10月12日、静岡県小山町の富士スピードウェイで全日本スーパーフォーミュラ第6戦の予選と決勝が行われ、VANTELIN TEAM TOM’Sの坪井翔が2024年シーズン2勝目を飾った。
トップ争いがレースを通して白熱していたかたわら、その後方ではマシントラブルやアクシデントなど、失速が相次ぐ事態となっていた。ここでは決勝後、全ドライバーが参加して行われる取材セッション“ミックスゾーン”から、思わぬ悲劇に見舞われたドライバーたちが語った内容をお届けする。
「え? 抜いちゃった?」小林可夢偉の激走バトルにKCMG関口雄飛コーディネーターも唖然/SF第6戦富士
■福住仁嶺(Kids com Team KCMG) 予選PP/決勝5位
7月の第4戦に続きふたたび富士で“予選最速男”となった福住は、オープニングラップでの接触を悔いた。スタートについても「ちょっとホイールスピンさせてしまい、あまりいいスタートが切れなかった」と話した彼は、コカ・コーラコーナーで太田格之進と軽く接触し、フロントウイングを壊してしまったのが「痛かった」と続けた。
「ダメージ受けて『最悪。終わった』と正直思いました」と福住。しかし、その後のペースは「(壊れた状態で)あれだけ走れるんだ」と当の本人が感心する程度に良く、ライバルを追い上げオーバーテイクしてみせるなど、本来の力には及ばないものの上位を争うパフォーマンスを発揮した。
そんななか戦略面では考えるべきものがあったという福住は、自身の第1スティントを引っ張った作戦が結果的に間違いだったと考えている。
「(最終的にはペースが)速かったクルマと遅かったクルマで別れるとは思うのですが、個人的なイメージではミニマムで入ったクルマや早めに入ったクルマのほうがゲインがあったんじゃないかなと思っていて、それも含めて明日に向けてどうしようかと考えています。今日、結果を残しきれなかった部分は悔しいですけど、パフォーマンスとしては悪くないので、また明日頑張ります」
ポールスタートとなった福住がエアロにダメージを負いながら5位、チームメイトの小林可夢偉は3位表彰台を獲得したKCMG勢が引き続き好調を維持するのか、日曜の第7戦も朝の予選から注目したいところだ。
■太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING) 予選2番手/決勝9位
今大会も予選2番手の好位置を確保した太田だったが、そのアドバンテージはオープニングラップで、早くも彼の元を離れることとなってしまった。太田はスタート直後の攻防を次のように振り返った。
「スタートは悪くなかったです。1コーナーでは(3番手スタートの)野尻(智紀)さんがアウト側にいたので、野尻さんを抑えたらいいかなと思っていたところ、(4番手の)岩佐(歩夢)がすごい勢いでインに入ってきて僕は立ち上がりで行き場がなくなるようなかたちになり、その割を食うかたちで結構抜かれてしまったという感じです」
ただし、最終的に9位でレースを終えることになった要因はペースが足りていなかったことだと太田は言う。ピットアウト直後のタイヤがフレッシュな段階では「いけるかな」という手応えを感じていたが、不幸にもそれは長続きはせず「どんどんタイヤが苦しくなって」ペースを上げることができなくなった。
「正直、ペースがなさすぎて話にならなかったというか、仮に(ファーストスティントを)伸ばしてたとしても順位は大して変わっていなかったと思います」と太田。「ミニマムで入ってからのプッシュとか、やるべきことはやったかなとは思うんですけど……」。
「5号車(チームメイトの牧野任祐)も6号車(太田)も満足できるような内容ではない感じですね。大きめに見直さないとダメかなと思っています。ただ、なにせ明日もフリー走行がないのでいろいろ難しいかもしれないですね」
■大津弘樹(TGM Grand Prix) 予選10番手/決勝19位
朝の予選ではQ2進出を果たし、10番グリッドを手にした大津。そのままポイント圏内を目指したいところだったが、フォーメーションラップ中にトラブルが発生して緊急ピットイン。すぐに復帰するも、ライバルと大きく差が離れた状態で勝負権を失ったなか、周回を重ねることとなった。
