ポルシェ初の電気自動車となるタイカン。その導入にあたり、ミレニアル層を中心とした「次世代カスタマー」に向け、ポルシェブランドとタイカンをアピールする新たな施策が行われている。その目的や思いをポルシェジャパン社長ミヒャエル・キルシュ氏に聞いた。
若い世代や社会で活躍する女性にも共感してもらいたい
今年7月、東京・有明に「Porsche Now Tokyo」というポップアップストアが出現した。2021年8月31日までの約1年の期間限定オープンという。目の前には有明コロシアムが、すぐ脇にはBMXコースが、そして歩いて数分のところには有明体操競技場がある。オリンピック会場に囲まれたこの地は、本来ならば目論見どおりたくさんの人で溢れかえっていたはずだ。
なぜいまポルシェがポップアップストアをつくるのか。ポルシェジャパンの社長に就任してちょうど1年が経過したミヒャエル・キルシュさんに尋ねた。
「年に2回、各国の社長が集まるミーティングがあります。ブランド初の電気自動車タイカンを導入するにあたって、これからは、もっと若い世代の人たちや、社会で活躍する女性にもポルシェというブランドに共感してもらいたい、と、そう考えたときに、これまでのようにディーラーへ足を運んでくださいというだけでは敷居の高さもあって難しいだろう、と。では、こちらからお客様のいる場所へと出ていって、新しいことに挑戦してみようと決めたのです」
そうしたきっかけで生まれた「ポルシェナウ」というコンセプトのもとにつくられたポップアップストアが、いまドバイ、アテネ、台北、シュトゥットガルト、そして東京と続々とオープンしている。今後国内では、名古屋や大阪などへの展開も予定しているという。
新型コロナ禍もあって2020年の上半期の国内新規登録台数は、自動車業界全体で約4割減、輸入車は約25%減と苦戦していた。しかし、ポルシェのセールスは好調だ。なんと1−6月は対前年比16.3%アップで、過去最高を達成している。新型911(タイプ992)やカイエンクーペなどの新型車効果もあると思われるが、ブランドの強さがわかるというものだ。
ポルシェのラインアップは大別すると、911というアイコンを筆頭にボクスター、ケイマンというスポーツカー系、マカンとカイエンというSUV系、そしてパナメーラというセダン系となるが、すべてにおいてポルシェならではの味付けがなされており、それがプロダクトとしての最大の魅力だ。そして電気自動車のタイカンにおいてもそれはまったくかわらない。しかし、スポーツカーにとって重要な“エンジン音”のないクルマが市場でどう評価されるのか。ポルシェにとっても大きなチャレンジであることはいうまでもない。
ミレニアル層に向け新たなブランド価値を発信
そうしてポルシェジャパンは2019年11月のタイカンのジャパンプレミア後、さまざまなマーケティング施策を試みてきた。11月22日~12月7日までの16日間、東京・渋谷SO-CAL LINK GALLERYでエキシビション「スコープス東京ドリブン by ポルシェ」を開催した。これは次世代カスタマーと定義するミレニアル層(1980年代~2000年代初頭生まれ)に向けて新たなブランド価値を発信するための体験型のイベントで、ドイツ・ベルリン、オランダ・アムステルダムに続いて東京で実施された。アート、音楽、ファッション、ニュービジネスを中心としたさまざまなコンテンツを展示したりイベントを実施したりしつつ、また動画配信などを行った。2019年に開催された東京モーターショーへの出展に代えて行った独自イベントとしても注目された。
またタイカンのプロモーションに、日本初のバーチャルモデル「imma」を起用した。ピンク色のショートボブの女性モデルは、身長や体重、国籍、経歴などは一切不明。Instagramのフォロワー数は22万を超えている。CGプロダクションの「ModelingCafe」が制作したものだが、まるで実写さながらで、CGだと言われなければ気づかないほどだ。今年3月には、immaとタイカンが東京・表参道をスタートし、日本中をめぐるストーリーが、immaとポルシェジャパンのインスタグラムなどで公開された。
yoshitoyanagidaクルマ好きの心をつかむポルシェらしい試みも
さらにユニークな試みが同時並行でおこなわれた。ポルシェからSNSを通じて、世に「スポーツカーは必要か」と質問を投げかけてみたのだという。キルシュ社長はこう振り返る。
「一般の方はもちろんトヨタや日産など日本の自動車メーカーの人たちも意見をよせてくださって100万を超える反響がありました。大きなクルマはいらない、200km/hを出せても意味がないとか、ネガティブな意見もたくさんありました。しかし、スポーツカーとは、モビリティを、そして個人主義を象徴するものです。たとえすべてのものを諦めなければいけないとしても、最後までスポーツカーだけは手放さないという声もありました。スポーツカーには多くのイノベーションが凝縮されています。それが一般的なクルマやそれ以外のものにも展開されていく。そういう大切な役割も担っています。ですから、わたしの答えはもちろん“必要”です。東京の市街地でポルシェの本領を発揮することはできませんが、2021年の夏には千葉の木更津にポルシェエクスペリエンスセンターを開設します。ハンドリングコースや低ミュー路、オフロードコースもあって、45台もの試乗車を用意する予定です。羽田空港からも30~40分くらいですので、日本全国からもきていただける。スポーツカーメーカーとしての従来のポジショニングからさらに一歩踏み込んで、既存の顧客にも新しい顧客にも共感していただけるように、日本市場には大規模な投資を行っていきます」
ミレニアル層向けのマーケティング施策というと、既存顧客は置いてきぼりをくらったように感じてしまうかもしれないが、こうして、クルマ好きの心をしっかりとつかむことを忘れていないのもポルシェらしいといえる。
現在、タイカンの予約者の45%が新規顧客で、95%がガソリンエンジン車のオーナーという。この「Porsche NOW Tokyo」では期間中は常にタイカンを展示し、試乗車も用意している。国内では最速クラスの150kWのポルシェターボチャージングシステムを備えており、24分で約80%、300km走行相当分の充電が可能という。またこの充電施設はディーラーでは2020年に21拠点に設けられ、2023年までには44拠点にまで増加する予定という。これとはべつに、同様の充電設備を、東京4箇所、大阪、名古屋それぞれ2箇所の公共施設に現在建設中という。
テスラが先行するプレミアム電気自動車市場で、ポルシェのこれらの施策がどのように評価されるのか大いに注目だ。
文・藤野太一 写真・ポルシェジャパン 編集・iconic
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みんなのコメント
テスラも年販50万台程度の会社で、いくら株価どうのの話をしても基幹自動車メーカーとしては話にならないレベル。
年販、数千万台の業界、自動車は。
実際、EVなんかまるで売れてないので他の各社も大赤字のお荷物部門。
環境も熟成せず、儲かるまでにはまだ10年以上かかる想定されてる。
買いたいなら買えばって程度の話。
なおかつコンセント繋げる駐車場あって、なおかつポルシェのEV乗りたくて、実際に購入に至るのはマックス10人くらいじゃないなかね