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ルノー・メガーヌRS新型 「280 EDC」に試乗 FF最速の奪還なるか 評価は?

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ルノー・メガーヌRS新型 「280 EDC」に試乗 FF最速の奪還なるか 評価は?

もくじ

ー ルノーの分岐点となる新メガーヌRS
ー 徹底的にバージョンアップ
ー 気になる部分も残るインテリア
ー 精彩に欠くシフトパドルとエンジン
ー センセーショナルなシャシー
ー 新たなベンチマークの登場へ
ー 番外編 アダプティブダンパーに代わる技術
ー ルノー・メガーヌRS 280 EDCのスペック

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ルノーの分岐点となる新メガーヌRS

ルノー・メガーヌRSほど、しっかりしたファンによって賞賛され、支えられているパフォーマンスカーは多くはない。

2004年に登場したメガーヌは、記憶に残る、車体後部が丸く膨らんだ「バッスル・バック」スタイリングを装い、ハンドリング性能とドライバーとのコミュニケーションの濃さにおいて、新たなベンチマークを設定した。その後、FF車最速の覇権争いは継続中だ。

いま、そのベンチマークは、新たなライバルの登場によって、返還要求が突きつけられている。ホンダ・シビック・タイプRが新たなドライバーズカーとして台頭し、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIや間もなく登場するセアト・レオン・クプラR、加えて4WDとなったフォード・フォーカスRSなどが並び、このセグメントでの争いは激しいものとなってきた。まるで近年のルノーによるF1での戦いのように。

このような経緯もあり、この新しいメガーヌRSは、重大な分岐点となるだろう。

クリオRS200が持つ欠点を、メガーヌでは改めることはできたのだろうか? 多くのホットハッチが存在する今、フランスの新星は、肩を並べることができたのか、気になるところ。

タイミングとしては、同じルノーから登場した、とても素晴らしい仕上がりを得たスポーツカー、アルピーヌA110に技術やリソースが傾倒してしまったのでは、と心配してしまう。しかし、幾つかの歓迎すべき朗報は既にわかっている。まずは概要から。

徹底的にバージョンアップ

FFの駆動方式は変わらないが、メガーヌの高速バージョンは隅々まで徹底的に見直され、スペック上は、ライバルよりも上回った性能を持っている。

旧式が積んでいた2.0ℓエンジンよりも軽量で小型の1.8ℓターボエンジンは、メガーヌ275以上のパワーとトルクを発生する。そして組み合わされるミッションは、6速マニュアルか、デュアルクラッチATかを選択可能。クリオRS220トロフィーとは異なり、マニュアルならペダルとパドルとでもがく必要もなくなった。

悪くないニュースだと思う。

サスペンションは、フロントがストラット、リアがトーションビームとなるが、フロントは新しいジオメトリ設定が与えられた。またルノー・スポール「PerfoHub」技術が用いられ、キングピンのオフセット角を減らし、トルクステアやストローク時のトー変化を抑えている。

さらにメガーヌRSの車高はメガーヌGTよりも5mm低くなり、フロントトレッドは45mm、リアトレッドは30mm広げられた。

そしてシャシーには新しい技術的な注目ポイントがふたつあり、ひとつは4輪操舵システムで、もうひとつはラリーカー譲りの油圧式によるサスペンション・バンプストッパー。後ほど「番外編 アダプティブダンパーに代わる技術」にて説明する。

他に、わかりやすい部分で言うと、サスペンションが「スポーツ」グレードでは若干ソフトになり、「カップ」グレードではより硬めにセッティングされている。電子ブレーキ制御による、トリクベクタリング・システムも組み合わされる。

「カップ」ではさらにトルセン・リミテッドスリップデフを装備。メガーヌ275に搭載されていたGKN社のものより強力なロックアップで、パワーロスを効果的に減らしている。