「これまで、太田選手などにスロットルペダルのトラブルが出ていたと思います。(このマシンは)その対策のためにアクセルとブレーキを同時に踏んだら制御が入るようになっているのですが、そのモードがフォーメーションラップの時に発動してしまいました。エンジンを切らないと解除できなかったのでピットに戻りました」と大津。
「予選は、これまでのことを考えるとかなり良かったと思うし、55号車としてもQ1を突破できた分もあったので……」と、かなり意気消沈の様子だったが、明日もう1レースあるので、切り替えて頑張ります」と前を向いていた。
■木村偉織(San-Ei Gen with B-Max) 予選16番手/決勝リタイア
16番グリッドからスタートし、一時はポイント圏内に近づくポジションを争った木村。22周目にタイヤ交換を済ませて後半スティントに突入したが、25周目に入ったところでトラブルが発生し、13コーナー手前のコース脇にマシンを止めた。
「レースペースは結構良くて、うまくいけばシングルでフィニッシュもいけるかなという手応えがありました。そこでトラブルが出てしまったのは悔しかったですね」と木村。
トラブルの症状については「突然ギヤが変わらなくなってしまって、1コーナーで5速のまま動かなくなってしまいました」とのこと。「そのままピットに戻ろうとしたんですけど、セクター3が上れなくて止めました」と語った。
悔しい結果になってしまった木村だが「ただ、2レース開催の良いところは今日の悔しさを明日ぶつけられるので、明日の予選は絶対Q1を突破して、レースもシングルでフィニッシュして、ポイントを持ち帰りたいです」と、翌日のリベンジを誓っていた。
■阪口晴南(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING ) 予選5番手/決勝18位
8番グリッドから上位を目指した阪口だが、スタートでエンジンストールを起こしてしまい、最後尾まで後退。ピットレーンでエンジンを再始動して復帰するも、トップから1周遅れでレースを終えた。
「昨日のフリー走行でロングをやった時も、最近とはちょっと違う印象があったので楽しみにしていました。ですが、スタートがすべてだったと思います」と振り返った阪口。
気になるスタート時の状況については「自分のミスだったのかなと思っていたのですけど、終わっていろいろ振り返るとそうではなさそうな感じで、自分たちが思っている状態でスタートできていなかったことが判明したので、なぜそうなったかの原因を探してもらっている最中です」と語った。
ここ数戦、マシントラブルに見舞われている阪口。今回も同様のトラブルかと思われたが、「前回までのものとは違います」とのこと。原因の究明には時間がかかりそうな様子だった。
■大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING) 予選17番手/決勝リタイア
第4戦富士、第5戦もてぎと予選で3番手以内に入るも決勝では防戦一方、という苦しい展開が続いていた大湯。その挽回を期すべく臨んだ第6戦富士は、フリー走行、予選と目立ったペースを見せることができず、決勝では19周目にマシントラブルが起きるというつらい一戦となってしまった。
レース後に大湯は、「ちょっと足回りにトラブルがあった」と緊急ピットインの模様を語る。
「一度ガレージに戻ってその箇所を直して、もう1回コースに出たかたちでした。整備ミスとかではないのですが、あまり詳しくは言えないです」
「(異変は)急に出たわけではなく、徐々に怪しい雰囲気を感じて、ハンドリングやブレーキングで変な動きが出てしまいました」
このアクシデントに関しては「壊れた場所はもう分かっている」と、すでに気を取り直している様子だったが、彼の頭を本当に悩ませていたのは、致命的なペース不足だった。
「マシンは前回の富士がベースですが、うまく機能してないです。おそらくセットアップ云々じゃないところが原因かなと」
「上位争いができるようなポテンシャルはなく、原因もあまり分かってないです。ペースも悪いし予選も悪い。そのような状況で足踏みしてしまってるがゆえに、非常に苦しい戦いになっています」
日曜の第7戦も「あまりチャレンジングなことはできない」と沈んだトーンで語る大湯。不調の原因らしきものも見えていない様子の彼にとっては、連日同じ富士で行われるレースはさらなる苦境となるかもしれない。
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