日産 GT-Rは、2022年9月から施行が予定されている騒音規制(国際基準調和のフェーズ2)に対応できないため、消滅すると言われていた。だからこそ2020年モデルが、「ラストGT-R」としてありがたがられてもいる。
昨日、6月29日の株主総会では2020年3月期決算の純損益が6712億円と巨額の赤字になったことが明らかとなり、朝日新聞によると内田社長自らが陳謝したという。
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しかし、先日発表された日産の中期事業計画では、多数の新車投入計画が発表されるなど明るい材料も多い。また、今後注力するカテゴリーのひとつに、「スポーツ」が挙げられており、そこにはフェアレディZとスカイラインに加えて、GT-Rの写真が掲載されていた。
日産は今後、GT-Rをどうするつもりなのだろう。
いや、現時点でどういう思惑があったとしても、20年ぶりの経営危機にある日産だけに、それが実現できるかどうかは別問題だが、現実を勘案して、希望的な観測というか単なる願望を述べてみたい。
文:清水草一
写真:茂呂幸正、編集部、NISSAN
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GT-R存続には「米国だけで売る」という選択肢も!?
2007年の発売以来、いまだに一線級の性能を維持するGT-R。各種規制の強化により最新モデルで一時的に販売終了の可能性も指摘されているが……
まず、GT-Rの存続のためには、まったく新しいスポーツカーに生まれ変わらせる必要があるが、抜け穴もある。具体的には、「2022年以降、しばらくはアメリカだけで売る」という方法だ。
アメリカは、例の騒音規制の策定に一応参加している形ではあるが、欧州が主導しているものだけに、導入はしていない。
おそらくアメリカが、この騒音規制を導入することはないだろう。日本を含め加盟国は、もともと採用の義務を負っているわけではなく、各国の自由なのだ(条文上「加盟国は採用することができる」となっている)。人口密度のレベルが違う日欧とアメリカとでは、国情がまったく異なる。
特に、EVでもクリアが難しいといわれている「フェーズ3」(日本は2024年から導入予定だが、時期の見直しもアリとなっている)の採用は、到底考えられない。世界最大の産油国であり、ほぼ一方的な自動車輸入国であるアメリカが、これを導入するメリットはゼロだ。
この規制自体、政治的にEV化を推し進め、世界の自動車産業の主導権を握りたいヨーロッパの思惑が強く感じられる。日本だって、それに従う義務があるわけではない。
燃費規制についても、ヨーロッパは厳しい罰金が規定されているが、日本は事実上罰則らしい罰則なし。いわば自粛である。
アメリカにも燃費規制は存在するが、トランプ政権は緩和の方針を打ち出している(来年政権が代わっているかもしれないが……)。
日本でもGT-Rは存続できるのか?
日産自動車「2019年度決算/事業構造改革計画」より。集中するセグメントに「スポーツ」をあげており、そこにはGT-Rの写真も使われている
日産は「経営資源を日米中に集中するため、ヨーロッパ市場から撤退し、ルノーに任せる」との報道も流れた。
日産はそれを否定したが、少なくともGT-Rをヨーロッパで売る必要はないだろう。生き残れる地域でのみ存続させ、日米+新興国市場でスポーツイメージをアピールできればそれでいいはずだ。
つまり、現行GT-Rに関しても、アメリカに限定すれば、売り続けることができる可能性が高いと見る。それで時間を稼ぎつつ、次期型を開発すればいいのではないでしょうか!
トップモデルのGT-R NISMO。最高出力は600psに達する国産屈指の超高性能車だ
ヨーロッパ市場を捨てれば、日米の基準に合致させればいいので、最悪でも生産台数を絞れば、燃費規制は問題ないだろう。
あとは、日本の騒音規制さえクリアすればいいのだが、日本もフェーズ3に関しては、導入を延期するのではないか。事実上無期延期するのではないか!? いや、そうであることを望みたい!!
現実的に考えて、軽自動車を含めすべてのクルマをEVやPHEVにするなんて、国民生活に強いる犠牲が大きすぎる。
発電の8割を火力に頼る日本では、EV化によるCO2削減メリットが小さいことを考えると、そこまで静かな乗用車が、社会的に強く求められているとも思えない。
となると、希望的観測だが、日本の騒音規制は、当面フェーズ2までではないか。それならば、タイヤとエンジンの両面で努力すれば、なんとかクリアできるだろう!
原点回帰も必要? 次のGT-Rはどんなクルマであるべきか
3L・V6ターボエンジン搭載で405psを発揮するスカイライン400R。次のGT-Rはこのパワーユニットを活用してもよいのではと筆者
では、次期GT-Rはどんなクルマにすべきか?
それはもう、伝説のR32型GT-Rの路線しかない!! 具体的には、ピュアエンジンの中型4WDスポーツで、価格はスープラと同じく600~700万円程度! デザインも32GT-Rを髣髴とさせるべきだ。
現行GT-Rは確かに日本の誇りだが、スーパースポーツと肩を並べる性能を狙ったことが、成功だったかどうかは微妙だ。日産という大衆車ブランドがそこまで背伸びをしても、やっぱり壁は厚い。
トヨタはそれをよくわかっていて、ああいう形でスープラを復活させたが、そこは日産も見習うべきではないか。日本はもちろん、アメリカのユーザーの多くも、それを望んでいるはずだ。
エンジンは、たとえばスカイライン400RのV6ターボをそのまま使ってもいい。あのエンジンは、パワーもフィールもどこか古典的で、実に味わい深いものがある。古き良き日産の香りがするのである。
それを4WD化し、スカイラインよりコンパクトな車体に詰め込めば一丁上がり! ではダメだろうか?
「600万円のGT-R」は充分現実的
1989年発売のR32型スカイラインGT-R。2.6Lの直6ターボエンジンを搭載し、445万円という新車価格だった
スカイライン400Rが562万円なので、装備を簡素化すれば、600万円のGT-Rは充分現実的だ。いっそのこと国内向けは、「スカイラインGT-R」の名称を復活させてもいい。
スカイライン400RのWLTCモード燃費は10km/L。4WD化すればそこからさらに若干悪化するだろうが、そんなモデルがひとつくらいあってもいいじゃないですか!
スープラ同様、生産台数をある程度絞れば、飢餓感から人気大爆発となるだろう。
ヨーロッパでは、騒音と燃費規制によって、今後ピュアエンジン車は生き残れないといわれているが、それはヨーロッパの勝手。
逆にピュアエンジンのスポーツカーをヨーロッパのメーカーが作れなくなれば、希少性は高まる。ある意味チャンスなのである。
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