2018年7月に発売されたホンダのクラリティPHEVは、プラグインハイブリッド車という珍しさもさることながら、実は“ある装備”の珍しさも(密かに)注目を集めている。
そう、ワイパーが普通の車とちょっと違うのだ。
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ワイパーといえば、2本の棒状のワイパーブレードが平行に動くタイプが主流。皆さんの愛車や街で見かける乗用車のほとんどがこのタイプを採用している。
一方、最近では珍しくなったものの、2本のブレードが中央から左右に広がるように動く「対向式」と呼ばれるタイプも存在。この珍しいワイパーを採用するのがクラリティPHEVなのだ。
以前から珍しかった対向式ワイパーながら、調べを進めると現在ではほぼ絶滅寸前になっていることが判明!
久々に目にした対向式ワイパーを今も採用する車、そしてそのメリットとデメリットは? 雨天時に必ずお世話になる車のワイパーについて考えてみたい。
文:永田恵一/写真:編集部、Honda
対向式ワイパーを使う車種は?
まずは現在、そして過去に対向式ワイパーを採用している(いた)主なモデルを見ていきたい。
対向式ワイパーは以前から少数派だったが、今ではさらに採用車が減少しており、絶滅寸前というのが実情となっている。
◆対向式ワイパーを採用する主なモデル
【現行車】
・ホンダ クラリティ(FC、PHEV)、ジェイド
・シトロエン C4ピカソ
など
【過去に販売されたモデル】
・トヨタ 初代エスティマ
・ホンダ 初代&2代目オデッセイ、エリシオン、8代目シビック(タイプR含む)、シビックタイプRユーロ
・三菱 デリカスペースギア
・マツダ 2代目MPV
・ベンツ 初代&2代目Aクラス、初代Bクラス
・プジョー 307、初代308
など
なぜ絶滅危惧に? 対向式ワイパーの長所と短所
今や風前の灯火となりながらクラリティPHEVにも採用されている対向式ワイパー。その長所と短所としては以下の点があげられる。
◆メリット
・ワイパーを長くできるので払拭(水滴を拭き取る)面積が大きい
◆デメリット
・構造が複雑かつ採用する車も少ないため生産時に加え、ワイパーのブレード、ゴムの交換といったメンテナンス時の費用も高くなりがち
では、なぜ対向式ワイパーはなぜほぼ淘汰されてしまったのか?
対向式ワイパーはフロントガラスの面積が広く、運転席がフロントガラスに対して比較的後方にあるため(インパネの厚さやガラスの角度が寝ていることに起因)、長いワイパーを使わざるを得ない車にしか採用されない。これは雨天時の視界を確保するためだ。
過去も含め、対向式ワイパーを採用した車を見ても、これらの特徴が当てはまる。
そのため上記のデメリットも踏まえると、「対向式ワイパーが必要な車には採用するけれど、不要なモデルには採用しない」という、ごく当たり前の結論にいきつく。
対向式ワイパーを採用する車の数は、フロントガラス面積と運転席の位置次第ということになる。つまり、その条件に当てはまる新車が減ったことも採用数減少の一因と考えられる。
2本じゃない!? 変わり種“1本ワイパー”も絶滅寸前
さて、ここまで紹介した対向式、そして主流派の平行式もフロントワイパーの本数は2本だが、実はワイパーが1本しかない車も以下のように少数ながら存在している。
◆1本ワイパーを採用する主なモデル
【現行車】
・トヨタ ヴィッツ
・三菱 i-MiEV
・タタ ナノ(2008年登場の初代は10万ルピー=当時約28万円という価格破壊で有名になり、2代目の現行型も約2万4000円ルピー=約36万円と激安)
【過去に販売されていたモデル】
・ベンツ Eクラス(W124型、W210型)、190、Cクラス(W202型)、SL(R129型)
・日産 3代目シルビア(初期型)
・いすゞ 初代ピアッツァ
・ホンダ 2代目プレリュード
・ホンダ トゥデイ
このように、採用車種数を見ると対向式ワイパーに近い印象だ。しかし、以下のように1本ワイパーもデメリットが多く、それが対向式ワイパーと同様に普及しない原因となっている。
◆メリット
・長いワイパーを使えばそれなりの払拭面積を確保できる
・単純な仕組みならコスト安
◆デメリット
・払拭する時間的な間隔が2本ワイパーよりも長いので、結果的に視界を確保しにくいケースも
・ワイパーが長いため、作動スピードを速くするとモーターに負担が掛かり、長期的にはトラブルにつながることも
・ベンツの1本ワイパーは払拭面積を稼ぐためアームが伸縮するタイプだったが、構造が複雑で生産コストが高く、修理費も非常に高い
・信号待ちなどの停止中に使うと、払拭した際の水が歩行者や自転車に掛かりやすい
・当然ながら1本しかないので、トラブルが起きると一巻の終わり
◆ ◆ ◆
ワイパーといえば、マクラーレンオートモーティブが超音波で水滴を飛ばすタイプの開発をかなり前に表明したが、現在も実用化されていない。
「現在のワイパーに変わるものが発明されたらノーベル賞モノ」と言われるように、画期的な新技術の開発は至難の業。それだけに、ワイパーの次の形が今後見られるかどうかも楽しみではある。
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