現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > 僕には必要な勝利なんだ! マクラーレン、緊迫のチームオーダー。ドライバーとエンジニアは何を言っていた?|F1ハンガリーGP

ここから本文です

僕には必要な勝利なんだ! マクラーレン、緊迫のチームオーダー。ドライバーとエンジニアは何を言っていた?|F1ハンガリーGP

掲載
僕には必要な勝利なんだ! マクラーレン、緊迫のチームオーダー。ドライバーとエンジニアは何を言っていた?|F1ハンガリーGP

 F1ハンガリーGP決勝では、マクラーレンのオスカー・ピアストリがレース大半をリードしていたものの、最終ピットストップでチームメイトのランド・ノリスが先行した。ただマクラーレンはチームオーダーを発令し、ポジションを再び入れ替えるようノリスを説得。担当レースエンジニアのウィル・ジョセフとの無線でのやり取りは、ノリスがピアストリに優勝を譲りたくないというドライバーの心情を如実に現していた。

 レース序盤からピアストリ、ノリスによるワンツー態勢を築いたマクラーレン。中盤のスティントでは、ピアストリがコースオフしたことで、一時5秒近くあったふたりのギャップが2秒以内に縮まるタイミングがあったが、2台はそのままのポジションで最終ピットストップを迎えた。

■海外F1記者の現場勘|角田裕毅はレッドブル陣営内で“過小評価”されている? 「まるで実力を把握したくないかのよう……」

 マクラーレンはまずノリスをピットに呼び込み、後方を走るメルセデスのルイス・ハミルトンやフェラーリのシャルル・ルクレールのアンダーカットを阻止しようと考えた。

 ただフレッシュタイヤのアドバンテージは強力で、ノリスは逆に2周遅れてピットインを行なったピアストリをアンダーカットしてしまった。

 当時、ピアストリは担当レースエンジニアのトム・スタラードと、ノリスはジョセフとこんなやり取りをしていた。

スタラード(43周目):
「我々はハミルトンをカバーしようとは考えていない。今ピットストップするのは早すぎる」
スタラード:
「オスカー、どこまで引っ張れると思う? プランAの目標ラップまで行けるか?」

ジョセフ(43周目):
「ランド、ハミルトンとのギャップは28.5秒。現状は少し早いと考えている。どんなペースでも構わないから、(タイヤ交換タイミングの)ターゲットからマイナス5を狙いたい」

ジョセフ(45周目):
「ランド、チャンスだ。ターン2のブレーキングポイントは良い。ピークは少ない」

 ノリスは45周目終わりにピットに飛び込みタイヤを交換。ジョセフからノリスへのメッセージは、45周目の終わりでピットストップを行なうという意味だったようだ。

 首位を走っていたピアストリに対しスタラードは、ノリスが最後のピットストップでハードタイヤからミディアムタイヤへ変えたことを伝えられており、チームメイトの状況を把握していた。

 ピアストリも同じ状況のミディアムタイヤを履く予定だったが、使い古したハードタイヤを使い切るためにプッシュ。スティントを少し引っ張り、47周目の終わりでピットへ入った。

スタラード(46周目):
「ハミルトンをカバーするためにランドがピットイン。この状況をマネジメントするつもりだ。君の今のペースはベストだ。ベストペースだよ」
スタラード:
「ベストペースだ。ランドのことは心配しなくていい」

