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【ライバル比較】ヤリス・クロス/キックス/ヴェゼル 5つの視点で比べる

掲載 更新 50
【ライバル比較】ヤリス・クロス/キックス/ヴェゼル 5つの視点で比べる

メーカーが注力するコンパクトSUV

text:Takahiro Kudo(工藤貴宏)

【画像】三者三様【個性豊かなコンパクトSUV 詳細を比較】 全162枚

editor:Taro Ueno(上野太朗)

2020年6月、日産「キックス」発売。2020年8月、トヨタ「ヤリス・クロス」発売。2021年4月、ホンダ「ヴェゼル」がフルモデルチェンジ。

日本においてSUVマーケットのけん引役となっているのはコンパクトクロスオーバーSUVだが、ここ1年ほどで状況が大きく変わった。

各メーカーを代表するBセグメントのモデルがデビュー&フルモデルチェンジしたのだ。

果たしてどう選べばいいのか。

どれもが魅力的なモデルがゆえに、ユーザーとしてはそこが悩みどころだろう。

そこで今回は、車体サイズ、居住性、積載性、パワートレイン、そして価格に関して上記3台を横比較しながら、コンパクトSUV選びのサポートをしていこうと思う。

ただし、意図するのは「これがベスト」という1台を選ぶことではない。

「こういう人にはこのクルマがいい」とか「ここを重視するコンパクトSUV選びなら、このクルマが適している」といった、各車種の特徴やマッチングのいいユーザー属性を明らかにするのが狙いだ。コンパクトSUV選びに迷ったら、参考にしていただければ幸いである。

まずはサイズを比較

まずは、車体サイズからみていこう。

キックス:全長4290×全幅1760×全高1610mm
ヤリス・クロス:全長4180mm×全幅1765mm×全高1590mm
ヴェゼル:全長4330mm×全幅1790mm×全高1590mm

全長でいうと、短いほうからヤリス・クロス、キックス、そしてヴェゼルという順番になる。

こうして比べてみると、ヴェゼルはヤリス・クロスに対して150mmも大きいのは意外に感じる人も多いかもしれない。

ヴェゼルは後席居や荷室の広さが自慢だが、それは優れた空間設計に加え、そもそも車体が大きいことが効いているのである。

一方で、運転しやすさや自宅駐車場の都合や「できれば小さいほうがいい」というクルマ選びをする人にとっては、ヤリス・クロスのサイズは魅力となるだろう。

ただ、小ささを求めるのであればトヨタには「ライズ」という、もうひとまわり小さなSUVもあってそれが魅力的な選択肢となるかもしれない。

居住性 「ヴェゼル」がリード

居住性はどうだろうか。

ここでは「後席の広さ」という意味で話を進めていくが、結論からいえばヴェゼルがリードする。

ヴェゼルは先代モデルから後席の広さに定評があったが、新型はさらに飛躍。

後席のひざ回りスペースは先代比で35mmも増し、接近してくるライバルに差をつけた。

ただ、モデルチェンジで全高がわずかに低くなった影響で頭上区間は先代よりも狭まっている(とはいえ、圧迫感を覚えるほどではないことはお伝えしておこう)。

次点は、日産キックスだ。

ヴェゼルと差がついているのは足元スペースである。

しかし、実際に座ってみればわかるが、ヴェゼルに届かないとはいえ、キックスの広さもなかなかのもの。

さらに頭上はヴェゼルよりも余裕があり、そのうえサイドウインドウが大きくて開放感も高いから居心地の良さは素晴らしい。リアシート座面の沈み込み感も好印象だ。

ヴェゼルやキックスに比べると、ヤリス・クロスは分が悪い。

しかし、これはトヨタが「わかってやっていること」と判断するのが正解だろう。

なぜなら、同社は海外展開している「カローラ・クロス」を今夏にも国内向けに導入するとうわさされているからだ。

カローラクロス(海外仕様)の全長は4460mmでヤリス・クロスよりもひとまわり大きく、「後席居住性を求めるならそちらで」という棲み分けのうえでラインナップするSUV各車のサイズを決めていると考えるのが自然だ。

荷室の広さ 狙い分かれた三者三様

ラゲッジスペースをみてみよう。

純粋な容量でいうと、キックス423L、ヤリス・クロス371L(もっとも広い仕様となるデッキボード非装着2WD)。

そしてヴェゼルは、公式な容量が公開されていないが、先代の404Lよりも若干狭いと推測される(筆者計測によると床面の前後長さは先代より35mmほど短い)。

いずれにせよ、広さでいえばキックスがリードしている。

キックスやヴェゼルで驚くのは荷室床の広さだ。床が低いから、高さで容量を稼げている。

とはいえ、荷室の評価は単純な広さだけでは語れない。

各車の特徴をみると、キックスはとにかく広さ重視でシンプルな構造。だから後席格納時には荷室床と倒した後席部分に段差が生じるが、それを解消するよりもとにかく広さという狙いがみえてくる。

