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マクラーレンの勢いは止まらない──720S試乗記

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マクラーレンの勢いは止まらない──720S試乗記

今や年産5000台に成長したマクラーレン。なかでも、“スーパー”と呼ぶラインの「720S」の魅力とは?

マクラーレンの驚くべき成長

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今や伝説のスーパースポーツとなった「F1」が登場したのは1993年のこと。以来、長きにわたってストリートモデルとは縁がなかったマクラーレンが、本格的なメーカーとしての体制を構築してスーパーカーカテゴリーにうって出ることが判明したのは2009年のことだ。

そしてその第1弾となる「MP4-12C」が販売開始されたのが2011年。以来、10年にも満たない間に年間約5000台の販売台数をうかがうほどのメーカーへと成長した。

PatrickGosling/McLaren Automotiveおなじく昨年実績でフェラーリは1万台超え、ランボルギーニは8000台余と聞けばその数は少なくみえるかもしれないが、全モデルがミドシップ2シータースポーツという普通ではないラインナップのマクラーレンがわずか9年でこの数というのは、驚くべき成果であると思う。

もっとも、このプロジェクトの立ち上がり時点でマクラーレンの総帥だったロン・デニスは、2015年には4000台という成長戦略を掲げていた。が、それはたった5年で当時のフェラーリ級の規模に一気に並ばんとする途方もない目標で、聞かされた誰もが、その達成には疑いを差し挟まざるをえなかったと思う。

が、テレビを通してマクラーレン・ホンダの黄金時代を共闘した気分でいる僕の場合は、ロン・デニスの冷徹な遂行力は身に沁みている。彼独特の難解な英語が飛び交うプレゼンを聞きながら、無理だろうという諦めの気持ちと、もしかしたら……という期待の気持ちとが微妙に入り混じっていたのを覚えている。

その後ロン・デニスはマクラーレンを追われたが、彼のプランは3年遅れで達成された。日本には既に1000台以上の保有があり、販売面ではアメリカ、イギリスに次ぐ第3位の市場になっているという。

マクラーレンのプロダクトラインは、(1)アルティメイト(2)スーパー(3)スポーツの3つに大別される。うち、アルティメイトは「P1」や「セナ」、「スピードテール」など限られたユーザーに向けて突き詰めた性能のクルマを提供するライン、スポーツは「600LT」や「GT」などのライン、そしてスーパーに属するのが今回試乗した「720S」ということになる。

スーパーとスポーツのラインはカタログモデル相当ということになるわけだが、各々の性格を探ってみれば、600LTは徹底した軽量化や引き締めたサスといった常套手段で走りを鍛え上げた純然たるスポーツモデル、GTはその名の通り、ロングツーリングにも耐えうる快適性や積載性を売りにしたラグジュアリーモデルという位置づけだ。

McLaren GT Test Drive - St Tropez - Aug-Sept 2019BeadyeyeMcLaren GT Test Drive - St Tropez - Aug-Sept 2019BeadyeyeMcLaren GT Test Drive - St Tropez - Aug-Sept 2019Beadyeye720Sの位置付け

では720Sはどういうモデルか? 平たくいえば600LTとGT、双方の個性を両取りしながら更にパフォーマンスも高めた文字通りのスーパーな存在ということになるだろう。くわえて720Sは、マクラーレンの全てのモデルの技術的なコアでもある。

その最たる部分はマクラーレンの全モデルが採用するカーボンモノコックタブを、主たる剛性メンバーとして前後フレームを構成するシャシー構造だ。MP4-12Cで初めて採用された「モノセル」はこの720Sでは「モノケージII」になり、他モデルに先駆けた進化を遂げている。先日マクラーレンは100%電動化パワートレーンに対応する次世代のカーボンモノコックを発表したが、それもまた、モノケージIIで得た知見を存分に活かした発展型といえるだろう。そしてこのカーボンモノコックタブを軸とするクルマづくりは、ほかのスーパースポーツのコンセプトにも影響を与えている。

カーボンシャシーのクルマはならではの“癖”として、走っている最中に感じられる特有の張りの強さや、凹凸を踏んでいく際の鈍い残響などが感じられることが多い。が、720Sではそういう雑味が概ね抑えられている。シートのアンコは薄めでカチッとした着座感ながら、突き上げに顔をしかめることもない。握り径、断面形状、革厚と、どれも欠点のない絶品のステアリングにも、嫌な振動の類は伝わってこない。

カーボンシャシーにはそれに適したアシの作り方がある。マクラーレンはそこをよく理解しているのだろう。MP4-12Cでは入力に対し、饒舌に上屋姿勢を変えて接地感を体躯からも伝えてくる油圧アクティブサスが技術の独自性と粘り強いハンドリングを両建てしていた。600LTやGTではコンベンショナルなサス形式を採るものの、この車体の動きの饒舌さは味付けとして意識されている。

そして720Sには、この油圧アクティブサスの正統進化版である「プロアクティブシャシーコントロールII」が採用された。路面入力を常にセンシングし、0.5mm秒という超高速でサスコントロールに反映させるというそれは、コンフォート・スポーツ・トラックと3つのドライブモードとも協調しており、各々のシーンで最適な減衰制御を実現している。

驚異的なスピード感

今回ロングツーリングのお供となった720Sに乗ってあらためて思ったのは、やはり乗り味のダイナミックレンジの広さだった。

路面状況が刻々と変わる公道であっても、然るべき場面では600LTより応答の俊敏さを感じる場面もあれば、GTよりふんわりした穏やかなタッチに癒やされる場面さえある。あらためてマクラーレンはシャシーのクルマだなぁと感心させられた。

MP4-12Cに合わせて新規開発された3.8リッターV型8気筒エンジンは、720Sでは4.0リッターに拡大、パワーは車名の由来でもある720psに達している。

登場当初は額面通り仕事はするものの、吹け感やサウンドなどの情感に乏しい、ある意味イギリス車らしいエンジンだなぁと思っていた。が、今やこちらも退屈させられることはない表情をみせてくれる。低~中回転域はターボの存在感を余り匂わせずフラットな印象であるが、高回転に向かうにつれてのパワーの駆け上がりやスッキリした吹け切りなど、スポーツカー・ユニットとしての爽快感もしっかり備わった。

そしてなにより、その“火力”は圧倒的だ。持ち前の前方視界の良さもあって、そのスピード感はクルマのそれというよりも、空飛ぶものでも扱っているのかと錯覚させられるほどである。

720Sの価格は3530万円。GTより約900万円、600LTより約500万円高価だ。そもそものハードルからして高いというのに、到達までには他銘柄だけでなく、身内にも難敵が待ち構えている。でもフルコンプのマクラーレンで得られる世界の濃さを思えば、この敷居の高さもむべなるかな、というべきなのかもしれない。

文・渡辺敏史

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