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「悲惨に鈍い」加速 キャデラック・セビル 能動的に選ばれた メルセデス300D ディーゼルの高級車(2)

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「悲惨に鈍い」加速 キャデラック・セビル 能動的に選ばれた メルセデス300D ディーゼルの高級車(2)

装備内容ではセビルの方が遥かに勝る

今回ご紹介するメルセデス・ベンツ300Dは、1984年式。英国経由で、インドのインディラ・ガンジー首相の移動手段として手配された車両だ。しかし納車前に暗殺され、クルマの行方は最近までわからなくなっていた。

【画像】ディーゼルのキャデラック・セビルとメルセデス・ベンツ300D 両ブランドの最モデルも 全101枚

数年前にメルセデス・ベンツのマニア、アビブ・スクリューバラ氏が発見。英国に現存する中では、最も装備の行き届いたW123型の300Dといっていい。ガソリンの品質が安定しない地域では、ディーゼルの方が重宝がられた。

コイルスプリングながら、セルフレベリング機能付きの強化サスペンションと、エアコン、エンジン・サンプガードなどが組まれている。赤道へ近い悪路でも、複数の大人を乗せて快適に移動できるよう、仕立てられていた。

ホイールは軽量なアルミ製。ボディと同色に塗装されたセンターキャップを取り付けられる、珍しいアイテムだ。通常のフックス社製スチールホイールと見た目が似ているものの、バネ下重量を抑えている。

インディラのために作られた300Dの金額は、同時期のキャデラックを超えていたことは間違いない。とはいえ、装備内容はセビルの方が遥かに勝る。

リアにはセルフレベリング機能付きエアサスが組まれ、コーナリングライトにランフラットタイヤ、テレスコピック調整も可能なステアリングコラムなどが標準。エアコンやクルーズコントロール、オート・トランクリッド、パワーシートなども装備した。

カラカラというノイズが放たれる

今回の例のようにエレガンテ・グレードを指定すると、ドアのキーホールにイルミネーションが追加され、ボディはツートーンで塗装。アルミホイール風のキャップで足元が飾られ、巨大なフロントグリルには花輪の付いたエンブレムが立ち上がった。

現オーナーは、カーコレクターのフレドリック・フォルケスタッド氏。最近スウェーデンから輸入したそうで、欧州のユーザーへ向けたツーリング・サスペンションのオプションも組まれている。

300Dのインテリアは、MBテックスと呼ばれる合成皮革。豪華さも漂わせるが、デザインは実用的といって良い。パワーウィンドウが前後に装備されている。

セビルには、ソファーのようなレザーシートがフロントに2脚。車内空間は広く、威厳を感じさせる雰囲気があり、300Dと大きく異なる。ダッシュボードにフェイクウッドのパネルがあしらわれ、クロームメッキが控え目に点在し、居心地は良い。

メーターパネルなどには、ボックス状のデザインが展開される。スピードメーターは横に長いリボンタイプ。コラムシフトの3速ATは時代遅れといえたが、キャデラックのユーザーはこれを好んだ。

エンジンを見比べると、300Dのカムカバーはポリッシュされているのが面白い。セビルの方は、アメリカンなV8エンジンらしく飾り気なく質実剛健。キーをひねると、2台とも一発始動。ディーゼルらしい、カラカラというノイズが隠すことなく放たれる。

悲惨なほど加速は鈍い 現代の水準でも静か

発進すると、セビルの洗練性へ驚く。サイドウインドウを閉じれば、エンジン音は殆ど聞こえない。微細な振動が、軽油を燃焼させている事実を伝える程度。存在感の小ささのお陰で、悲惨なほど加速が鈍くても気を揉まずに済む。

3速ATは滑らかで、変速を知覚できない。キックダウンしても、速さは変わらない。車内が僅かにうるさくなるだけだ。

88psの300Dも、速いわけではない。それでも400kg軽く、意外にキビキビと走る。4速ATは、ディーゼルエンジンが発生する17.5kg-mのトルクに備えて強化されている。2速ではなく、1速で発進するよう調整も受けている。

