■ナンバー登録を済ませた実質的な新車ともいえる「未使用車」
中古車販売店だけでなく新車を扱うディーラーでも、たまに「登録済(届出済)未使用車」というクルマが販売されていることを見かけます。
未使用車とは「ナンバー登録を済ませただけで手放されたクルマ」です。走行距離はわずか数十km程度、一度もユーザー所有になっていない、ほぼ新車状態の中古車のことをいいます。
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以前は「新古車」とも呼ばれていましたが、「ユーザーが購入・登録したものの、わずか数か月で手放したクルマ」などが新古車として販売されることもありました。
購入者の混乱を防ぐ目的で、自動車公正取引協議会加盟店が定める「自動車公正競争規約」によって、現在では「登録済(届出済)未使用車」という表記で統一されるようになっています。ただし協議会未加入店では新古車の表記を使用しているところもあるようです。
中古車販売店に未使用車が並ぶのはともかく、新車ディーラーなどでも見かけるのは、この未使用車を生み出している張本人だからという理由があります。
なぜなら、決算期や販売強化月など、新車ディーラーにとってできるだけクルマを売らなければいけない時期があるからです。
インセンティブ(売上報奨金)を得るためには一定の台数を販売・登録しなければならず、販売実績を稼ぐためには目標台数までの残りを自社で購入したり、関連企業に購入してもらったりすることでノルマを達成するのですが、なかには売れ残って在庫車になる車両もあり、こういったものが未使用車として販売されるのです。
ナンバー登録を済ませて自社内で販売実績としてカウントし、改めて「程度極上の中古車」として販売しているというわけですが、登録だけされた状態で公道を走行していない車両ということもあり、中古車としては狙い目の優良物件ともいえます。
では未使用車は中古車市場でどれくらいの数が出回っているのでしょうか。横浜市の中古車販売店のY店長いわく、その数は非常に少ないそうです。
「一般的な中古車業者の仕入先となる業者オークションでは、なかなか未使用車は出品されません。というのも、登録を済ませたディーラーの各店舗がそのまま『お買い得車』として店頭で販売してしまうことが多いからです。
インセンティブの関係で多くの台数を売る必要がある車両や、モデル末期の最終型などでごく稀に出てくることはありますが、その場合は新車で購入するのとほぼ変わらなかったり、なかには新車よりも高い(プレミアムな)価格になることも多く、ユーザーにとっても我々のような中古車販売店にとってもあまりメリットがないものもあります」
新車は出荷時に用意される「完成検査修了証」(メーカーの厳正な検査をパスした証明書)があれば書類だけで新規登録が可能ですが、この完成検査修了証は9か月で期限が切れてしまいます。
期限切れになると改めて運輸支局などに持ち込んで検査をおこなってから登録する必要があるのですが、「それならば手続きが煩雑になる前に売ってしまおう」という事情もあり、お買い得車として販売されることがあるのだそうです。
ただし現在の状況では、昨今の半導体不足の影響による新車納期の遅れや、以前のようにディーラーで在庫を抱えない販売スタイルへの移行もあって、未使用車の数自体が少なくなっています。
「一般的な中古車ですと、1年前の登録、または数千km程度の高年式車両は割と流通しているのですが、未使用車はディーラー系列の中古車店などにごく稀に展示している程度。
そもそも未使用車は生産工場からモータープールまで、またはディーラーの敷地内程度しか走行していない、ほぼ納車直後の新車に近いコンディションですので、希望の車種で納期優先というのであれは十分狙う価値はあると思います」(中古車販売店 Y店長)
■「未使用車」のメリット・デメリットとは?
さまざまな事情がある未使用車ですが、必ずしもメリットばかりと言い切れないのが難しいところです。Y店長にそのメリット・デメリットを教えてもらいました。
まずメリットとして、以下のようなことがあります。
・ほぼ新車なのに、トータルで10%から20%安い
「やはり完成検査修了証が切れる前に在庫車として登録するだけあり、できる限り早く売りたいのがディーラーの本音です。そのため新車より10%から20%程度は安く購入できることが多いようです」
・すでにある現車の売買なので納期が早い
「新車の納期は通常で1~3か月程度、人気車種なら1年近く待つこともあり、契約・購入から納車までタイムラグが発生します。
その点未使用車はいま手元にある在庫車ですので、数日から数週間で納車が可能です。車検も付いているため、購入後すぐに乗れるのは大きなメリットでしょう」
・購入時期によっては税金の支払い手続きが不要
「すでに登録済の未使用車ですから、購入時期によってはディーラー側で重量税や自動車税(車種別割)なども納付済みがほとんどです。
ということは、時期によっては納入額を月割り計算した額のみで済むということ。未使用車の価格には登録費用などがコミコミのことが多いので、それもまたお得感があります」
一方で、現車優先ゆえのデメリットも多少あるようです。
・現車優先なのでグレードやカラー、装備関係は選択不可
「ナンバー登録されている未使用車はすでに完成型のため、自分の欲しいグレードや装備がついているとは言い切れません。
特にメーカーオプション品は後付けできないことから、じっくり検討する必要があります」
・ときには新車価格を超えるプレミア価格になることも
「トヨタ『ランドクルーザー』のように長期間の納車待ちや、モデル最終型の特別仕様車などが未使用車としてごく稀に出てくることもあります。ただそういった場合は、新車価格より高い価格設定になっていることが多いです。
手に入りにくい人気車が目の前にあると欲しくなりがちですが、どうしても早く欲しい場合を除いて、慌てて購入するよりじっくり待つほうが良いと思います」
・未使用車でも数年落ちの古い車両もある
「確かに走行距離はわずか数十kmかもしれませんが、年式を見ると数年落ちという車両(特に輸入車)もあります。走っていないので内装の傷みもほとんどなく、一見狙い目に思えますが、逆に考えると数年間も不動でメンテナンスされていないということ。
購入してすぐに油脂類の交換なども必要ですし、結果としてメンテナンス費用が予想以上に高額になる可能性もあります」
※ ※ ※
国産車だけでなく、輸入車でも年次改良による在庫車の入れ替えなどで未使用車が出てくることもあります。もともと高価なモデルが多い輸入車の未使用車は、さらにお買い得感があります。
未使用車は新車のようにじっくり検討する時間がないというのもある種のデメリットになるかもしれませんが、メリットも多いので狙う価値は十分ありそうです。
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