機が一斉に始動すると同時に、カメラやスマートフォンを向けるギャラリー。

あちこちから聞こえ始める「シュッシュッ」「ポンポン」という排気音が郷愁を誘った。

岡山県は「発動機王国」と呼ばれている。

大正6年に県内で初めて発動機が使われてから、昭和30年まで岡山市内を中心に約110社の農業用発動機メーカー(農発メーカー)が存在していたそうだ。

日照時間の長さから「晴れの国」と呼ばれるほど温暖な気候に恵まれている岡山県。

江戸時代から干拓事業とともに、畳の原材料となる「い草」と米、麦の二毛作が行なわれるなど農業が発達。

明治時代からは農機具の機械化も進み、県内には農業用発動機の製作所が点在。

国内メーカーの7割が岡山の製作所だった。

高知県で発動機の保存活動を行なう森下泰伸さんによると、全国の發動機メーカーは452社あり、そのうち岡山には約100社が存在した。(2009年調べ)

昭和11年、12年には岡山市を中心に年生産1万7000余台を生産し、全国の 60%のシェアを占めた。

まさに發動機王国を築き上げていたという。

岡山県の発展を支えてきた農業用発動機を深く愛する人は多い。


(参考文献・コメント引用:岡山商科大学附属高等学校 自動車整備研究部「温故知新 農業王国岡山は發動機王国だった MADE IN 岡山の石油発動機 歴史とレストア」)

■【VOICE】発動機オーナー&来場者に聞くこの日の運転会には、石油発動機30台が参加。

そんな光景を織り交ぜながら、インタビューとともに運転会の様子を紹介していこう。

▲発動機の始動時はガソリンを使い、燃焼室が温まったら灯油に切り替える。切り替えの場面が見どころ

●「我が子のように愛機に接する」「運転会で発動機の魅力を知った」発動機オーナー  川上森三さん&発動機ファン 鳥羽哲弘さん▲発動機のオーナー川上さん(左)と発動機ファンの鳥羽さん(右)

一眼レフカメラを携え、発動機を熱心に眺めるのは、発動機ファンの鳥羽哲弘さん。

総社市で催された運転会で見て魅了されたと話す。

鳥羽さん:

「味のある音、シンプルな構造、匂いまですべてワクワクします。運転会の情報をチェックしては見に行っています」

鳥羽さんが一人のオーナーに声を掛けた。

発動機オーナーの川上森三さんは、2000年頃から発動機を所有している。

川上さん:

「始動して安定するまで、今日の調子を音で確認しています」

と話しつつ、我が子のように接している姿が素敵だった。

▲川上さんの愛機は「カナミツ石油軽油発動機(金光電機工場内燃機部製)」。昭和6年製造だった

●「ないものは作るの精神で部品も自作」発動機オーナー  岩田茂雄さん&龍雲さん親子▲「総社製作所」の発動機を所有する岩田さん親子、父の茂雄さん(左)と息子の龍雲さん(右)

発動機ファンの鳥羽さんから「最近は若い方もいるんですよ」と紹介していただいた岩田さん親子。

息子の龍雲さんは、なんと小学4年生から整備を学び始めたという。

▲総社製作所の発動機。箱型マグネットのコイルを巻き直すなどの手厚いメンテナンスを受け、今日も元気に稼働

龍雲さん:

「この発動機は、近所の骨董品店で見つけてもらいました。部品は“ないものは作る”の精神で自作することもあります」

と話す龍雲さんは、メグロ製作所のバイクのファンコミュニティも運営している。

▲メグロオーナー&ファンのコミュニティ「目黒植輪介」を運営

■【VOICE】岡山の「ものづくり」についてイベントではトークショーも催された。

ゲストは自動車エンジニアであり、YouTuberとしても活躍する「トミタクさん」こと富松拓也さん。

あらゆるクルマのエンジンを修理し、部品まで自作する富松さんは、“幻のエンジン”と呼ばれる「オーエス技研TC24-B1」を甦らせたことでも知られる凄腕エンジンビルダーだ。

今回はイベントの感想とともに、岡山のものづくりへの思いを聞いた。

●「岡山県民のチャレンジ精神が今に繋がっている」富松拓也さん▲オーエス技研TC24-B1を搭載する「トミタクZ(S30Z)」は富松さんの分身的存在

まずは、イベントに参加して感じたことを伺った。

富松さん:

「トークショーで、生徒さんが興味を持ってくれたのがすごくうれしかったです。内燃機関の魅力が伝わっていたら良いですね。

こんなふうに『やって良かったな』と喜びを感じる瞬間は、若い方が喜んでくれたときなんです。

これから自動車業界を目指す皆さんには、チャレンジ精神を大事にし続けてほしいと思います」

そう話す富松さんのもとには、トークショーが終わってからも次々と人が訪れていた。

その中には若い世代も多かった。

続いて「岡山のものづくり」に対して抱いている思いを伺った。

富松さん:

「岡山のものづくりは、何事もあきらめずに挑んだ先人の方々に支えられていると思います。

器用な人が最初から多かったのではなく、さまざまなことをして器用になっていったのだと。

人間としての幅が広がることでチャレンジに繋がる…このTC24にも繋がっていったのではないでしょうか」

▲TC24-B1は1980年にオーエス技研が開発。L28型をベースに独自の技術でツインカム4バルブ(クロスフロー方式)を採用。9基しか生産されなかったため“幻のエンジン”と呼ばれる

▲富松さんの軽快なトークに引き込まれる

■【まとめ】地域とのつながり、未来への希望を感じるイベント幅広い世代の来場者があった「2023クラシックカーミーティング&発動機運転会」。

このようなイベントを学校が主催しているのはすばらしい。

地域とのつながりも感じられ、未来への希望を感じるイベントだった。

来年の開催の際には、ぜひ足を運んでいただきたい。

【取材後記】筆者の愛車もひっそりと。

コンテストに出場するような美しい名車ばかりのなかで恐縮だったが、皆さんの愛車を拝見しつつ「愛車を守っていくこと」について深く考えた。

S2000を少しでも長生きさせたいとあらためて思ったひとときでもあった。

ありがとうございました。

【取材協力】●岡山商科大学附属高等学校
https://www.osu-h.ed.jp/

[ライター・カメラ / 野鶴 美和]

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  • cor********
    私もR34乗っとるけど旧車はヤッパリ運転してて楽しい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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