ジャガーはこのほど、ガソリンモデルの最終受注日を発表。F-TYPEは2023年11月21日、XEとXF、XFスポーツブレイクは同12月19日受注分で終了する。ジャガーは2025年にEVブランドに移行するが、ブランドの魅力は変わらないのか、またこれまでの伝統はどうなるのか?
文/九島辰也、写真/ジャガーランドローバー、ベストカー編集部、トヨタ
ジャガーの内燃機関モデルが2023年内生産終了へ! EVメーカーになるジャガーって魅力あるのか?
■いよいよジャガーも内燃機関モデルを年内で生産終了へ……
日本では2013年から導入されたF-TYPEも2023年内で生産終了することが正式にアナウンスされた
ジャガーが内燃機関のモデルのF-TYPE、XE、XF、XF スポーツブレイクの最終受注日を発表した。それによると、F-TYPEは2023年11月21日、XE、XF、XFスポーツブレイクは2023年12月19日の受注分で終了するらしい。
このニュースはジャガーを何台か所有してきた英国車好きの筆者にも響いていて、「ついにその時が来たか……」という心境になった。かねてから電気自動車(BEV)のラグジュアリーブランドに移行することをアナウンスしてきたとはいえ、なんとなく物悲しい。
そこで、すぐにジャガーのインポーターへ連絡し、F-TYPE、XE、XF、XF スポーツブレイクのどれでもいいから少し長めに試乗できるクルマを貸してほしい旨を伝えた。
モータージャーナリストとして、またイチジャガー好きとして、居ても立っても居られなくなったからだ。なので、この原稿を書いているこの間もXFスポーツブレイクを自宅のガレージに置いている。2L直4ディーゼルターボとマイルドハイブリッドの掛け合わせだ。
とはいえ、2週間のテストドライブも原稿執筆時点でもう少しで終わりとなり、返却の日が迫っている。う~ん、寂しい。
なんとか広報車が消滅する前に5LV8エンジンを搭載したF-TYPEのステアリングを今一度握りたいものである。プロトタイプから何度も英国へ行ってテストドライブを繰り返したクルマだけに思い入れは強い。
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■EV専業になってもジャガーの魅力は変わらない?
これまでのような内燃機関のジャガーとしての魅力を今後も保ち続けることは果たして可能なのだろうか?
それじゃ2025年、ジャガーが電気自動車メーカーとしてラインナップを構築したら正直なところどうなるのだろう。すでに、ボルボやベントレー、ロータスなどが内燃機関からの完全なる脱却を掲げている。
ボルボのような安全性とユーティリティに重きを置いているメーカーはわからなくもないが、ジャガー、ベントレー、ロータスのような「走り」と「その味」を大切にしているところはどうなるか興味津々だ。
ではジャガーのBEV化について先を論じてみたいと思う。EVになってもジャガーの魅力は変わらないのか。
■ジャガーの魅力は「デザイン」と「走り」のふたつ
エレガントな戦前のジャガーモデルであるSS100。これぞジャガーデザインの美しさが昇華されている?
このブランドの魅力は大きく分けてふたつあると思う。「デザインの美しさ」と「かつて猫脚と形容されたワインディングを中心とした走り」だ。デザインの美しさに関してはいまさら多くを語るまでもないだろう。戦前のSS100や戦後間もないXK120もそうだし、1961年リリースのE-TYPEに代表される。
こちらはジャガーXK120
どれも評価は高く、多くの人に賞賛されているモデルだ。そして、その価値は今日のクラシックカー業界でも健在。ここ数年、売買価格は上がっている。もう15年以上前になるが、積極的にクラシックカーラリーに参加していた頃はそれほどでもなかったが、今は違う。
ジャガーEタイプシリーズ1。1961年のデビューながら現在もそのエクステリアデザインの美しさは普遍!
ジャガーEタイプを例にとれば、シリーズ2やシリーズ3はまだしも、シリーズ1は青天井のような価格上昇。その理由はやはりデザインの美しさにほかならない。シリーズ2以降は北米での安全基準などが加味されるが、それのないシリーズ1の伸びやかで自由なラインはほかに類のない仕上がりと言われている。
ジャガーEタイプシリーズ2。1968年10月に進化した
■「サー」の称号が与えられたジャガー創始者とは?
ジャガー創始者のウイリアム・ライオンズ氏(右)
ところで、ウイリアム・ライオンズという人物をご存じだろうか。言わずと知れたジャガーの創始者である。で、そんな彼が1960年代後半ナイトの爵位を与えられた。以降、彼を呼ぶ時は“サー”の称号が付くことになる。
でも、多くの人はその理由について言及しない。その理由は彼がジャガーブランドを作ったことを讃えられたのではなく、英国社会に貢献したことでもない。工業デザイナーとして高く評価されたのだ。
つまり、デザインこそジャガーの真髄なのである。というエビデンスを鑑みると、BEV化というより大切なのはデザインと言っていいかもしれない。それがジャガーとして成立していれば、魅力のひとつの要素はクリアできる。
■走りはEVだとどうなるのか?
ジャガー初のEVモデルとなるI-PACE
では、ジャガーの魅力その2となる「かつて猫脚と形容されたワインディングを中心とした走り」だが、これに関しては実際に走らせないと答えは出ない。現在のI-PACEから察すると正直難しい気もする。
が、そもそもジャガーというブランドは創業時からデザインとシャシーで勝負してきたメーカーだ。エンジンはMG社やスタンダード社から提供してもらって、ギアレシオを変えて出だしを速くしたりしていた。
つまり、その文脈からすれば最終的にきっちり仕上げてくる可能性はある。正確なハンドリングやリアのスタビリティを高めることで、「ジャガーネス」を完成させることはできなくないだろう。
■かつてのXJSのようなロングノーズのジャガーに期待!
これぞジャガー! といった感のあるロングノーズスタイルの2ドアクーペ、XJS
なんて妄想が膨らむのだが、それも現実にはジャガーの首脳陣次第。EVでどこまでデザインと走りにこだわり、時間をかけられるかだ。
個人的にはセンタートンネルのないEV専用プラットフォームでかつてのXJSのような薄く平べったいロングノーズのスポーティカーを世に送り出してもらいたいが、いかがなものだろう。
XJシリーズはベントレーベンテイガのようなSUVにしても、EV時代のブランド再構築からして2ドアクーペ&コンバーチブルは復活すべきだ。
そのあたりは英断なんだけど、最近の首脳陣は冴えないのが正直なところ。そこはあまり期待しないで、ゆっくりとお待ちしております。
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みんなのコメント
そもそもEVって、◯◯のモーターは最高!なんて言わない。自社でモーターなんか作る自動車メーカーなんか無いから、これからの時代はアッセンブリになるんだろうね。