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【日産 アリア B9 e-4ORCE】電気自動車の実力を実車でテスト!

掲載 更新 21
【日産 アリア B9 e-4ORCE】電気自動車の実力を実車でテスト!

新車試乗レポート [2023.06.08 UP]


【日産 アリア B9 e-4ORCE】電気自動車の実力を実車でテスト!
文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス

【フィアット 500e】電気自動車の実力を実車でテスト!

 欧州や中国ではクルマを取り巻く環境や政策などが追い風となり、近年、EV(電気自動車)のセールスが急進。対する日本も、普及はまだまだこれからという状況ながら、補助金の充実や新しいEVの登場&上陸など、EV関連のニュースが次々とメディアをにぎわせている。そうした状況もあり、「そろそろかな」とEVが気になり始めている人も多いのでは?

 とはいえエンジン車とは異なり、EVの所有はハードルが高いのも事実。航続距離や充電効率、使い勝手などは車種によって大きく異なるため、どんなモデルが自分にとってベターな選択なのか見分けるのが難しい。

 本連載は、EVや自動運転車といったクルマの先進技術に造詣が深い自動車ジャーナリスト・石井昌道氏の監修・解説の下、各社の注目モデルを毎回、同様のルートでテスト。実際の使用状況を想定した走行パターンでチェックすることで各モデルの得手不得手を検証し、皆さんの“EV選びの悩み”を解決することを目的とする。

 今回フォーカスするモデルは日産「アリア」の高性能仕様「アリアB9」。先進的なエクステリアをまとったこのモデルは、どんな実力を披露してくれるのであろうか?

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日産 アリア B9 e-4ORCEのプロフィール

日産 アリア B9 e-4ORCE リミテッド
 日産自動車は、2010年に世界で初となる量産EV「リーフ」を世に送り出したメーカーだ。そんなパイオニアが本格的なEV時代の到来に合わせて市場投入したモデルが、クロスオーバーEVのアリアである。

 日産の新しいEVであるアリアは、随所にチャレンジングなクルマづくりが散見される意欲作である。ゼロから開発されたEV専用プラットフォームには、リーフの開発で得た技術やノウハウ、そしてEVに対するユーザーニーズなどを反映。このプラットフォームを採用した電動車を、日産は将来的に年間100万台以上販売する計画を立てている。

 新タイプとなるモーターをフロントに配したFWDと、前後アクスルにそれぞれレイアウトした4WDというふたつの駆動方式を設定。バッテリー容量91kWhの「B9」と、66kWhの「B6」という2モデルを設定する。

 なかでも“e-4ORCE”と呼ばれる4WD仕様は、前後モーターと4輪のブレーキをそれぞれ制御することで意のままのコーナリングを実現。0-100km/h加速は最速5.1秒と、「フェアレディZ」に匹敵するタイムをたたき出す。ちなみに、1充電当たりの走行可能距離は、B9が最長640km、B6は最長470kmとなっている。

 そんなアリアは、充実した先進運転支援システムを採用。高速道路などでのハンズオフドライブを可能とする“プロパイロット2.0”を設定するなど、日産の最新技術がふんだんに盛り込まれている。

 そんなアリアのエクステリアは、なめらかな弧を描くルーフラインが特徴だ。建築物を思わせる美しさが感じられ、どの角度からでも強い存在感を感じさせる。対するインテリアは、フラットなフロアに起因する広々と開放的な空間が魅力的。物理スイッチの代わりにアイコン類がパネルに浮かび上がる操作系を配するなど、見るからに先進的なコックピットに仕上がっている。

 なお世界情勢の影響により、現在発売中のアリアはB6のFWDのみとなっている。

■グレード構成&価格・「B6」(539万円)・「B9 e-4ORCEリミテッド(4WD)」(790万200円 ※参考価格)■電費データ<B9 e-4ORCEリミテッド(4WD)>◎交流電力量消費率・WLTCモード:187Wh/km >>>市街地モード:183Wh/km >>>郊外モード:185Wh/km >>>高速道路モード:196Wh/km◎一充電走行距離・WLTCモード:560km
日産 アリア B9 e-4ORCE リミテッド

【高速道路】WLTCモードに対する達成率は高く効率の良さをうかがわせる
 

 約1年前にはアリアB6(FWD)をテストしており、今回のアリアB9(4WD)はそのときのデータと比べながら考察したい。気温はアリアB6のスタート時が19℃、もっとも暑い一般道走行時が26~27℃、アリアB9はスタート時20℃、一般道走行時31℃。高速道路走行時はほぼ同じ気温だ。今回の電費は制限速度100km/h区間のその1が5.1km/kWh、その4が5.1km/kWh、制限速度70km/h区間のその2が6.8km/kWh、その3が5.9km/kWhだった。

 アリアB6(FWD)はその1が6.6km/kWh、その4が6km/kWh。その2が8.2km/kWh、その3が6.5km/kWh。

 車両重量が重く、パワフルなアリアB9(4WD)は全体的にアリアB6(FWD)に差をつけられているが、1年前のテストのときは交通量が多くて速度が下がり気味(=電費に有利)だったので、納得いくデータではある。

 ちなみにWLTCモード電費は制限速度100km/h区間に近い高速モードはアリアB6(FWD)が5.6km/kWh、アリアB9(4WD)が5.1km/kWh、制限速度70km/h区間に近い郊外モードはアリアB6(FWD) が5.9km/kWh、アリアB9(4WD)が5.4km/kWh。WLTCモード電費に対する達成率はかなり高いほうだ。