ピットストップでピアストリ後退……ここから話がもつれていく

 そしてノリスにも情報が伝えられ、ピアストリがハミルトンを大きく引き離してピットアウトしたため、マクラーレンはワンツーフィニッシュは確実だと自信を持った。

 そのためジョセフはノリスに対して、最適なタイミングでポジションを入れ替えるよう指示した。

ジョセフ(48周目):
「よし、ランド。オスカーがピットに入った。君のすぐ後ろに出てくるはずだ。君の都合に合わせて、順位を再確立したいと思っている」

 しかしピアストリはアウトラップのターン12出口でグラベルにタイヤを落としタイムロス。そしてノリスに接近できるほどペースを上げることができなかった。

 ノリスから約2.5秒遅れでピットアウトしたピアストリだったが、既に温まったタイヤで飛ばすノリスから離され、小さなミスでさらにタイムを失った。

 そのためジョセフはノリスのペースを抑えようと、最後までタイヤをマネジメントするよう指示。ピアストリが比較的スムーズにポジションを入れ替えられるよう、ノリスがペースを落として2台が接近することを期待していたのだ。

 そしてピアストリもまた、ペースを上げるよう軽く促され、ノリスに接近したら必ずポジションを入れ替えさせると告げられた。

ジョセフ(49周目):
「ランド、ここからあと21周だ。今のところ、ファステストラップをマーク。タイヤに気を配ってくれ」

スタラード(51周目):
「OK、オスカー。ランドに追いついたらポジション入れ替えを行なう。しかしランドが多くのレースタイムを失うのは避けたい」

 この時点でレッドブルのマックス・フェルスタッペンはピットインしたばかり。ハミルトンとルクレールの後方5番手にいた。

 依然として、後方のドライバーに接近されることは懸念材料だったものの、マクラーレン勢がトップ2を維持できるだけのペースを持っていることが明らかになると、ジョセフは再びノリスにポジション入れ替えを要求し始めた。

 しかしノリスは、今シーズンここまで判断ミスによって勝利を逃してきたことを懸念してか、その要求にはすぐに応じようとはしなかった。そしてポジションの固定にこだわるのであれば、チームはピットストップの順番を逆にすべきだったと示唆した。

ジョセフ(53周目):
「ランド、無線のチェックをお願い」
ノリス:
「うん、ハッキリ聞こえるよ」
ジョセフ:
「OK、ターン4とターン11でタイヤを温存してほしい」

ジョセフ(56周目):
「タイヤをセーブして欲しい。我々はオスカーを通して欲しいと思っている」
ノリス:
「うーん、それなら最初に彼をピットインさせるべきだったんじゃない?」
ジョセフ:
「それは関係ないよ」
ノリス:
「関係あるよ、僕にとってはね」

 つかの間の攻防の後、ジョセフはノリスがペースを落とす気配が見せなかったことで、無線で少々苛立った様子を見せた。使用するミディアムタイヤの状態を心配しつつ、ノリスの良心に訴えかけながら、頻繁に念を押した。

 それに対してノリスは、ピアストリが追いついてくればいい話だと反論。そしてペースを落とすどころか、チームメイトとの差を広げにかかった。

ジョセフ(57周目):
「ランド、まだタイヤを使いすぎているみたいだ。ターン4、ターン11、ターン6出口のリヤ、ターン9に注意してくれ。オスカーは3.5(秒差)。君が正しいことをしてくれると信じている」

ジョセフ(59周目):
「ターン4、ターン11。これはつまらないことになりそうだ」

ジョセフ(61周目):
「OK、ランド。残り10周。2台ともタイヤを使いすぎていると考えている。日曜の朝のミーティングを思い出してくれ」
ノリス:
「そうかい。彼に追いつくよう言ってくれ」

勝利が欲しいノリスの駆け引き

 ここから駆け引きが始まった。ノリスは1分21秒台半ばから後半のタイムを連発し、リードを5秒以上に広げていた。ジョセフはチームの調和を懸念していたが、ノリスは功利主義というよりも、F1タイトル争いのチャンスをできるだけ手繰り寄せようと考えていた。

