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プジョー RCZは個性的でスタイリッシュ、走らせると楽に速い新世代のスポーツカーだった【10年ひと昔の新車】

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プジョー RCZは個性的でスタイリッシュ、走らせると楽に速い新世代のスポーツカーだった【10年ひと昔の新車】

2010年4月、プジョー RCZが欧州で販売開始されて話題となった。Motor Magazine誌はスペインで行われた国際試乗会に参加してその時の模様を伝えているが、ほどなくして日本市場でも先行予約が開始されている。ここでは国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年7月号より)

RCZはプジョーにとって異例づくめのクルマ
2007年のフランクフルト国際モーターショーにコンセプトカー「308RCZ」が発表されて話題をさらったが、当時はまさかこれが量産化されるとは思わなかった。その車名から308がベースであることは理解できたものの、その斬新なデザインを量産するのはとても無理というか、現実的ではないと思えた。

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ほどなくして「どうやらRCZの量産化が決定したらしい」という噂を聞いてもにわかに信じられなかった。「あのダブルバブルルーフはどうするのだろう。量産化のために変更が加えられることになったら、そのデザインはどうなるのだろう」と。

コンセプトの発表から約2年。昨年末に欧州で発表された市販モデルは、308の文字が消えて「プジョーRCZ」の名前で登場したが、そのデザインはほぼコンセプトカーのまま。あのダブルバブルルーフ、それに続くダブルバブルのリアウインドスクリーンも見事に実現されていた。

それにしても、RCZはプジョーにとって異例づくめのクルマと言っていいだろう。真ん中にゼロをはさむ数字という伝統のネーミングをやめ、あえてRCZを車名としたことは、新しいプジョーの方向性を示すものであり、また高性能バージョンにつけられてきた「RC」と究極を意味する「Z」を組み合わせたことでプジョー技術の集大成であることを示しているとも言える。またこのモデルが新しいプジョーのマークをつける最初のクルマになることもなにやら象徴的だ。

生産がオーストリアのマグナ・シュタイア社で行われることも意味深。量産といっても生産工程が複雑なこともあって比較的少数になることもあるのだろうが、これが次世代のSR1へといずれ続くとすれば、RCZは次の時代への橋渡しとしても重要なモデルということになる。

ちなみに、ダブルバブルのリアウインドスクリーンはフランスのサンゴバン社で生産されてマグナ・シュタイア社に持ち込まれるらしい。

その斬新なデザインからは想像できない魅力的な価格
市販型のRCZを見るのは今回の国際試乗会が初めてだったが、やはりまずはそのデザインに感心してしまった。よくぞこれほどエキゾチックで複雑な造形のクルマをわずか3万ユーロちょっと(日本円にして400万円ほど)からという価格で実現できたものだ、と。

独創的でありながら機能的、複雑でいて絶妙なバランス。これだけでも買う価値がありそうだ。今回の試乗会は前衛美術で有名なスペイン・グッゲンハイム美術館の近くで開催されたが、それも偶然ではないだろう。

エンジンバリエーションは3種類。ガソリンは1.6L直噴ターボが2種類で、パワーはそれぞれ200psと156ps。200ps仕様は6速MT、156ps仕様は6速MT/6速ATと組み合わされる。1.6L直噴ターボはもともとBMWとの共同開発によるものだが、その後独自の開発が積極的に進められ、とくに200ps仕様にはかなり手が加えられている。

また、156ps仕様もユーロ5排出ガス規制にあわせて開発し直されたものだという。156ps仕様の設定は車両価格を抑えるためではなく、どうやら6速ATとの組み合わせを設定するためだったらしい。

もうひとつのエンジンは2.0L HDi直噴ターボディーゼル。163psという高出力もさることながら、33.2kgmという大トルクが魅力で、これはガソリンの200ps仕様のそれをも上回るものだ。

自信を持ってコーナーに進入することができるステアフィール
今回メインで試乗できたのは、200psの1.6L直噴ターボ搭載モデル。19インチのタイヤを装着した「GT」と呼ばれる仕様だった。

