2008年11月、2代目MINIのコンバーチブルが登場した。2001年にBMWの手で復活した新しいMINIでもコンバーチブルは人気だっただけに、その新世代モデルの登場が待たれていた。ここではあえて雪の降るオーストリアで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年4月号より)
ロールバーが格納式になってデザインがスッキリ
最初に話を聞いた時、てっきり舞台は「オーストラリア」かと思った。何しろクルマは新型MINIコンバーチブル。時期は2月なのだ。しかし僕を乗せた飛行機が向かった先は「オーストリア」。寒いだろうと覚悟はしていたが、それどころか現地は真っ白な雪に包まれていた。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
しかし、それは新型MINIコンバーチブルの開発陣にとって、狙い通りの事態だったようだ。掲げられたコミュニケーションワードは「ALWAYS OPEN」。そうまで言うなら、降ろしていくしかない。クルマを受け取ってソフトトップを開け放つと、さっそく現行モデルとの大きな違いが目に入った。
それは従来、リアシートの後方にそびえ立っていたロールバーが、随分目立たなくなったということ。よく見ると頭だけは出ているが、折り畳まれたソフトトップに隠れて、普段はほとんどその存在が気にならなくなった。これはロールバーが、従来の固定式から、横転などの危険を感知した際に自動的に展開する格納式へと改められたことによるもの。これによってリアビューが俄然スッキリしたのである。
こうした機構を採用しながらも、ラゲッジスペースは犠牲になるどころか5Lとはいえ拡大している。容量はオープン時で125L、クローズ時で175L。分割可倒式リアシートを倒せば、この時には現行モデルの55L増しとなる最大660Lの荷物を飲み込むこともできる。
用意されていたのはクーパーSのMT仕様。ウインタータイヤを履いていたため厳密には評価はできないが、それを差し引いたとしてもボディの剛性感は相当なものだったと言うことができる。荒れた路面でもギシギシ、ワナワナすることは皆無。しかも新型MINIのシャシは、従来のようにリアが鋭く突き上げることもないから、どんな場面でも快適さが保たれる。
当然、それはフットワークの面でも好印象にも繋がっている。まず心地良さを覚えたのはステアリングフィールの良さ。滑る路面でも繊細な操作にしっかり応える絶妙な手応えは、電動式であることを忘れるほどだ。
簡単なテストトラックで攻めて走らせた時も、申し分のない仕上がりにただ感心するのみだった。DTCを駆使してのスポーツ走行を夢中になって試していたら、これがコンバーチブルだということを、すっかり忘れてしまったほどである。
今回はゲストとして1967年のラリー・モンテカルロのウイナーであるラウノ・アルトーネン氏が招かれており、その妙技を助手席で体験する機会もあったのだが、スパイクタイヤを履かせて、左足ブレーキを駆使しての本格的なスポーツ走行にも、新型MINIコンバーチブルは余裕で応えていた。ちなみにこの時も当然、トップは開けたままである。
常時オープンで走る楽しさをあらためて堪能
唯一、不満を挙げるとすればエンジンだ。1.6L直噴ターボユニットの、どんな高いギアでも、どんな低回転域からでもグイグイとクルマを加速させていくフレキシビリティの高さには大いに感心させられ、凍結した路面に粉雪が載った滑りやすい道を行く時には随分と重宝したのだが、いただけないのはその時のベーッという味気ない音。オープンで走っていると、それがなおさら耳に響くのだ。もう少し気持ち良い音を奏でてくれれば、低回転域を駆使してのエコドライブも、もっと楽しめるはずである。
もっとも、ほとんどがATで乗られるだろう日本では、問題にもならないのかもしれないが。
それを除けば、雪の中だろうとオープンで走ることを遮る要素は何もない。ヒーターは強力で、シートヒーターを併用すれば、むしろ室内は暑いと感じることすらあるほど。ディフレクターを立てれば100km/h超でも風の巻き込みはほとんどないし、停車すればともかく、走っている限りは、雪が室内に入り込んでくることもない。ただし、現行モデルと同じく太腿の辺りだけは結構冷えるから、男なら革パンツで乗りたいところだし、女性のためにブランケットを載せておくのはマスト。気にするべきはそれだけだ。むしろクローズ時は、ソフトトップが微妙に擦れる音が気に障ってしまった。
そんなわけで、悔しいけれど策略にまんまとハマッて、「ALWAYS OPEN」のコピーの通り、行程のほとんどをオープンのままで過ごしてしまった。しかし、それでも風邪などひいたりせず、無事に帰国したということは報告しておこう。これなら日本でも、当然1年中オープンエアドライビングを楽しめるはず。ただし、花粉症の方以外は・・・とは言っておくべきかもしれないが、いずれにせよこの新型MINIコンバーチブル、クーパーとクーパーSの二本立てで、早くも桜の季節には上陸することになりそうだ。(文:島下泰久)
MINI クーパーS コンバーチブル 主要諸元
●全長×全幅×全高:3714×1683×1414mm
●ホイールベース:2467mm
●車両重量:1155kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:128kW(175ps)/5500rpm
●最大トルク:240Nm/1600-5000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・50L
●EU総合燃費:15.6km/L
●タイヤサイズ:195/55R16
※欧州仕様
MINI クーパー コンバーチブル 主要諸元
●全長×全幅×全高:3699×1683×1414mm
●ホイールベース:2467mm
●車両重量:1090kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1598cc
●最高出力:88kW(120ps)/6000rpm
●最大トルク:160Nm/4250rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・40L
●EU総合燃費:17.5km/L
●タイヤサイズ:175/65R15
※欧州仕様
[ アルバム : MINI クーパーS コンバーチブル 2代目 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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