 しかしジョセフは、ノリスが2024年にタイトルを獲得するには、時に盾役となるピアストリのサポートが必要だと反論した。

 いつもは動じないピアストリでさえ、ノリスがチームプレーをするのかどうなのか、疑問に思い始めたが、スタラードはチーム内で状況がコントロールできていると説き伏せた。

 そして最終的にノリスは67周目の終わりにスローダウン。ピアストリに首位を明け渡した。

ジョセフ(64周目):
「ランド、彼は君に追いつけない。君の主張は証明されたし、そんなことは関係ない」
ノリス:
「彼はずっと速いタイヤを履いている。僕はアンダーカットを狙った。もし僕がそうしてなかったら……」
ジョセフ:
「我々はチームのためを思って、このピットストップを行なったんだ」
ノリス:
「ああ、それに僕はチャンピオンシップのために戦っているんだ」
ジョセフ:
「私は君を守ろうとしているんだ。君を守ろうとしている」

ジョセフ(66周目):
「ランド、あと5周だ。チャンピオンになるには君ひとりでは無理だ。オスカーとチームが必要なんだ」

ピアストリ(67周目):
「長引けば長引くほど、リスクが高くなるよ」
スタラード:
「心配しないでオスカー、我々がなんとかする」

ジョセフ(67周目):
「今セーフティカーが入ったら、かなり厄介なことになる。今すぐやってほしい」

 首位を譲ったノリスは、しばらくの間ピアストリの後ろにピタリとつけていたが、最後は1秒後方まで下がり2位でチェッカーを受けた。

 ノリスがチームオーダーに腹を立てていたのは明らかだが、最終的に冷静さを取り戻し、たとえ納得していなかったとしても、チームの見解を受け入れる姿勢を見せた。

ノリス(68周目):
「ああ、何も言うことはないよ」

 ピアストリはF1で初のトップチェッカーを受け、グランプリウィナーとしてその名を刻んだ。ただ、ピットストップ時のタイムロスや最終スティントでのペース低下によって、チームオーダー完遂が難しくなったことを誤った。

スタラード(70周目):
「オスカー、良くやった。良くやったよ。チェッカーフラッグだ。良くやった。本当に良かった」
ピアストリ:
「みんな、ありがとう。本当にありがとう」
「調整もありがとう。ごめんね、必要以上に入れ替えを難しくしてしまって。でも、ありがとう。感謝するよ。最大ポイント獲得だ。本当に良い週末だった。F1初勝利。みんな、ありがとう」

ノリス(70周目):
「良くやった。良いワンツーだ。沢山ポイントを稼げた。みんな、おめでとう。それに相応しい働きだ」
ジョセフ:
「今朝も言ったけど、まだまだチャンスはあるよ」

