現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 122年前のクルマでラリー! 1902年式アルビオンA1へ試乗 複雑で面倒だから「面白い」

ここから本文です

122年前のクルマでラリー! 1902年式アルビオンA1へ試乗 複雑で面倒だから「面白い」

掲載 1
122年前のクルマでラリー! 1902年式アルビオンA1へ試乗 複雑で面倒だから「面白い」

伝統のクラシックカー・ラリー「ベテランカー・ラン」

クーペやサルーンが登場する以前、ボディスタイルの1つに、ドッグカートというものがあった。それはまだ馬車の時代だったが、愛犬を真ん中に乗せることから、そう呼ばれたらしい。

【画像】複雑で面倒だから「面白い」 1902年式アルビオンA1 100年以上前のクルマたち 全123枚

産業革命が訪れると、馬が引く必要のない自動車が登場。一部のメーカーは、馬車のデザインを大きく変えずに、ボディの片方へエンジンを搭載して販売した。この1902年式アルビオンA1のように。

英国では毎年、グレートブリテン島南部のロンドンから南岸のブライトンまで走る、ベテランカー・ランというクラシックカー・ラリーが開催されている。ひょんなことから、筆者とスティーブ・クロプリーは、そのA1で参加することになった。

参加車両は369台と、驚くほど多い。それでも、A1はかなりの古株といえる。クルマの管理者によれば、走れる状態にあるドッグカートは7台のみらしい。

今回助手席に座るクロプリーは、45km/hくらいで走れると期待していた。ところが、実際は全力疾走させても28km/hが良いところらしい。登り坂に差し掛かると、歩いた方が速い速度へ落ちるという。

小言をいっても仕方ない。ラリーは、走ることが目的。長い時間をイベントで過ごせると考えれば、むしろ楽しいといえなくもない。

基本的な運転環境が完成していない

実は英国では1896年まで、自動車の最高速度は時速4マイル(約6.4km/h)に制限されていた。赤い旗を持った先導人を付けることが、1865年からの条件になっていた。通称、赤旗法だ。

その後、法律の改正を経て最高速度は時速14マイル(約22.5km/h)へ上昇。当時のドライバーたちは、制限の見直しを祝うドライブを集団で楽しんだ。11月の第1日曜日に、ロンドンからブライトンまで。それが、このイベントの起源になっている。

1927年に、参加できるモデルを1905年式以前に限定するルールが導入。ほぼ毎年のように開かれており、英国では秋の風物詩の1つへ成長した。ロンドンやブライトン周辺では、大規模な交通規制が実施され、観客は数万人を数えるそうだ。

1世紀以上前のクルマの特徴といえるのが、ペダルが3枚、レバーが1・2本という、基本的な運転環境が完成していないこと。過去には、リアアクスルを後方へずらし、ドライブベルトに張力を与えて走り出す、という仕組みのクルマに遭遇したことがある。

それと比べれば、A1は馴染みやすい。エンジンは水冷式の水平対向2気筒。縦置きされ、チェーンでリアアクスルが駆動される。オイルの潤滑システムが特殊で、24km毎に冷却水を補充する必要があること以外、突飛な操作は必要ない。

ステアリングは車両中央 スロットルは手で操作

それでも、慣れるまでにはかなりの時間が必要。ステアリングホイールは直立し、運転席から見て左側へ大きくオフセットしている。スロットルは手で操作。2本ある長いレバーの内、左側はシフト用だ。

2速、ニュートラル、1速、リバースと切り替わる。もちろん、ギアの回転数を調整してくれるシンクロメッシュは備わらない。ギアはストレートカットでうるさい。変速時は、スロットルを閉じることになる。

右側のレバーは、リアホイールにブレーキシューを押し付ける、ブレーキ。足もとのペダルは、軽く踏むとクラッチが切れる。さらに踏み込むと、トランスミッション側にブレーキが掛かる。この切り替わるポイントは、理解が難しい。

下り坂でエンジンブレーキをかけようと思い、1速へのシフトダウンを試みる。ところが、気付くとニュートラルのままなことも。ステアリングは、28km/hに迫るとかなり神経質になる。ブレーキが強く効きすぎる恐れもあった。

クロプリーは、赤旗法が英国の自動車産業へ与えた影響は大きかったと話す。自由に走れたフランス車やドイツ車、アメリカ車は、性能を高めていった。今日のベテランカー・ランでも、英国車以外がA1を次々に追い越していく。

一方のA1は、馬車の雰囲気のまま。2速でスロットルを全開にして、29km/h。1速では、人間が歩くのより少し速いくらい。乗馬の駆け足と、常歩の速度に近い。

運転は複雑で面倒くさい でも手間が面白い

ロンドンのハイドパークを出発し、バッキンガム宮殿の前を通過。トラファルガー広場の公道に出る。ベテランカー・ランならではの楽しいルートだ。

南下するにつれて、ルートの起伏が多くなる。1速で坂を登っていると、エンジンが不安定になる。助手席のクロプリーは、勾配で苦しくなると飛び降りて歩いてくれる。

中には坂道で音を上げて、蒸気を吐き出す車両も。参加者から後ろを押してもらうクルマも多い。しかし、A1は小さなロバに引かれた程度の速度で、とぼとぼと登る。頼もしいクラシックカーだ。

A1を所蔵する英国自動車博物館は、合計6台をエントリーさせた。そのうち5台が完走を果たしたが、A1ほど車両管理者に自信を与えるクルマはないかもしれない。

タイヤはソリッドゴムで、ホイールは木製。それを考えると、乗り心地は驚くほど良い。ギアのノイズと重なるように、エンジンが小さく唸る。エグゾーストノートは可愛らしい。マフラーに穴の空いたゴム手袋をはめた時の音のように、ブーブーと鳴る。

