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【アイデアはよかったが消えていった】日本車 珍技術 珍装備の道程

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【アイデアはよかったが消えていった】日本車 珍技術 珍装備の道程

 1970年くらいからバブル崩壊までは、日本のクルマ業界の成長期で、経済的にも上り調子だった。自動車メーカーは、失敗を恐れず、研究開発費をふんだんに投入することができたので、実に個性的なクルマ&技術が生まれた。

 今回は、よかれと思って投入した新技術&新装備。だがワキの甘さか狙いの甘さか。市民権を得るには至らず、「新」がいつしか「珍」となる。そんな愛嬌あふれるヤツらをご紹介したい。

【キックスの次はどれだ!? 消滅するブランドも】 日本より魅力的!!? 日産の海外専売車たち 27選

※本稿は2019年9月のものです
文:清水草一(技術)、渡辺陽一郎(装備)/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年10月26日号

【画像ギャラリー】珍技術&珍装備を搭載していた懐かしのクルマたちが登場!

■技術編

●ハイパーシフト

ホンダ/トランスミッション
採用車/初代シティ
 元祖トールボーイで大ヒットした初代シティに、1985年4月に追加された珍技術。4速MTに副変速機構を加えた7速MTなのだが、この副変速機の面白いところは、そこだけ自動変速(セミAT)だったこと!

 つまり、ドライバーはフツーに4速MTとして操作するんだけど、アクセル開度などから、2~4速で自動的にハイとローに切り替わって合計7速! でもって主な狙いは省燃費! なんじゃそりゃって感じで、まったくウケませんでした。

ホンダ 初代シティR。ハイパーシフトを初採用した

2速~4速それぞれに、車速やアクセルの踏み具合などから演算して自動で高速側と低速側に切り替わる副変速機を備えていた。スイッチ操作で高速側に固定することも可能だった

●NAVi5

いすゞ/トランスミッション
採用車/初代アスカなど
 1984年当時、まだATってのはトロくて燃費が悪いものだった。そこに彗星のごとく現われたのが、いすゞのNAVi5!

 これこそ世界初のシングルクラッチ式セミATなのだ! 基本は5速MTで、クラッチペダルはなく、変速は手動と自動が選択可能。私も当時、若きクルマ好きとして非常に期待したものです。

 が、実際のフィーリングは「変速が超ヘタなセミAT」という感じで、残念な結果となりましたが、世界に先駆けたことは間違いない。2代目ジェミニにも採用されました。

1984年9月、初代アスカに採用。通常のMTのようにH型のシフトパターンが採用されていた

●スポーツマチック

日産/トランスミッション
採用車/2代目チェリーなど
 1976年からチェリーなどに搭載されたもので、前進3段、後退1段のトルコン式セミAT。

 名前とは裏腹に、まったくスポーティではない簡易式オートマチックだった。トルコンはついているからクラッチペダルはないけれど、3段の変速はドライバーがレバーをガチャガチャ操作して自分で行う必要がありました。

 似たようなのにホンダマチックがあり、こちらはヒットしたけれど、日産のスポーツマチックはより単細胞だったためか、フルオートマへのバトンタッチを余儀なくされ、消滅したのでありました。

●エクストロイドCVT

日産/トランスミッション
採用車/V35型スカイライン
 トロイダル式変速機は、19世紀から「夢の変速機」として開発が始まったが、実用化したのは120年後の日産(1999年)が最初! というからスゲエ。中身を説明すると長くなるので割愛するが、乗った感じは、スムーズでダイレクトでした。

 ただ、メチャメチャコストが高い! 普通のトルコンATの50万円高! 一方、性能向上はそれほどでもなく、熟成不足ゆえに故障も多かった。結局、誕生からわずか6年後、早くも消滅してしまいました。涙が出ますね。

日産 スカイライン(V35型)