一方ヤリス・クロスは、絶対的な広さではライバルに届かないが、アレンジ幅の広さが自慢。

上級タイプになるとリアシート背もたれは左右分割を超えて左右と中央が独立した「3分割」で倒せるし、荷室の床の高さを調整するデッキボードも組み込まれる。

そのデッキボードはさらに、左右分割で取り外しや高さ調整がおこなえる、高価格帯のSUVでも見たことがない凝ったつくりなのだから驚くばかりだ。

とにかくアレンジ勝負である。

ヴェゼルは両者の中間。

容量もあるし、後席格納時には畳んだシートが低く収まって荷室床がフラットになるなどアレンジの実用性も見事。

こうして比べてみると、それぞれ狙いが分かれた三者三様なのが面白い。

パワートレイン 爽快感は「キックス」圧勝

各車の狙いは、パワートレインの違いにも表れている。

潔く全車統一しているのはキックス。

しかも、純粋なガソリンエンジン仕様はなく、全車ともハイブリッドとしている。駆動方式はFFのみで、4WDの設定もない。

一方でヤリス・クロスとヴェゼルはガソリン車とハイブリッドが選べ、駆動方式もFFと4WDを選択可能だ。

注目したいのは、ヴェゼルのエンジン。

ここで比べたライバルの中でヴェゼルだけが4気筒エンジンを搭載するのだ。

4気筒エンジンは、ヤリス・クロスが搭載する3気筒エンジンに比べて燃費性能で不利だが、ガソリン車で比較するとフィーリングや振動など質感の面でアドバンテージがある。

ガソリン車でパワートレインに上質さを求めるなら、ヴェゼルは魅力的だ。

ハイブリッド同士を比較すると、燃費性能に優れるのはヤリス・クロス。

しかしながら、アクセルを踏み込んだ時の爽快感は、盛り上がりと伸び感のあるキックスが圧倒的にリードしている。

その背景にあるのは、エンジニアの情熱だ。日産でハイブリッドシステム(eパワー)の味付けをまとめているエンジニア(ハイブリッドを担当する前はGT-Rのエンジンを開発していた)がこだわる、「パワートレインの気持ち良さ」を求めるチューニングが大きく効いているのである。

価格 手が届きやすい「ヤリス・クロス」

最後は、クルマ選びには欠かせない「価格」だ。

「手が届きやすい」というアプローチでいえば、断然アドバンテージがあるのはヤリス・クロス。

ヤリス・クロスのベーシックグレードの価格は、なんと179万8000円。

この仕様は先進安全装備すら省いた、いわゆる「廉価仕様」ではあるものの、価格訴求のパンチ力は強い。

逆に、FFモデルでもっとも高価なのはハイブリッドの最上級となる258万4000円だ(運転席パワーシートやディスプレイオーディオも標準装備)。

ヴェゼルは、ベーシックグレードとして展開するガソリン車が227万9200円。

もっとも高価なタイプの「PLaY」はカーナビやガラスルーフも標準装備したハイブリッドFFで329万8900円。ヤリス・クロスに比べると価格帯が上にスライドしている。

キックスはハイブリッドFFだけの展開で、基本グレードは275万9900円。

ガソリン車がないのでボトムの価格と考えれば高いし、ハイブリッドでもヤリス・クロスに比べると高めの印象。ただ、ヴェゼルに比べると控えめといっていいだろう。

よりマッチングのいいクルマが選択肢

こうして価格まで比べて感じるのは、ヴェゼルはヤリス・クロスとは「クラスが違う」と考えるのが正解だということ。

車体サイズからパワートレイン、そして価格まで、ヴェゼルはヤリス・クロスに対してすべてがひとまわり上なのだ。

一般論でいえば、ライバルを比較しても多くの場合は「すべてが優れている」というクルマはほとんどなく、それぞれに優れた部分とそうではない部分がある。

その中で、どこを重視してクルマを選ぶかは消費者のおかれた状況によって異なってくる。

車体サイズをはじめ、居住性、荷室の使い勝手、そしてパワートレインや価格。

こうして最新のコンパクトSUVを並べてみてもそれぞれ特徴があるので、それを踏まえたうえで「よりマッチングのいいクルマ」に巡りあえることが幸せなクルマ選びといえるのではないだろうか。この記事が、その助けとなれば幸いだ。

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