大径の19インチホイールにはブリヂストン製のタイヤが組み付けられ、カップスペックのオプションとなる、アルミニウム性のハブと軽量なブレーキが支える。

価格はまだ非公式ながら、29000ポンド(440万円)ほどで、注文は4月から、デリバリーは6月からが予定されている。

クルマの情報を理解したところで、試乗テスト。

気になる部分も残るインテリア

通常なら、メガーヌRSのようなクルマのテストで、「スポーツ」グレードの2ペダルのデュアルクラッチATを選択することはないのだが、今回われわれに来たクルマは、それ。6速マニュアルにカップサスペンションを装備したクルマのインプレッションは、追って後日となってしまった。

少なくともスポーツの2ペダルのデュアルクラッチATモデルから察するに、カップの仕上がりは、ドライバーズカーとしてかなり楽観視して良いだろう。

新しいメガーヌRS280の運転席は、若干の不満はあるにしろ、パフォーマンスを存分に発揮するのには、ふさわしい場所だと思う。アルカンターラ製のスポーツシートは身体のホールド性も高く、ドライビングポジションはクラス標準と比較しても優れている。座面の高さも不自然なものではなく、ステアリングやペダルも操作しやすい位置に並んでいる。

しかし、インテリアの素材の質感にはルノー・スポール流のこだわりと、そうでない部分が混在する。

RSの赤いストライプが入ったシートベルトと赤いアクセントトリムは、鮮やかで効果的。

しかし部分的にアルカンターラ製のスポーツ・ステアリングは、よく握りそうな部分は一般的なレザー張りで、触れる機会が少ない6時と12時の位置のみ、スウェード風の素材に切り替わっていたりする。

同様に、部分的にアナログで、一部デジタル表示となっているインストゥルメントパネルも、しっくりこない。正方形のモニターと、雰囲気が異なるアナログのタコメーター、デジタル文字のスピードメーターが並ぶのだが、大きすぎるアナログの燃料計と水温計によって、モニターはいかにも窮屈そうに見える。

大きなモニターの中に、燃料計と水温計を内蔵し、必要に応じて表示を切り替えられる方が、よりスマートだったのではないかと感じてしまう。

細かい部分ではあるが、このようなディティールは、クルマのドライビングを心から楽しむ上では重要なポイント。この眺めに慣れるまでは、ドライビングに浸れないと思うから。

精彩に欠くシフトパドルとエンジン

もうひとつメガーヌRS280で気になる部分は、デュアルクラッチATのシフトパドルの位置とタッチ。残念ながら、これには記憶がある。メガーヌのシフトパドルの触感は、クリオよりも良くはなっているが、大きくは変わりない印象。強く批判されてきたクリオRS200の軽すぎるパドルが、一回り大きな兄貴分となるモデルにも搭載されてしまったようだ。

そもそも、ステアリングコラムから不自然な位置に伸びているので、変速する度に、指先を少し伸ばす必要がある。

加えてソリッド感に欠けており、ちゃんと変速できたのかどうか、実感が乏しい。従来通りスポンジのような操作感だから、パドルをうっかり引き上げることもあり、間違って2速同時に変速ということも起こり得てしまう。

ちなみに、ステアリングコラムに備わるオーディオコントロールは、少し上方に移動した。

デュアルクラッチAT自体は、とても良く動作し、シフトダウンよりもシフトアップのスピードの方が速いが、ギアレシオの設定も悪くない。クリオRS200のものよりも、駆動力をしっかり前輪に伝え、ドライバーに意思に沿ったコントロールをしてくれる。

スムーズさと賢さを持ったミッションで、Dレンジのままなら、より操作しやすいシフトパドルを持ったホットハッチのライバルより優れていると思う。

そのギアボックスと接続されるメカニズム、エンジンの仕上がりはどうかというと、十分に力強いものにはなっている。ホットハッチと呼ばれるカテゴリーの中では、競争力のあるものと言えるだろう。

しかし旧モデルのメガーヌ275が搭載していた2.0ℓエンジンから置き換わった1.8ℓターボエンジンが、平均以上だとも思えない。

メガーヌRS280は実際の路上では極めて高い戦闘力を持ってはいるが、それはエンジンに依存するものではない。高回転型でトルキーな性格ではあるものの、サウンド面の特徴はなく、アクセルペダルの動きとレスポンスとの間に若干のズレも看取される。