ギアが8段に分けられ、変速はパドルシフトでも可能とされた。製造はジヤトコが担当していた

●スーパーシフト

三菱/トランスミッション
採用車/初代ミラージュなど
 単純明快な副変速機で、4速MTが8速MTに! スゲエ!? 通常のシフトレバーの右側に、もう1本シフトレバーがあり、そっちを手動操作すると「パワー」と「エコノミー」の切り替えが可能だった。

 クラッチペダルを踏めば走行中にも切り替えられたので、2本のレバーを縦横無尽に駆使すれば8速MTになるわけです。

 実際には、8速をチェンジしまくる人はまずいなかったが、なんとなく夢があり、ミラージュ、コルディアと、約10年間生産されました。

初代ミラージュのインパネシフト

●直5縦置きFF

ホンダ/エンジン
採用車/初代インスパイアなど
 ホンダは走り命のメーカー。ただしFFしか作っていなかった。そこで打ち出したのが5気筒エンジンをフロントミッドに置いて、前輪を駆動するというもの

 前輪車軸はエンジン下のオイルパンを貫通していてコレでミドシップ? という気がしないでもないが、エンジンの重心点は車軸より若干後ろ寄りにあった。

 5気筒エンジンは素晴らしいフィーリングで、ドライの舗装路の走りは感動的だったが、トラクションのかかりが弱く、雪道は苦手だった。

写真の2.5L、直5SOHCのG25A型エンジンは190ps/19.0kgmの出力を発生していた

●プレッシャーウェーブスーパーチャージャー

マツダ/エンジン
採用車/5代目カペラ
 排気側に発生する圧力を、レンコン状の開閉機構によって吸気側に伝え、スーパーチャージャーのような働きをさせるという、非常にシブい技術だった。当時、多くのクルマ好きは、ディーゼル乗用車なんつートロいもんには見向きもしなかったが、これを積んだカペラのトルクには、私も大変感心しました。

 スロットルラグがないなどのメリットもあったが、メンテナンスを怠るとトラブルになるという弱点があり、結局ターボに取って代わられてしまいました。南無~。

通常のスーパーチャージャーより出力損失が少ないなどの長所もあったが、ススなどがたまりやすかった

●1.6L、V6

三菱/エンジン
採用車/4代目ランサー
 1991年に登場した4代目ランサーには、当時量産車世界最小の1.6L、V6エンジンを搭載した「ランサー6」がラインナップされていた。その後ミラージュ(マジすか!?)にも搭載され、ミラージュ6と名付けられた。

 1991年はNSXが登場した年。バブルは崩壊していたが、それに気づいていた人はほとんどおらず、日本は好景気を謳歌していた。この年はマツダも1.8LのV6を発表しております。そういう時代だったということですね。

●MCA-JET

三菱/公害対策技術
採用車/初代ランサーなど
 三菱が開発した排ガス浄化システムのひとつで、当時の三菱車のリアには「MCA-JET」のエンブレムが誇らしげに貼られていた! つってもまぁ、それほどのありがたみはなかったですが。

 キモは、ジェットバルブと呼ばれる超小型の吸気バルブを燃焼室内に配置して、強力な乱流を起こすこと。これで希薄燃焼や大量EGRを実現したとのことです。乗ってもそういう実感はゼロでしたが、「JET」の語感はイケてました。なにしろジェット機みたいなので。

MCA-JETシステムは初代ランサー以外に、3代目ギャランΣ(シグマ)などに採用された

●3気筒、1.2L、3バルブ

スバル/エンジン
採用車/初代ジャスティ
 1980年代はツインカムとターボが憧れの的。バルブ数は多ければ多いほどエライのであった。そんななか、ジャスティは1.2L、3気筒エンジンで1気筒あたり3バルブの計9バルブという、ちょい変わり種を投入! 『火の玉ボーイ』というキャッチコピーとともに打ち出したのでありました!