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

メルセデスベンツ『Cクラス』でリコール…最悪の場合に火災のおそれ
メルセデスベンツ『Cクラス』でリコール…最悪の場合に火災のおそれ
レスポンス
納車からわずか1か月でEVレースに参戦した「ヒョンデ・アイオニック 5 N」が総合優勝の快挙! さらにレースファステストまで獲得するパーフェクトウィン
納車からわずか1か月でEVレースに参戦した「ヒョンデ・アイオニック 5 N」が総合優勝の快挙! さらにレースファステストまで獲得するパーフェクトウィン
THE EV TIMES
【ストリーモ】「謎解きガイド×次世代モビリティで豊洲を周遊」に車両を提供
【ストリーモ】「謎解きガイド×次世代モビリティで豊洲を周遊」に車両を提供
バイクブロス
いすゞが「新型ブレイド」を世界初公開へ! 精悍V字グリルに「専用ストライプ」採用の「本格四駆」! 全長5.2m超えの特別な「D-MAX」豪で登場へ
いすゞが「新型ブレイド」を世界初公開へ! 精悍V字グリルに「専用ストライプ」採用の「本格四駆」! 全長5.2m超えの特別な「D-MAX」豪で登場へ
くるまのニュース
プジョーの電動SUV『E-3008』と『E-5008』、「ロングレンジ」受注開始…航続700km
プジョーの電動SUV『E-3008』と『E-5008』、「ロングレンジ」受注開始…航続700km
レスポンス
不遇の時期を過ごしたアンドレアス・バッケルドが約2年ぶり復活の連勝劇/ナイトロクロス第3-4戦
不遇の時期を過ごしたアンドレアス・バッケルドが約2年ぶり復活の連勝劇/ナイトロクロス第3-4戦
AUTOSPORT web
コンパクトSUVの決定版か!?スズキ、新型「フロンクス」を発売・流麗なクーペスタイルと力強さ、そして洗練ぶりに注目!
コンパクトSUVの決定版か!?スズキ、新型「フロンクス」を発売・流麗なクーペスタイルと力強さ、そして洗練ぶりに注目!
LE VOLANT CARSMEET WEB
モトグラフィックスの CBR600RR用タンクパッドがネクサスから発売!
モトグラフィックスの CBR600RR用タンクパッドがネクサスから発売!
バイクブロス
ハースF1、トヨタと歩みだす母国アメリカGPで特別カラーに。星条旗の配色に、ハクトウワシが描かれたアメリカンなデザイン
ハースF1、トヨタと歩みだす母国アメリカGPで特別カラーに。星条旗の配色に、ハクトウワシが描かれたアメリカンなデザイン
motorsport.com 日本版
三菱「軽SUVワゴン」精悍&タフな“黒すぎ顔仕様”発売! めちゃカッコいい「デリカミニ」斬新カスタムパーツ新設定
三菱「軽SUVワゴン」精悍&タフな“黒すぎ顔仕様”発売! めちゃカッコいい「デリカミニ」斬新カスタムパーツ新設定
くるまのニュース
トヨタ、RSC電撃参戦表明の『GRスープラ』1/1クレイモデルを公開。Gen3規定準拠はメルボルンが担当
トヨタ、RSC電撃参戦表明の『GRスープラ』1/1クレイモデルを公開。Gen3規定準拠はメルボルンが担当
AUTOSPORT web
【ヒョンデ・アイオニック5長期レポート2】5Nと比較試乗。癒しカー対爆笑マシン!
【ヒョンデ・アイオニック5長期レポート2】5Nと比較試乗。癒しカー対爆笑マシン!
AUTOCAR JAPAN
ホンダ「Z」をさりげなくライトチューン仕様に!「N360」や「ライフステップバン」「S800」を所有する生粋のホンダ党が惚れ込む軽カーを紹介
ホンダ「Z」をさりげなくライトチューン仕様に!「N360」や「ライフステップバン」「S800」を所有する生粋のホンダ党が惚れ込む軽カーを紹介
Auto Messe Web
メルセデスベンツ『Sクラス』など燃料漏れのおそれ…12車種、15形式、3800台超がリコール
メルセデスベンツ『Sクラス』など燃料漏れのおそれ…12車種、15形式、3800台超がリコール
レスポンス
【ニューモデル情報】BMW 1シリーズが次のステージへ 新型BMW 1シリーズ登場 そのテストレポートを含む全情報!
【ニューモデル情報】BMW 1シリーズが次のステージへ 新型BMW 1シリーズ登場 そのテストレポートを含む全情報!
AutoBild Japan
Wolt の配達パートナー限定! EV スクーターシェアサービス「ラクすく」割引キャンペーンを11/30まで実施中
Wolt の配達パートナー限定! EV スクーターシェアサービス「ラクすく」割引キャンペーンを11/30まで実施中
バイクブロス
【10万台レベルの輸出へ】日産がインドで「マグナイト」をマイナーチェンジ 輸出市場は65以上に増加
【10万台レベルの輸出へ】日産がインドで「マグナイト」をマイナーチェンジ 輸出市場は65以上に増加
AUTOCAR JAPAN
ブレンボがサスペンションの大手メーカーであるオーリンズを買収
ブレンボがサスペンションの大手メーカーであるオーリンズを買収
バイクブロス

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村