7月13日(金)、ブラジル・サンパウロのアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェ(インテルラゴス・サーキット)で、WEC世界耐久選手権第5戦『サンパウロ6時間』のフリープラクティス3回目と予選およびハイパーポールが実施され、10年ぶりの開催となっているWECサンパウロは14日(日)の決勝レースを残すのみとなった。
一日を通して曇り空に覆われ肌寒い気候となった土曜日のインテルラゴスのパドックから、各種トピックスをお届けする。
ポール獲得のトヨタ小林可夢偉「ここは抜きにくい。ベストな予選」と自信。“ル・マンの悔しさ”を結実へ/WEC
■予選セッションより1周早く
7号車GR010ハイブリッドをドライブした小林可夢偉は、サンパウロ6時間のハイパーポールでトップタイムを記録し、トヨタにとって今シーズン初めて、通算では40回目となるポールポジションを獲得した。また、セバスチャン・ブエミが2番手タイムを記録したことで、日本のメーカーは24回目のフロントロウ独占を果たしている。
予選1回目では3番手タイムにとどまっていた可夢偉は、肌寒いインテルラゴスのコンディションの読み解き、ハイパーポールの戦略を変更したことが功を奏したと語った。「ハイパーポール前の最初のタイヤセットは充分な温度を得ることができませんでしたが、ハイパーポールでは(予選1回目より)1周早くベストラップを出すことができました。それが今回の成功、ポールポジション獲得につながりました」
ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのマット・キャンベルは、5号車ポルシェ963で予選1回目のベストタイムを記録したが、ハイパーポールでのアウトラップでコースオフに見舞われた。「アウトラップの最終コーナー(ターン12)でリヤをロックさせてしまった」と彼はSportscar365に語った。
「この手のクルマはリヤアクスルがロックするのが厄介で、セッション全体を通して少し苦労した。でも、2列目(3番手)からスタートできるのだから、力強いパフォーマンスだったと思うよ」
■ペースがなく「恥ずかしい」
一方、ハーツ・チーム・JOTAの12号車ポルシェ963のステアリングを握ったカラム・アイロットは、予選の2番手からハイパーポールでは7番手に後退した。「グリップもフィーリングも良くなかった」とアイロット。「予選1回目では競争力を感じたのに、ハイパーポールに入ってからは同じようには感じられなかったんだ」
ハイパーポールで苦戦を強いられたもうひとりのドライバーはアレッサンドロ・ピエール・グイディ(フェラーリAFコルセ)で、彼の51号車フェラーリ499Pは出走した10台のうち後ろから2番目の9番手となった。彼はSportscar365に対し、「ポールポジションを争うだけのペースがなかったのは確かだが、ハイパーポールでいくつか順位を落としたように感じている」と述べた。
「最初のラップは(アタックを)中止せざるを得なかったし、2周目も理想的なものではなかった。あるクルマ(12号車ポルシェ)がシケイン(ターン1~2)をカットして前に残ろうとしたが、これはフェアではなかったと思う」
プジョー・トタルエナジーズのジャン-エリック・ベルニュは、予選で17番手と苦戦したフランス勢の予選結果(姉妹車94号車も16番手に沈んだこと)を「恥ずかしい」と表現した。93号車のタイムアタックを担当した彼は「それ以外の言葉がない」と付け加えた。
「僕たちはどこにもいない。それは僕たち全員に負担をかけ始めていると思う。この状況から抜け出すためにクルマを改善する必要がある。言い訳も説明も何もない。僕たちにはペースがなかった。それだけだ」
■決勝日は10℃上昇
決勝日の気温は25℃に達することが予想されている。このため15℃前後だった予選日とはコンディションが大きく変わる可能性がある。
ポルシェ・ペンスキーのマネージング・ディレクターであるジョナサン・ディウグイドは、土曜日のポルシェ963のペース向上は天候によるところが大きく、低い気温がドイツメーカーのLMDhカーに適していたと説明した。
「基本的には3日間違う天気になるだろう。金曜は中間のような気候で、土曜はとても寒く、日曜日が一番暖かくなりそうだ。良かった点は2台のクルマでタイヤの仕事と負荷の確認作業を分散できたことだ。ふたつのコンパウンドの違いを理解することで、自分たちがどこを目指すのかが明確になったと考えている」
ディウグイドは、ハイパーカーの各チームが日曜日にミシュランのミディアム・コンパウンドとハード・コンパウンドのタイヤを組み合わせて使うことになる、と予想する。「明日は何台か、あるいは全車にハードタイヤが装着されるだろう。四輪すべて同じコンパウンドであろうと、一部が異なっていようと、タイヤに関してはまだ見るべきものが残っていると思う」
■SCの新ルールで混乱
また同氏は、前戦ル・マン24時間でアンドレ・ロッテラー(6号車ポルシェ963)のドライブタイムが3時間47分にとどまり4時間に満たなかったことについて、長時間のセーフティカーピリオドとコースポジションのせいで、運転時間が「かなり混乱していた」と述べた。
彼は次のように説明した。「新しいセーフティカールールにどう対応するかに皆が試行錯誤していた。なぜならピットに止まりドライバーを交代すればセーフティカー1台分の順位を落とすことになるからだ。レースのその時点でのトラックポジションは非常に重要だった。どう展開するか誰にもわからなかったためだ」
■ポルシェ963のアップデートを予告
ポルシェ・モータースポーツのボスであるトーマス・ローデンバッハは、963のツインターボV8エンジンについて、現行の90度クランクシャフトを使い続けると明言した。ポルシェLMDhのファクトリーディレクターであるウルス・クラトルは以前、ル・マンで信頼性の問題が発生しなければ、当初提案されていたフラットプレーン・クランクの計画を棚上げすると述べていた。
ローデンバッハは「今のエンジンに100パーセント満足している」とコメント。「すべてうまくいっている。我々のクルマの信頼性は非常に高く、スピードもある。手を出す必要があるだろうか」
しかしローデンバッハによれば、ポルシェは早ければ来年にも、LMDhカー初の“EVOジョーカー”を投入する可能性があるという。「このクルマに何か手を加えるのは間違いない」と同氏。「もちろん、来年に向けて改良を加えるつもりだ」
現在のところEVOジョーカーを使用したことが知られているハイパーカーメーカーは、トヨタ、フェラーリ、プジョーの3社のみ。フェラーリは今週末を前にブレーキ冷却関連のアップデートのために、ジョーカーのひとつを切ったと認めた唯一のブランドとなっている。
■可夢偉組7号車をサポート
ブエミは、シーズンが進むにつれてトヨタ8号車のクルーが姉妹車7号車のチャンピオン争いをサポートするよう要請される可能性があることを認めている。ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮の3人は、ル・マンで5位に終わった後、チャンピオンシップをリードするポルシェ・ペンスキーのクルーに55ポイント差をつけられている。
「ポイント差は大きくない。だが、もっとポイントを持っている人がたくさんいる」と語ったブエミ。「1台のマシンが悪いレースをすれば追いつくことができるが、(僕たちが逆転するためには)多くのマシンが悪いレースをする必要がある。このレースではないかもしれないけれど、できる限り姉妹車を助けようとするだろう」
アイアン・デイムスのサラ・ボビーはLMGT3のハイパーポールでシーズン2度目のトップタイムを記録し、女性チームにとって7度目のWECクラスポールポジションを獲得した。ELMSヨーロッパ・ル・マン・シリーズを含めると、このベルギー人ドライバーのポールポジション獲得は今季5度目となる。
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