メーカーや価格を問わず今年のベストを選出
英国ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権の審査は厳しい。サーキットの縁石へ容赦なく乗り上げるし、水たまりが残っていても構わず攻め込む。糖質の高い炭水化物も、休憩時間に避けることは難しい。
【画像】トップ3からベストを選ぶ フェラーリ296 GTB ポルシェ718ケイマン GT4 RS 911 GT3 全149枚
1メーカー1車種というルールを設けることもできるだろう。その考え方には一理あるが、本当に公平な選考基準だとは限らない。公平に見えるようにするための、恣意的な決め事といえる。
AUTOCARでは、そんなことはしない。国やメーカー、価格を問わず、今年を代表するドライバーズカーといえる上位10台と、昨年のディフェンディング・チャンピオンを同時に比較する。数名の審査員で。
比較する場所は、いつものグレートブリテン島の中西部に位置するノース・ウェールズ地方。チャレンジングな一般道とアングルシー・サーキットが舞台。これが毎年のやり方だ。
というわけで、2022年のノミネート車両には2台のポルシェが選ばれた。いずれも秀逸のGTモデルで、1台はディフェンディング・チャンピオンだから、間違いなく最高の仕上がりにある。11台による直接比較を経て、トップ3に勝ち残っている。
ポルシェ911 GT3と718ケイマン GT4 RSは、すべての審査員から疑問の余地がない点数を得ている。好みや考えの異なる5名が、同じ条件で乗り比べ、ドライビング体験の楽しさを採点していく。
最高出力や最高速度も、直接的には点数に関与しない。プロセスは至って公平だ。不要な主観は入ってこない。
レース用ガソリンを持ち込んだフェラーリ
ただし同じ条件という基準では、フェラーリは若干逸脱していたかもしれない。恐らく34回のBBDC選手権を通じて、電気の力まで借りた296 GTBは最高出力が1番高いが、もちろんそれが理由ではない。
フェラーリは今年、極めてグリップ力の高いミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2 Rタイヤを自ら持ち込み、アングルシー・サーキットでの走行に備えた。しかも、独自に手配したレース用のハイオクタン・ガソリンを給油してもいる。
ノミネート車両を貸し出してくれた各メーカーは、もちろんポルシェも、そこまではしていない。BBDC選手権に対する彼らの意気込みは伝わってくるが、これをどう捉えるだろうか。
もちろん、パイロットスポーツ・カップ2は、ショールームで選択できるタイヤではある。しかし、レース用ガソリンについて事前に知らされていれば、筆者は反対しただろう。通常のガソリンで評価したいと主張したはず。
フェラーリ側は、事前許可ではなく事後として許してもらおう、という姿勢だった。296 GTBは2022年のドライバーズカーとして秀抜で、今回の審査から除外することはできなかった。
充分速く走れるのに、それ以上を求める必要はないように思う。不正行為というわけではない。レース用ガソリンに対してはルールを設けていない。これは、AUTOCAR側の不備といえるかもしれない。
必要に応じて能力を最大限に発揮できるよう、事前の整備は認めているが、ラップタイムは審査の得点へ直接結びつくものではない。後味が悪くても、クルマに罪はないが。
センセーショナルな296 GTBの運転体験
とにかく、296 GTBのドライビング体験は、センセーショナルという表現がぴったりだった。ジェームス・ディスデイルは「脳みそがヤラれるほどの驚き」。だと口にし、リチャード・レーンは「芸術作品のようだ」。と称賛する。
ラップタイムは確かに速かった。多くのミドシップ・フェラーリのように。それでいて、2021年のSF90 ストラダーレともひと味違う。コーナーではバランスに優れ、操縦性はダイレクト。ステアリングホイールやペダルの重み付けも繊細だ。
一般道での乗り心地は、穏やかと呼べる範囲。右足の動きに理性があれば、日常的な移動手段にもなり得る。
サーキットでの走りに、より高い得点が集まったことも間違いない。ステアリングホイールにはおなじみの軽さとダイレクト感があり、シャシーは常に旋回できる態勢にあった。
システム総合で830psを生み出す、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)が叶える動力性能は凄まじいのヒトコト。一部のドライバーには、過剰にすら感じられるだろう。
この過剰ぶりが、フェラーリらしさでもあると考える人もいるとは思う。しかし、やりすぎは最高の結果を招かないこともある。スーパーカーとして最大の魅力になり得る、動的能力にも影響が出てしまう。
事実、「公道では殆ど展開できない」。という内容を複数の審査員が口にしていた。それ以外の強みへ、考えを巡らせる必要があった。
審査員を唸らせたPHEVシステム
296 GTBのPHEVシステムは、多くの審査員を唸らせた。V6ツインターボ・エンジンに電気モーターを組み合わせたマクラーレン・アルトゥーラと、V6ツインターボのみで走るマセラティMC20という2台との比較も有効だった。
フェラーリの3.0L V6ツインターボは、高回転域でのドラマチックなサウンドでドライバーを魅了する。それ以外の回転域でも、甘美な音響に浸れる。MC20のサウンドは若干荒々しく機械的。アルトゥーラはボリュームが控えめで、線が細く聞こえる。
そしてマラネロの工場は、世界有数といえる高性能エンジンの産地。痛快なピークパワーが放たれ、完成度の水準は極めて高い。同時に欧州で規定されるCO2排出量を達成するべく、電動化技術を取り入れ目標値を余裕でクリアしている。
V6エンジンの能力には、崇高さすら感じるほど。102オクタンの特別なガソリンを燃やさなくても、われわれは感服していただろう。
ところが、296 GTB以上にアングルシー・サーキットで巨大な驚きを与えたクルマが存在した。ポルシェ718ケイマン GT4 RSだ。一部の審査員にとっては初試乗となったことも、多少は影響していると思うが。
718ケイマンの小柄なミドシップ・シャシーに、ドイツ・ヴァイザッハのポルシェGT部門が組み上げた自然吸気4.0Lフラット6が収められている。ドライバーの直後から、壮大なサウンドが直に響いてくる。
9000rpmへ接近するほど、カーボンファイバー製インダクションを流れる空気も増大。陶酔せずにはいられなかった。
この続きは(6)にて。
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