横浜の運送会社・あおい運輸は、主力業務のアスファルト合材輸送にドイツ・フリーゲル社のプッシュオフトレーラを導入。関連会社のトップアローズを通じて販売も行なっている。アスファルト合材とは、道路の舗装の材料のことである。
プッシュオフトレーラは、荷台内の可動式フロアで積み荷を押し出す(プッシュオフ)機構を備えたトレーラ。荷台をダンプアップせずに荷降ろしができるため、横転や架線への接触などの事故リスクを低減。また、独自の保温機能により輸送品質アップも実現する。
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また、ショートホイールベース化により、トレーラでありながら単車の大型ダンプと同等の旋回性を実現。それでいて大型ダンプの2倍以上の最大積載量を誇るなど実用性も抜群で、今後はさらに活躍の場を広げそうだ。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
※2019年6月発売「フルロード」第33号&2020年6月発売「フルロード」第37号より
【画像ギャラリー】安全で高さも気にせず使える!! 積み荷を押し出すプッシュオフトレーラは今イチ推しのトレーラ!?
■スウェーデン鋼と樹脂で保温材をサンド ドイツの厳しい規定をクリアする保温機能
あおい運輸が導入し、関連会社のトップアローズで販売も行なっているドイツ・フリーゲル社のプッシュオフトレーラ。トレーラGVW36t級の3軸車で、連結全長12m以下、最大積載量28t以上というスペックを誇る
プッシュオフトレーラの製造を行なうフリーゲル社はもともと農業機械メーカーで、農薬など液剤を運ぶためのタンクや、タンクに取り付ける農薬散布用のアタッチメントの製造がルーツ。プッシュオフトレーラは、もともと牧草運搬用だったものを、アスファルト合材輸送用に転用したものという。
フリーゲル社の持ち味は、多品種少量生産。プレス機を持たず、平板をレーザーカットして組み付ける独自の製法が特徴だ。
プッシュオフトレーラ(アスファルト合材仕様)の独特の角張ったボディは、レーザーカットされたスウェーデン鋼製のインナーと樹脂製アウターで、保温材(硬質発泡材)をサンドしたものだ。
この保温材は、アスファルト合材の輸送中の品質低下を防ぐためのもの。工場出荷時点で160度の高温であるアスファルト合材は、輸送中に温度が下がりすぎると、舗装に継ぎ目ができたり、波打ったりするなど品質不良を起こしてしまうため、温度管理が重要という。
メインのアスファルト合材輸送仕様はスウェーデン鋼製のインナーと樹脂製アウターで保温材をサンドした3重構造を採用。樹脂製アウターには荷台内の温度確認用の温度計が前後左右に合計4箇所備わる
ちなみにアウトバーンを擁すドイツは舗装に関するルールが厳格で、2015年にアスファルト合材輸送の品質向上のため運搬車への保温機能搭載を義務化。日本にやってくるプッシュオフトレーラの保温機能は、このドイツの厳しい規定をクリアしたものだ。
なお、日本にも保温機能付きダンプがあるが、構造が特殊なため運用例は少ないという。また、プッシュオフトレーラには保温機能なしバージョンも存在。そちらは断熱材や外張りがないため板チョコレートのようなゴツゴツしたボディが特徴だ。
■横転など事故のリスクを低減し、温度ムラもなくせる独自の荷降ろしシステム
こちらは保温機能が備わらない砕石運搬仕様。ボディのシルエットは同じだが、保温材と樹脂製アウターがないため表面にはスチフナ(補強柱)が見え、ゴツゴツとまるで板チョコレートのよう
プッシュオフトレーラという名前は、荷台内の可動式フロアで積み荷を押し出す(プッシュオフ)ことに由来。L字型の可動式フロアは油圧シリンダーで2段階に動く仕組み。
各部はバネで側壁・床面に押さえつけられているので、荷台内に合材が残ることはないという。作業時間はフル積載時で約2分だが、これは通常のダンプと同等のスピードだ。