走り出してまず気がつくのは、スポーツカーらしい低いドライビングポジションが与えられながら窮屈な感じがしないこと。エンジンはその排気量から想像できないほどトルクバンドが広く、ごく低回転からでも力強く加速する。爆発的とまでは言えないが、アクセルペダルに対する反応はよく、息の長い頼もしい加速を見せる。

足まわりは適度に固められ、柔らかい乗り心地を確保しながら、しなやかにコーナーをクリアする。安心感のある走りは、正確で扱いやすいステアリング、強力なブレーキ、剛性の高いボディ、19インチタイヤのグリップなども大きく貢献しているのだろう。攻め込めばFFらしいアンダーステアも顔を出すがそれも大きくはなく、挙動が安定しているので、自信を持ってコーナーに進入することができる。これがRCZの特徴と言えるだろう。

もうひとつ注目すべきはドライバーを刺激するエンジンノート。吸気音を室内に増幅させてスポーツ感を強調しているのだ。このようなシステムはいくつかのメーカーがすでに採用しているが、加速時の力強いサウンドはたしかに魅力的。巡航時は静かだし、車外に騒音を撒き散らしているわけではないので効果的である。

高速での直進安定性の良さも好印象。自動的に2段階に立ち上がるリアスポイラーも効いているようだ。たしかにこのリア形状では後方にタービュランス(乱気流)を発生させてしまいそう。コスト的、デザイン的、重量的にも「できれば、つけたくなかった」というのが本音のようで、それだけ効果があるという証明でもある。

残念ながら、今回は6速ATモデルに乗ることはできなかったが、2.0LのHDi直噴ターボディーゼル仕様に乗ることができた。ディーゼルエンジンの分厚いトルクを生かした走りは、200ps仕様のガソリンにも負けぬほどスポーティで、「欧州では半数近くのユーザーがディーゼルを選択するかもしれない」というのもうなづけるところ。見逃すにはもったいない存在である。

RCZに課題があるとすれば、サイズの割に車重がやや大きいところだろうか。あの大きなバブルルーフ・リアウインドスクリーンの影響もあると想像されるが、それに対応してカーボンルーフも用意しているという。

308シリーズのコンポーネンツやメカニズムをベースに開発 
インテリアについては、外観のエキゾチックさから想像すると独創性に欠ける嫌いがあるが、整然とまとめられたメーターパネルは機能的であるし、スポーツモデルとして素材や細部のデザインにこだわりもうかがわせる。

試乗車のシートは本革仕様だったが、分厚いシートクッションはサポートもよく、相変わらず座り心地も良かった。少し気になったのはAピラーの太さくらいだろうか。

このインテリアのデザインや当初の308RCZという車名からもわかるように、RCZは308シリーズのコンポーネンツやメカニズムをベースに開発されている。アウディTTなどもそうだが、量産車種をベースにすることによって、凝りに凝ったデザインや装備を盛り込みながら魅力的な価格が実現されるというわけだ。

こうなると日本発表が待ち遠しくなってくるのだが、原稿締め切り直前の5月21日、早くも日本市場での価格が発表されて先行予約が始まった。欧州デリバリーはまだなので、これ自体が驚きなのだが、その価格を見てまた驚いてしまった。156ps仕様+6速ATが399万円、200ps仕様+6速MTが423万円というのである。

欧州での価格から予想できたことではあるが、実際に目の当たりにすると、やはり破格に感じる。(文:Motor Magazine編集部 松本雅弘)

プジョー RCZ GT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4287×1845×1359mm
●ホイールベース:2612mm
●車両重量:1297kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:147kW(200ps)/5500-6800rpm
●最大トルク:275Nm/1700-4500pm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●最高速:240km/h
●0→100km/h加速:7.5秒
※EU準拠

プジョー RCZ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4287×1845×1359mm
●ホイールベース:2612mm
●車両重量:1297kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:115kW(156ps)/6000rpm
●最大トルク:240Nm/1400-4500pm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●最高速:213km/h
●0→100km/h加速:8.4秒
※EU準拠 

[ アルバム : プジョー RCZ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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