 しかし当時のクルマ好きは、「やっぱ1気筒4バルブじゃねーとな」って感じで、ほぼスルー。その後は実用エンジンとして、しぶとく生き残ったのでありました。

●1L、3気筒ディーゼル

ダイハツ/エンジン
採用車/2代目シャレード
 近年、小排気量ディーゼルは世界的な排ガス規制の強化によって絶滅しつつありますが、1983年登場の2代目シャレードでは、なんと3気筒1000ccのディーゼルターボが新規開発されたのですよ! スゲエ! これ、ひょっとして、量産ディーゼルの世界最小記録かも。

 当時のキャッチコピーは、「凄いビートだぜ、Rock’nディーゼル」。実際、3気筒ディーゼルの振動はハンパじゃなかったらしいっスけど、乗ったことないのでわかりません。乗ってみたいなぁ。

3気筒ガソリンエンジンをベースに作られたが、振動や騒音は大きかった。キャッチコピーの勢いに反し、性格は意外にも実用的だった

●スーパーストラットサス

トヨタ/サスペンション
採用車/6代目レビンなど
 ストラットでダブルウィシュボーンに対抗できる性能を! ということで、トヨタが1991年に開発し、AE101型レビン/トレノやセリカなどに搭載した。詳しくは省略するが、「凝ったメカのストラットサス」で、自然なフィールでとてもよく曲がった。

 ただ、当時ライバルだったホンダのシビックなどは4輪ダブルウィシュボーン。クルマ好きとしては「そっちのほうが断然エライ!」という感じで、ゴマメの歯ぎしりと捉えられてしまう向きもありました。かわいそうに。

●ニシボリックサスペンション

いすゞ/サスペンション
採用車/3代目ジェミニ
 1990年に登場した3代目ジェミニに搭載されたもので、勝手に4WS的な動きをして、コーナリングを助けるもの。当時は「限界域でオーバーステアになる」と酷評されたが、よくわかりませんでした。

 それより西堀さんが開発したから、「ニシボリックサス」というネーミングが非常にインパクト大で、それはそれはよく覚えております。それと、街の遊撃手だったジェミニが、この3代目で妙チクリンなデザインになって超ガックリでした。よってニシボリックサスペンションどころじゃありませんでした。

■装備編

●シアターステーション

三菱/AV装備
採用車/3代目ミラージュ
 3代目ミラージュのザイビクスは、3ドアハッチバックだが、後席のない2シーター。車内中央から後部はフリースペースになる。そのメーカーオプションに、ルーフの後部をカプセル状に持ち上げるマルチトップがあった。

 この仕様をベースにディーラーオプションで用意されたのが、AVキットのシアターステーションだ。カプセル内部に6インチTVモニターやスピーカーが収まる。TVを下側に引き出して、前席背面に装着されたハンモックに寝そべりながら鑑賞できたのだ。

こちらが噂のシアターステーション

●電動ワイパー付きフェンダーミラー

日産/機能装備
採用車/初代レパードなど
 初代レパードには、フェンダーミラーに装着する電動ワイパーが採用されていた。小さなワイパーが鏡面の上を左右に動き、雨滴を除去するものだ。世界初の装備とされたが、ワイパーブレードが邪魔をして、むしろ見にくかった。

 それでもこの装備は廃れず、初代シーマのドアミラーにも装着された。スイッチを押すとワイパーブレードが上下に動き、初代レパードに比べるとミラーの視認性を向上させていた。進化したのだ。

実用性は高そうに見えるのだが、普及はせず、珍技術となってしまった

●サスペンションシート

三菱/機能装備
採用車/初代パジェロ
 初代パジェロにはサスペンションシートという装備が用意されていた。シートの下側にスプリングが装着され、シート自体に衝撃吸収機能を持たせたものだ。ドライバーの体重に応じてスプリングの硬さを調節できて、サスペンション機能が不要な時は、3段階の高さで固定できた。

 実際に使うと、カーブを曲がる時には、ボディに加えてシートの角度まで大きく傾く。そのために体がシートから滑り落ちそうな感覚があった。直線の悪路をゆっくり走る時に使う装備だったのだ。

