個性派コンパクトEVの手強いライバル
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
同じグループPSAに属するプジョーやオペルは、コンパクト・ハッチバックで純EVモデルの提供を始めている。一方でDSオートモビルは、コンパクト・クロスオーバーから純EVの投入となった。ブランドの期待を背負ったモデルだ。
スタイリング重視という雰囲気が強い、DS 3クロスバック。純EV版のE-テンスも、キア・ソウルEVやヒュンダイ・コナ・エレクトリックといった、見た目重視のライバルと並べられることになる。
どのブランドも、ニッチ市場での成功を狙っているが、なかなか手強い。韓国ブランドの2台は、DS 3クロスバックの上級トリムグレードと同等の価格で、バッテリー容量が大きく航続距離の長いクルマが選べる。
ソウルEVやコナ・エレクトリックにはさらに、バッテリー容量の小さい、安価なグレードが存在する。加速に優れ、よりパワフルだ。車内の実用性でも上を行く。
同じグループ内には、プジョーe-2008というライバルも存在する。バッテリー容量やパワートレインは同じものを積んでいながら、価格は明らかに安い。実用性でも優れている印象だった。
周囲の条件を見るほど、DS 3クロスバックの立場は厳しく感じられる。だがDSオートモビルは、実用性の優劣は最も重要だとは考えていないらしい。ターゲットとするのは、ラグジュアリーな雰囲気とスタイリッシュなデザインを、一番に重要視する層なのだ。
強みはラグジュアリーなインテリア
E-テンスが搭載するのは135psの電気モーターで、航続距離は約320km。0-100km/h加速の時間は、9秒をわずかに切っている。それほど先進的な数字とはいえない。
リアシートの空間は広くはない。大きい子供や大人数名との長距離ドライブには、向いていない。コンパクト・クロスオーバーのユーザーの多くは、リアシートをあまり使用しないと聞いたことはある。だが、おなじ金額を払えば、同じクラスで大人4名が乗れるモデルは手に入る。
荷室容量は350Lあり、平均点は確保。荷室の床面は高さの調整もできる。
DSが強みとするのは、ラグジュアリーさ。インテリアは特に豪華な雰囲気にあふれている。試乗車のウルトラ・プレステージ・グレードの場合、アートブラック・バソルトと呼ばれる表皮が美しい。好みは分かれそうだが、手入れの必要なレザーと質感は似ている。
車内に実装されたテクノロジーも充分。レイアウトや使い勝手には、少々難があるようだ。センターコンソールには華やかなスイッチが並び、パワーウインドウやサイドブレーキ、チャイルドロック、ドライブモードなどの操作系が集約されている。
悩ましいのが、すべてのスイッチが似ており、表記もわかりにくいこと。求める操作スイッチを、毎回確認しなけれならない。
インフォテインメント・システムはスタイリッシュさが最優先。モニター式のデジタルメーターも、可読性や鮮明さより、グラフィカルな部分に注力されている。
運転しやすいものの気になる乗り心地
反面、DS 3クロスバックはとても運転しやすい。動的性能も不満はない。同価格帯のEVをリードするほどの性能ではないものの、高速道路や郊外の道での追い越しを躊躇しない力強さがある。
航続距離は、カタログ値ではさほど目立った数字ではないが、充分評価できる。高速道路を走行しても、満充電で240km以上は走れる様子。速度域の低い街なかや郊外の道でなら、290kmから300kmくらい先は目指せるだろう。
ドライブ・モードはいくつかが用意され、スポーツ・モードが最もアクセルペダルの反応が良くなる。エネルギー回生機能の効きの強さは、DとBの2段階のみだ。
ほかのEVの方が、エネルギーの回収を知的に、より効率的に行えている。DS 3もライバルと同等の回生が行えれば、50kWhのバッテリー容量からより長い航続距離を得られるはず。
DS 3クロスバックのシャシー設定は、しなやかな快適性を残しつつ、ボディの動きを最小限に抑えた正確な操縦性を持たせようというもの。英国の道とは、少し相性が良くないようだった。
アンチロールバーは硬めで、コーナリング時のロールを防いでくれ、ハンドリングの精度も悪くない。そのかわり、ストローク量が長く穏やかな減衰力のサスペンションは、横方向のしなやかさに欠ける。わずかな路面の凹凸でも、姿勢制御が乱れてしまう。
コーナリング中の路面の隆起部分などでは、強めの振動も届いてしまう。路面が荒れてくると、ロードノイズも小さくない。
豊かな個性や多様性が認められる純EV
DS 3クロスバック E-テンスは、実用性で最も優れるコンパクトEVだとはいえない。多くの人を惹きつけるタイプのクルマでもないだろう。
試乗車より5000ポンド(66万円)安い価格から選べるが、コストバリューでの訴求力も強いものではないだろう。英国政府からの補助金が適用されたとしても。
これからの成長が見込まれているEV市場の中で、すでにもっと革新的なクルマはある。筆者の感覚では、内容的にも見た目でも、より惹かれるクルマが存在している。
かといって、魅力がないわけではない。小さな高級車として内容には優れるし、走りも悪くない。プレミアム・ブランドのモデルと比べても、コンパクトカーとして、実用性や扱いやすさの要件は満たしている。
三角形が基調のDS 3クロスバックのデザインが好きで、航続距離などEVとしての条件に納得できるのなら、選んでも後悔はしないはず。まだまだ成長期にある、純EV。モデルごとの豊かな個性や多様性が、認められる市場でもあるはずだ。
DS 3クロスバック Eテンス ウルトラ・プレステージ(英国仕様)のスペック
価格:3万5990ポンド(475万円/英国補助金適用後)
全長:4118mm
全幅:1791mm
全高:1534mm
最高速度:149km/h
0-100km/h加速:8.7秒
航続距離:307-331km(WLTP)
CO2排出量:0g/km
乾燥重量:1523kg
パワートレイン:永久磁石同期電気モーター
バッテリー:50kWh
最高出力:135ps
最大トルク:26.4kg-m
ギアボックス:シングルスピード・オートマティック
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