2024年の水準では、悲惨な体験ではある。運転は複雑で非常に面倒くさい。それでも、不思議と楽しい。大自然でのキャンプや、手で書いて贈るハガキのように、その手間が面白いのだろう。

スタートしてから7時間後、午後2時40分に、ブライトンのゴールラインを通過することができた。その10分後、2人は再びA1へ飛び乗り、96km先のロンドンを目指したのだった。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

コンパクトでプレミアム! ヒョンデ・インスターへ試乗 コダワリ感じるインテリア
コンパクトでプレミアム! ヒョンデ・インスターへ試乗 コダワリ感じるインテリア
AUTOCAR JAPAN
611psでサーキットへ最適化! メルセデスAMG GT 63「プロ」へ試乗 圧巻のパフォーマンス
611psでサーキットへ最適化! メルセデスAMG GT 63「プロ」へ試乗 圧巻のパフォーマンス
AUTOCAR JAPAN
ホンダCR-X シビック 2台の「Si」(2) 現代人へ理想的なデトックス 熱くなれる92ps!
ホンダCR-X シビック 2台の「Si」(2) 現代人へ理想的なデトックス 熱くなれる92ps!
AUTOCAR JAPAN
ディーゼル並みの低燃費! メルセデス・ベンツ次期型CLAに新1.5L 4気筒ガソリンエンジン「M252」搭載
ディーゼル並みの低燃費! メルセデス・ベンツ次期型CLAに新1.5L 4気筒ガソリンエンジン「M252」搭載
AUTOCAR JAPAN
FFスポーツ実験は大成功! ホンダCR-X シビック 2台の「Si」(1) タイプR誕生前夜
FFスポーツ実験は大成功! ホンダCR-X シビック 2台の「Si」(1) タイプR誕生前夜
AUTOCAR JAPAN
海外で話題を集めた「クルマの流行」 おしゃれアイテムから悪趣味な改造まで 34選 後編
海外で話題を集めた「クルマの流行」 おしゃれアイテムから悪趣味な改造まで 34選 後編
AUTOCAR JAPAN
1度でいいから運転してみたい! 伝説の3座マクラーレン「F1ロードカー」から始まった「アルティメットシリーズ」を一挙紹介!!
1度でいいから運転してみたい! 伝説の3座マクラーレン「F1ロードカー」から始まった「アルティメットシリーズ」を一挙紹介!!
WEB CARTOP
ジャガーが衝撃的「次世代モデル」初公開 見たことのない斬新デザインの大型セダン、2026年発売へ
ジャガーが衝撃的「次世代モデル」初公開 見たことのない斬新デザインの大型セダン、2026年発売へ
AUTOCAR JAPAN
【クルマだけではない水素社会を広げるために】ホンダCR-V e:FCEVから読み解くホンダの未来
【クルマだけではない水素社会を広げるために】ホンダCR-V e:FCEVから読み解くホンダの未来
AUTOCAR JAPAN
【四世代に渡る歴史の光と影】刑事ドラマでも大活躍!ソアラとレパードの想い出を振り返る
【四世代に渡る歴史の光と影】刑事ドラマでも大活躍!ソアラとレパードの想い出を振り返る
AUTOCAR JAPAN
海外で話題を集めた「クルマの流行」 おしゃれなアイテムから悪趣味なものまで 34選 前編
海外で話題を集めた「クルマの流行」 おしゃれなアイテムから悪趣味なものまで 34選 前編
AUTOCAR JAPAN
【日本限定50台】ランドローバー・ディフェンダー110にセドナレッド 110初採用のセドナ・エディション
【日本限定50台】ランドローバー・ディフェンダー110にセドナレッド 110初採用のセドナ・エディション
AUTOCAR JAPAN
アウディ e-トロンGTの最強仕様 RS パフォーマンスへ試乗 0-100km/h 2.5秒! 925psでも差別化は難しい
アウディ e-トロンGTの最強仕様 RS パフォーマンスへ試乗 0-100km/h 2.5秒! 925psでも差別化は難しい
AUTOCAR JAPAN
【目標タイムは給油時間!】日本初のEV向けバッテリー全自動交換ステーション
【目標タイムは給油時間!】日本初のEV向けバッテリー全自動交換ステーション
AUTOCAR JAPAN
ルノーとアルピーヌのダブルネームを持つアルカナ【新米編集長コラム#8】
ルノーとアルピーヌのダブルネームを持つアルカナ【新米編集長コラム#8】
AUTOCAR JAPAN
【スープラGT500に激しい入札!】JDM車だけのオークションを東京で開催
【スープラGT500に激しい入札!】JDM車だけのオークションを東京で開催
AUTOCAR JAPAN
5台のセナを含む過去最多177台のマクラーレンが集結!【マクラーレン・トラックデイ・ジャパン2024】
5台のセナを含む過去最多177台のマクラーレンが集結!【マクラーレン・トラックデイ・ジャパン2024】
AUTOCAR JAPAN
【ハイテク機能を搭載した帰国子女】ホンダCR-V e:FCEV試乗記
【ハイテク機能を搭載した帰国子女】ホンダCR-V e:FCEV試乗記
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

1件
  • mon********
    もし、現存車があったなら、100年前の電気自動車のレースも見てみたい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

249.0330.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

22.0126.0万円

中古車を検索
A1の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

249.0330.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

22.0126.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村