●セーフティドライブアドバイザー

日産/運転支援装備
採用車/7代目ブルーバード
 7代目ブルーバードに採用された装備で、ドライバーのステアリング操作と運転時間から、疲労を判断する。必要に応じて、インパネ中央の下側に装着されたインジケーターで休憩を促すこともしてくれた。

 ステアリング操舵角センサーと専用のマイクロコンピューターが備わり、ドライバーの操舵パターンが予め記憶されている疲労時のパターンと一致すると、注意を促すという仕組みだった。

 この時点では一種のアイデア装備だったが、今のクルマにも進化した機能が安全装備として採用されている。

7代目ブルーバードにオプションで設定。運転開始約30分ごとに積算運転表示が点灯してゆき、2時間以降は1時間ごとに絵表示とブザーでドライバーに休憩と注意を促す

●サイドウィンドウワイパー

トヨタ/機能装備
採用車/6代目マークII
 1988年デビューの6代目マークIIの装備。初代シーマはドアミラーにワイパーを装着したが、マーIIはサイドウィンドウの雨滴を除去して、クリアな視界を得ようと考えたのだ。雨滴を除去すべきはサイドウィンドウか、それともドアミラーか、非常に悩ましい選択だ。

 両方装着する方法もあるが、1989年に発売された初代セルシオは、世界初の超音波を使ったドアミラー雨滴除去装置を採用した。これにサイドウィンドウワイパーを組み合わせると完璧だろう!?

スイッチを押すと下から上へワイパーが動き、雨滴を効果的に除去する

●アンブレラポケット

日産/機能装備
採用車/3代目パルサー
 3代目パルサーの3ドアハッチバックが採用したのはアンブレラポケット。ドア開口部のボディ側(ストライカー金具が付いている上側あたり)に、穴が設けられており、そこに専用の傘を収納できた。

 小さな蓋を開き、なかに入っている傘のグリップを押すと、手前に出てくる。内側には水抜き穴もあり、水が溜まらない配慮もされていた。

 報道発表会で、開発責任者の千野甫主管が「仕込傘です」とユーモアを交えて説明していたのを覚えている。

現在はロールスロイスも採用するナイス装備だが、3代目パルサーで幕を閉じた

●アクティブエアロ&アクティブエキゾースト

三菱/機能装備
採用車/GTO
 GTOには、後輪も操舵できる4WSなど、さまざまな可変機能が採用されていた。ユニークなメカニズムでは、まずツインターボに装着されたアクティブエアロシステムが挙げられる。

 時速80km以上では、フロントベンチュリスカートが50mm下側へせり出し、リアスポイラーは角度が14度増えて揚力を抑えた。

 排気音を切り替えるアクティブエキゾーストシステムも備わり、スイッチ操作でスポーティな音色を奏でるノーマルと、サイレントモードを選択できた。

バンパー下に見えるのが「アクティブエアロシステム」だ

●オープンベンチモード

ホンダ/機能装備
採用車/初代オデッセイ
 初代オデッセイは、3列目のシートが床下格納だった。背もたれを前側に倒し、後ろ側に反転させると床下にスッポリと収まる。

 この機能を活用したのがオープンベンチモードだ。停車時にリアゲートを開き、3列目シートを後ろ側へ反転させると、背もたれに腰掛けて外を向いて座ることができたのだ。リアゲートを開き、釣りをする時などは便利に使えた。

 と言いたいが、実際には開いたリアゲートが上側にあるので、釣り竿を操るのは難しかった。でも楽しかったのでヨシとしたい。

実際に座ると、かなりお尻が沈みこみ、足は持ち上がる感じで、身動きがとりづらかった印象がある

 失敗は成功の母だという。ここで紹介した技術や装備がなければ、後の進歩はなかったかもしれない。

 なので、これらの技術および装備に最大限の敬意を、苦笑いを浮かべた顔で払っていただきたい。ではでは。

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