シビック・タイプRの2.0ℓエンジンのように、高回転域での強引なまでのパワーがある訳でもない。ホットハッチのエンジンは、熱いほど良いのだが。

センセーショナルなシャシー

メガーヌが他のホットハッチよりも優れているところ、それは、シャシーに尽きる。控えめに表現したとしても、センセーショナルな仕上がりだ。

ステアリングの適正な重さと十分なフィードバックで、クルマを思い通りに操れる。荒れた路面では、滑らかさや柔軟性という面では、熟成不足の部分もあるが、漸進的なボディコントロールは一級品で、ライバルモデルとは確実に一線を画している。

メガーヌRS280はまさに見事な身のこなしを披露するアスリート。ハンドリングの俊敏性、卓越したコーナリングバランスなど、シビック・タイプRが大人しく感じられるほど、その運動性能の秀才ぶりは、突出している。

4輪操舵システムは各タイヤを結びつけ、「ルノー・スポール・レース」ドライビングモードでは速度の上昇に合わせて、逆位相から同位相へ変化する閾値が上がり、大きな効果を発揮する。

多くの4輪操舵システムを持つクルマの場合、これは50km/h前後で切り替わるのが一般的なのだが、メガーヌRS280のレースモードの場合、100km/hほどまで切り替わらず、逆位相の制御が入るのだ。

そのため、クルマは、スロットルでバランスを取らせつつ、驚異的な速度でコーナーを旋回することが可能。同時に、ニュートラルステア状態でドリフト状態に持ち込む簡単さにも、驚くはず。リアタイヤは気持ちいいほど、テールをスライドに持ち込んでくれる。

これにより、ごく低速域であっても、きついコーナーでのクルマのパフォーマンスを向上させ、爽快な素晴らしいドライビングを実現している。

新たなベンチマークの登場へ

総括すると、メガーヌRS280は、一部においては極めて高次元な仕上がりを持っているが、その他の部分も不満を抱くほどではなく、充分な仕上がりを得たと言える。

フォルクスワーゲン・グループの持つ、完成度の高いデュアルクラッチ・トランスミッションが組み合わされれば、更に良くなるに違いない。しかし、それだけでなく、エンジンもこのクルマには相応しいものだとは思えないし、シフトパドルも必要といえるほどのオプションではない。

一方で、ハンドリングに関しては「スポーツ」グレードでも素晴らしい仕上がりとなっており、「カップ」グレードならさらに良くなるはず。

そう考えると、エンスージァストにとって、特長の薄いエンジンや、軽すぎるパドルのフィーリングなどは、さほど重要視する問題でもないように思える。

ホットハッチのチャンピオンとして君臨する、シビック・タイプRを超える、お手頃なハイパフォーマンスカーとして、メガーヌRS280は新たなランドマークとなり得るのか。

その可能性は極めて高いと考えている。

番外編 アダプティブダンパーに代わる技術

今回、メガーヌRS280が装着する「油圧式サスペンション・バンプストッパー」は、ルノー・スポールのモデルでは初めてという訳ではない。

ルノーはこの機構を「ダンパーに内蔵されたダンパー」と表現しているが、ガス封入式のショックアブソーバーがフロントとリアのサスペンション・ストラット下側に独立して取付けられている。

一般的にラリーカーで用いられているもので、メガーヌRSでは4輪それぞれに装着されているが、クリオRSではフロントアクスルのみとなる。

そもそもこの技術、ルノー車としては2005年のクリオRS182トロフィーに遡る。

ルノーはアダプティブダンパーもテストをしていたが、アダプティブダンパーの開発に費やすより、通常のタンパーと油圧式サスペンション・バンプストッパーとの組み合わせを煮詰めたほうが、より優れたダイナミック性能を引き出せると考えたらしい。

これはルノー・スポールのシャシー設計担当からの話なので、かなり信頼できる情報だと思われる。

ルノー・メガーヌRS 280 EDCのスペック

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