往路の高速テストコース

往路の高速テストコース。東名高速道路 東京ICからスタート。海老名SAまでを「高速その1」、海老名SAから厚木ICから小田原厚木道路を通り小田原西ICまでを「高速その2」とした。復路の高速テストコースは小田原厚木道路の小田原西ICから東名厚木ICを経由し横浜青葉ICまで走行。途中海老名SAで充電を行った

【ワインディング】2WD車と比べても妥当な電費データを記録
 約13kmの距離でスタート地点とゴール地点の高低差が950m以上もある箱根ターンパイクでは、制限速度50km/h前後をなるべくキープしながら、往路は極端な登り区間での電費の悪さ、復路は逆に下り続けると回生ブレーキでどれぐらい電力を取り戻せるのかを見ている。アリアB9(4WD)の登り電費は1.6km/kWh。車両重量1960kgのアリアB6(FWD)が1.8km/kWhだったことを考えれば、2230kgのアリアB9(4WD)の電費は妥当なところ。車両重量が近い他のEVと比べても同等レベルだ。

 下りでは電費計からの推測で、約3.6kWhの電力を回生で取り戻した計算になる。アリアB6(FWD)は3.89kWhだったので回生量は大差ないということになる。FWDよりも4WDのほうが回生では有利なのかと思いきやそうでもないのだが、なるべく一定速をキープしながらユルユルと下ってくるEVテストの走り方では差が出にくいのかもしれない。


自動車専用道路である箱根ターンパイク(アネスト岩田ターンパイク)を小田原本線料金所から大観山展望台まで往復した

【一般道】高速性能と比べ若干もの足りないが、交通状況の影響もありそう
 一般道での電費は3.8km/kWhで、アリアB6(FWD)の4.7km/kWhに比べるとやや物足りない数値だった。しかし、今回は5月にしては陽射しがきつく気温が31℃まであがり、エアコンの負荷がかなり高かったことは考慮しなければならないだろう。EVは冬のヒーターの電力消費が多くて電費が下がり幅が大きく、それに対して夏のエアコンはそれほどでもないと言われるが、それは相対的な話でエアコンもそれなりに電力を消費するのだ。

 それにしても3.8km/kWhはあまりいい数値と言えないのだが、同日テストのフィアット500eも一般道での電費があまり良くなかったので、交通状況も不利だったものと思われる。

 一般道は信号のタイミングや周囲の交通の流れによる影響が大きく、電費は変動しがちなので致し方ないところだろう。ちなみにアリアは、一般的な永久磁石の同期モーターではなく、巻線界磁式の同期モーターを採用している。これのメリットは高速域での効率が良く、静粛性が高いことだが、逆に低速域ではやや不利だという特性がある。


東名横浜青葉ICから環八の丸子橋まで約29kmの距離を走行した

【充電】充電効率も高く、大容量バッテリーのおかげで十分以上の航続距離がある

海老名SAでの急速充電テスト ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません
 

 スタート時のバッテリー残量90%、走行可能距離475km。そこから158km走行した復路・海老名サービスエリアに到着したときにはバッテリー残量52%、走行可能距離278kmになっていたが、出力90kWの急速充電器を30分使用して36.1kWhが充電され、バッテリー残量94%、走行可能距離504kmに回復した。

 充電開始直後は出力75kW、バッテリー残量90%を超えた充電終了間際こそ出力68kWに落ちたが、平均出力72.2kWは優秀な部類と言える。80%を超えると極端に絞るモデルもあるが、そうではなかった。

 バッテリー容量91kWhと日本車としては最大を誇るだけに一充電走行距離も、急速充電の受け入れ能力も満足度は高い。EVテストは約200kmのドライブになるが、それぐらいなら無充電でもなんの心配もいらない。また、90kWの急速充電器ならば高速道路200km走行分近くが充電できるのも便利だ。


足元の空間はフラットで広々。頭上にも大人が十分座れる空間が確保されている

アリア B9 e-4ORCEはどんなEVだった?

テストを監修した自動車ジャーナリストの石井昌道氏
 

 インテリアの上質さ、先進感を含め、デザイン的に魅力があるアリア。バッテリー容量が大きなB9ならば、一充電走行距離もFWD640km、4WD560kmと現行EVで上位の部類で利便性が高い。

 e-4ORCEと呼ばれる4WDは走りもかなり良く、加速はこれ以上はいらないほどに速く、普通に走っているときでもピッチングを減らす効果があるので快適性を向上させる。リア・サスペンションの動きがやや渋く、路面の凹凸が連続すると硬く感じることもあるのだが、そこさえ気にならなければ、日本車のEVでもっとも狙いたいモデルだ。

B9 e-4ORCEリミテッド(4WD)■全長×全幅×全高:4595×1850×1665mm■ホイールベース:2775mm■車両重量:2230kg■バッテリー総電力量:91kWh■フロントモーター最高出力:160kW(218ps)/5950-11960rpm■フロントモーター最大トルク:300Nm/0-4392rpm■リアモーター最高出力:160kW(218ps)/5950-11960rpm■リアモーター最大トルク:300Nm/0-4392rpm■サスペンション前/後:ストラット/マルチリンク■ブレーキ前/後:Vディスク/Vディスク■タイヤ前後:255/45R20取材車オプションボディカラー(シェルブロンドM/ミッドナイトブラック2トーン)、ウィンドウ撥水12ヶ月(フロント+フロントドアガラス撥水処理)、日産オリジナルドライブレコーダー(フロント+リア)

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