日本はもちろん、世界中で大ヒット中の映画「トップガン マーヴェリック」。なぜ、この映画がそんなに人気を集めるのか。その秘密を映画評論家の永田よしのり氏に解説してもらおう。(Ⓒ2022 Paramount Pictures. All Rights Reserved.)
前作から36年。待ちに待ったファンの期待感を満たす
当初は2019年に公開予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大などの社会情勢などを鑑み、伸びに伸びてようやく2022年公開となった本作。1986年の前作「トップガン」(世界で興行収入3億5000万ドル以上、1987年当時の日本でも興行収入トップの67億円)から実に36年。前作のファンは待ちに待たされ膨張しまくった期待感でいっぱい。その期待感は本作で十分に満たされ、世界中で大ヒット中だ。
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あらすじ────
ピート マーヴェリック” ミッチェル海軍大佐は米海軍で輝かしい戦歴を持つが、その性格から昇進を望まず現役パイロットにこだわっていた。現在は超音速ジェット機のテストパイロットを務めていたが、海軍上層部の計画停止指令を無視して機体を飛ばし、空中分解させてしまう。解雇となってもおかしくない失態だったが、彼の元同僚であるトム “アイスマン” カザンスキー海軍大将の強い要望で、海軍選りすぐりの若きパイロットたちの訓練教官として海軍航空基地に赴任することに。
3週間後には敵軍の核兵器プラント爆撃作戦が待っていたが、その飛行計画はきわめて難しいもの。ピートは若いパイロットたちの中に、かつて訓練中に亡くした相棒グースの息子であるブラッドリーを見つける。限られた時間の中、ピートは若きパイロットたちをチームとしてまとめ、困難な攻撃作戦を成功させることはできるのだろうか・・・。
クルマ&メカ好きにもたまらないマシンの数々
まあ、すでに公開中なので細かいストーリーの紹介はここまでにしよう。とにかく本作品は1986年当時「トップガン」を観て、この映画が大好きだった者たちには大満足の仕上がりになっている。それは「『トップガン』といえばこれ!」といった場面や音楽の数々が本作品でも見事に再現されているからだ。
「トップガン」ファンならば思い出すに違いない、これぞ「トップガン」という場面の数々。ケニー・ロギンスの主題歌やテーマソング、航空母艦からの戦闘機の発着シーン、夕陽をバックにした登場人物たちの姿、トム・クルーズがオートバイで疾走する場面、1980年代に流行した多くの曲・・・。36年前の雰囲気を2020年代に蘇らせながら、現在ならではの問題も組み込んでいる。ただ続編を作っただけではない、という製作者陣の思いが「トップガン」愛とともに映画には込められている。
さらにファンの胸を鷲づかみにするのは、登場する印象的なマシンの数々。ピートの乗るオートバイが前作ではカワサキ GPZ900Rだったのが、その後継マシンNinja H2になっていたり、前作で登場した女性教官のシャーロットが乗っていた愛車はポルシェ 356スピードスターだったが、今回ピートの恋人ペニーでは初代ポルシェ911になっていたり、前作で準主役的存在の戦闘機F14トムキャットは最新鋭機のF/A18E/Fスーパーホーネットに代わっていたり(でも、ここぞという場面でF14が登場する!)。いろいろな場面で「前作でも観た!」という喜びが沸き上がってくる。
青春時代に「トップガン」を映画館で観た人には、当時のいろいろな思い出が蘇ることも多いだろう。だがノスタルジックだけではない、今の世界で「トップガン」を製作したら、という姿勢もしっかりとあるのが「トップガン マーヴェリック」なのだ。
映画は究極に言ってしまえば絵空事だ。それ以上でも以下でもない。ならばエンターテインメントに徹した映画をただただ純粋に楽しむことは、映画を観る喜びのひとつではないだろうか。本作「トップガン マーヴェリック」は、まさにそうした1本であろう。日本では当時のファンから若者まで多くの観客が映画館に足を運び、2022年6月6日時点で早くも興行収入は30億円を突破している。これは2020年以降(コロナ禍以降)に公開された洋画では、最速の数字だ。
今後、この数字はまだまだ伸びるだろう。前作「トップガン」を監督した、今は亡きトニー・スコットは「トップガン マーヴェリック」の大成功をどんな思いで空の上から見ていることだろうか。想像するに、きっと親指を立てて(サムズ・アップ)喜んでいるに違いない。(文:映画評論家 永田よしのり)
■「トップガン マーヴェリック」
Ⓒ2022 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
配給:東和ピクチャーズ
監督:ジョセフ・コシンスキー
出演:トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、ヴァル・キルマー、エド・ハリス、ほか
上映時間:131分
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みんなのコメント
まさかのF14の登場はよくぞやってくれた。