プッシュオフトレーラの名前の由来であるプッシュオフシステムを連続写真で見ていこう
L字型の可動式フロアは前壁と床の2パーツで構成され、まず全体が後ろにスライド
床が一番うしろまで来たら、最後は前壁のみ後ろにスライドし、荷台内の合材を押し出す
荷台内の合材は、いくら保温機能があるとはいえ、微妙な温度ムラが発生。これをダンプアップして一気にドサッと降ろすと、温度が低い部分だけが先に落ちてしまい、品質不良の原因となる。
コレに対し、プッシュオフトレーラは合材を金太郎飴を切るように降ろすことが可能。これにより、なるべく高温かつ温度ムラが少ない(専門的には「粒度分離が少ない」という)合材輸送が可能となる。
可動式フロアは油圧シリンダーで押す仕組み。ボディ前端部には油圧ユニットが備わる。ちなみに可動式フロアの下はフレームのみの構造。見えない部分の軽量化は最大積載量確保に寄与している
荷台をダンプアップさせず荷降ろしができるプッシュオフトレーラは、横転や架線への接触といった事故発生リスクが極めて少ないのも強み。合材輸送における架線への接触事故は、年2~3回ほどの頻度で発生するそうで、その都度、高額の損害賠償が必要となるそうだから、このメリットは大きそうだ。
■大型ダンプより効率的なスペック 最新の第2世代は欧州最新式の足回りも搭載
上下分割開閉式のテールゲートは電動式。操作は可動式フロアも含めて無線ラジコンで行なうことができるほか、車両側の制御パネルからも操作可能だ
あおい運輸が導入したプッシュオフトレーラはトレーラGVW(車両総重量)36t級の3軸車で、最大積載量は標準仕様で28200kg。荷台内寸は長さ6200×幅2300×高さ1150mmとなっている。
特殊車両通行許可の運行経路次第で実際の最大積載量は減トンされる場合もあるが、単車の大型ダンプの2倍以上の最大積載量は、輸送効率アップの大きな一助となるだろう。
最新の第2世代はSAFホランド社製の最新鋭のエアサス・リフトアクスル・ディスクブレーキ・ワイドシングル車軸を搭載。空車回送時の高速料金削減に寄与するリフトアクスルは前後車軸がリフトする旋回性重視の仕様だ
主要寸法は、最遠軸距(キングピン中心部からトレーラ最後軸中心部までの長さ)8940mm、連結全長11620mmで、最小回転半径6.7mと最小旋回幅7mは単車の大型ダンプよりコンパクト。トラクタは第5輪荷重11.5t級の2軸車(4×2駆動)が基本だ。
足回りは当初、BPW社製のエアサス・リフトアクスル・ディスクブレーキ仕様のワイドシングル車軸を搭載していたが、2020年公開の第2世代からはSAFホランド社製に変更された。荷台カバーも手動式から電動開閉式スライディングルーフに変更された。
第2世代で新たに搭載されたワブコ社製「オプティリンク」は、スマホからトレーラの故障情報などを確認可能。リフトアクスルの操作もスマホ操作可能だ。車載デバイスはトレーラのボディ下部に搭載される
ちなみにSAFホランド社製の車軸は、独自のインテグラルディスク方式を採用し、ハブボルト周辺部とディスクローターの間にアダプタを介することで、ブレーキ作動中に局所的に発生する高温下現象を回避。制動力低下とローター偏摩耗抑制に寄与する。
なお、車軸も含めた車両全体のメンテナンスおよびパーツ供給は、日本国内に在庫拠点を持つ伸工貿易(東京都渋谷区)のサポートのもと、あおい運輸の関連会社のトップアローズが行なうという。
アスファルト合材輸送はダンプ業界全体の10%未満のニッチな業界。だが国内の年間出荷数は約4000tと小さくない。輸送の約8割はダンプが担っているが、近年はドライバー不足や高齢化で車両台数が不足。業界のプッシュオフトレーラに対する関心は今後ますます高まりそうだ。
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