操縦性と乗り心地は、筆者の記憶にあるW123型と異なる。ステアリングの反応は、メルセデス・ベンツらしく正確だが。

コイルスプリングは強化され、車高は通常の300Dから40mmほど持ち上げられている。滑らかに路面をいなし、速度抑制用のスピードバンプを見事になだめる。

キャデラック初の独立懸架式サスペンションを備える、セビルの乗り心地も素晴らしい。ロードノイズの小ささでは、上回るかもしれない。現代の水準でも、静かと表現して良いだろう。インテリアの製造品質は、300Dに及ばないが。

ステアリングホイールは軽く回せ、路面の感触もある程度伝わってくる。アメリカ車でありながら、レスポンスも悪くない。前輪駆動のパワートレインと、キャデラックとしては小さめのボディロールで、コーナリングには安心感が伴う。

北米市場で有利に振る舞えたメルセデス

1980年から1986年までの間に、セビルは約20万台がラインオフした。商業的には成功したといえるが、ディーゼルエンジンが評価を大きく下げてしまった。歴代のキャデラックの中で、最も低迷したモデルかも知れない。

アメリカの高級ブランドが長年掲げてきた、「世界水準」という達成目標には届いていなかった。豪華装備な大型モデルのスタイリングを毎年リフレッシュするという、数10年間続いた手法は、ドイツ勢の台頭で通用しなくなっていた。

対象的に、300Dは秀でた技術を比較的シンプルな構成でまとめ、安全性や耐久性が追求されていた。マーケティングを活用しつつ、飾り立てることなく、優れたエンジニアリングで高い価格を正当化させている。

キャデラックは、顧客が望むクルマを提供した。メルセデス・ベンツは、顧客の好みの一歩先を示し、潜在的に望まれるクルマを提供したといえる。

ディーゼルの高級車が徐々に一般化していく北米市場で、有利に振る舞えたのはメルセデス・ベンツだった。刺激は控えめでも、W123の300Dをユーザーは能動的に選んだ。

時速55マイル(約88km/h)の制限速度下では、充分な動力性能でもあった。その点ではセビルも不足なかったといえるが、信頼性の問題は小さくなかったはず。

実際に運転してみると、セビルは見た目以上にいいクルマだと思える。ガソリンで動くV8エンジンなら、期待へ応えるキャデラックになったことだろう。

ディーゼルエンジンのサルーン 2台のスペック

キャデラック・セビル(1979~1986年/欧州仕様)

北米価格:2万400ドル(新車時)/1万2600ドル(約189万円)以下(現在)
生産数:19万8155台
全長:5202mm
全幅:1801mm
全高:1379mm
最高速度:169km/h
0-97km/h加速:19.7秒
燃費:7.1-8.5km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1898kg
パワートレイン:V型8気筒5737cc 自然吸気
使用燃料:軽油
最高出力:106ps/3200rpm
最大トルク:28.9kg-m/1600rpm
トランスミッション:3速オートマティック(前輪駆動)

メルセデス・ベンツ300D(1976~1984年/英国仕様)

英国価格:1万1146ポンド(新車時)/3万ポンド(約555万円)以下(現在)
生産数:32万4718台(合計)
全長:4725mm
全幅:1786mm
全高:1438mm
最高速度:154km/h
0-97km/h加速:17.7秒
燃費:8.5-9.9km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1445kg
パワートレイン:直列5気筒3005cc 自然吸気
使用燃料:軽油
最高出力:88ps/4400rpm
最大トルク:17.5kg-m/2400rpm
トランスミッション:4速オートマティック(後輪駆動)

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みんなのコメント

3件
  • kha********
    部分的に切り取られた記事なのか?この記事で取り上げられているメルセデスベンツ300Dとキャディラック・セビルとの関係、なぜ比較されているのか分からない。
    分かるエンスージアストの方がいらしたら教えてください。
  • yow********
    せむしって呼ばれたセビルだね。ディーゼルモデルが有ったんだな。確か国内モデルは気筒コントロールが絶望的に調子悪くて不人気だった気がする。
    個性的なデザインが好きだったけどな〜
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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