一般人には決して知らされることのない複雑な事情はあるにせよ、“なんで?”と思わずにはいられない国内販売終了モデルは数知れず。ここで紹介する5つのモデルも個性が際立つ人気車だったのに……と残念でならない。
文/FK、写真/スバル、トヨタ、日産、マツダ
「なんでいなくなった!?」人気車だったはず……だよね? 忽然と姿を消したクルマたち5選
■トヨタのカムリはグローバルで大人気なのに国内での人気はいまひとつ
日本での最終型カムリは“性能”、“智能”を突きつめることで“官能”をもたらす心揺さぶる上質セダン……をコンセプトにエモーショナルで美しいデザイン、意のままの走り、上質な乗り味を実現
1980年1月にセリカの4ドアセダンとして発売が開始されたカムリ。当時は車名にセリカの名を冠していたものの、ベースはカリーナで、異形角型ヘッドライトにTの字をデザインしたフロントグリルが印象的だった。
それから約24年後の2023年12月、トヨタはカムリの国内販売を終了した。
確かに日本での人気は今ひとつだったかもしれないが、カムリは22年の長きに渡ってアメリカのセダン部門でベストセラーを獲得し続けてきたトヨタのグローバルミッドサイズセダンであり、いまなおアメリカでは販売が継続されている。
TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)に基づくエンジンとプラットフォームの一新を受け、2017年7月に登場したカムリの最終モデル。その見どころは磨き抜かれた美しいスタイリングではないだろうか。
外観のデザインはエンジンと乗員レイアウトを下げることで美しい低重心シルエットを実現。フロント周りもスリムなアッパーグリルと立体的なロワグリルを対比させて、低重心でワイドなスタンスを際立たせている。
2018年8月にはショックアブソーバーのロッドガイドブッシュ、ピストンバンド、オイルを専用開発したスポーティグレードのWSを新たに設定。カーペットライドと称される乗り心地とライントレース性を向上させ、洗練されたスタイルと応答性の高い操舵フィーリング&フラットな走りを融合させたが……。
ちなみに、一般社団法人 日本自動車販売協会連合会発表の2023年1~12月乗用車ブランド通称名別順位でカムリは8825台の50位にランクイン。
同じトヨタの86が48位(9796台)、ヴェルファイアが43位(1万3218台)だったことを考えると、悲観するほどの販売状況ではないようにも思えるが、アナタはどう思う?
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■マツダのCX-8は2年連続で国内3列シートSUV販売台数ランキング1位だったのに…
マツダCX-8
2018年と2019年の2年連続で国内3列シートSUV市場における販売台数第1位を獲得したCX-8。
大人6人(または7人)が快適に乗車できるCX-8は上質かつ洗練されたデザイン、意のままに操れる走りのよさ、優れた静粛性や乗り心地を兼ね備えたマツダの国内最上位クロスオーバーSUVとして2017年12月に登場。発売前の約3カ月で月間販売計画台数1200台の約6倍となる7362台を受注するなど好調な立ち上がりをみせた。
その人気の要因になったのは使い勝手がいい3列シートクロスオーバーSUVであることや深化した魂動デザインによる唯一無二の世界観をもつ新しいSUVデザインもさることながら、進化したクリーンディーゼルエンジンSKYACTIV-D 2.2の存在も見逃せない。
少量の燃料を多段かつ高圧で微細噴霧化して噴射することで静粛性・燃焼効率・高い環境性能を両立した急速多段燃焼を採用するとともに、段付きエッグシェイプピストン・超高応答マルチホールピエゾインジェクター・可変ジオメトリーターボチャージャーの新技術を導入。
これによって実現した3列シート車の想像を超えた力強くなめらかな走りと優れた燃費性能も大きな魅力となった。
2018年には“卓越した運動性能と効率的な室内空間”や“運転負荷の軽減と先進の予防安全技術”などが高く評価され、2018-2019日本自動車殿堂カーオブザイヤーを受賞。
その後も商品改良を重ねて熟成が進み、その都度好評を博していたCX-8だったが、2023年10月に同年12月下旬での生産終了を発表。
CX-8と同じ3列シートのクロスオーバーで後継と目されているCX-80が2024年4月に欧州で初公開され、5月から予約受注が開始となっており、日本での発売が気になっている人も多いのでは?
■スバルのレガシィB4はスポーツカー好きにはたまらない貴重なセダンだったのに……
走行性能はもとより、安全性や乗員すべてが快適な室内空間など“スバルのセダン”として欠かせない基本性能を磨き込み、それらをデザインによって表現することで質感を大幅に高めたレガシィB4の最終モデル
1998年12月に登場した3代目からBOXERと4WDの頭文字を組み合わせた“B4”の車名がセダンに与えられたレガシィ。
4WDロードスポーツをコンセプトに掲げて登場したレガシィB4は、スバル独自のコアメカニズムを採用することで走りのクォリティと操る楽しさを先代から飛躍的に向上したことが高く評価され、ステーションワゴンとともに1998-1999 RCJニューカー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。
ことB4においては、居住性・快適性・走行性能を高いレベルで融合した高剛性エアロダイナミックボディに縦置きの水平対向4気筒エンジン+左右シンメトリーのフルタイム4WDシステムを組み合わせることで、レガシィならではの優れたハンドリング性能と走行安定性を実現。
また、一部のモデルには電子制御によって前後トルク配分を瞬時に最適化するVTD-4WDシステムを搭載した新開発のスポーツシフト(E-4AT)を採用するなど見どころも満点。
加えてRS type B、ブリッツェン、RS30、リミテッドII、Sエディションといった派生モデルも人気を獲得した。そんなレガシィB4は2003年5月にフルモデルチェンジが行われたが、今度は2003-2004日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞して先代と同様に高い評価を獲得。
2005年には2.0GT spec.Bをベースとした“LEGACY tuned by STI”が、2008年にも究極のグランドツーリングカーと銘打った“S402”といったコンプリートカーも登場し、絶頂期を迎える。しかし……。
2009年5月に登場した5代目、2014年10月に登場した6代目では北米を中心とした海外市場を見据えたモデルへと進化したことが裏目に出て完全に失速。国内におけるセダン市場規模縮小も相まって、2020年にひっそりと販売が終了した。
■トヨタC-HRは2017年のSUV新車販売台数第1位を獲得したにもかかわらず……
トヨタC-HR
2014年のパリモーターショーで新世代コンパクトクロスオーバーのデザインスタディモデルとして発表されたコンセプトカーの姿カタチをそのままに、2016年12月にデビューしたC-HR。
デビュー当初の人気はすさまじく、発売1カ月後の受注台数は月間目標6000台に対して約4万8000台の好調な立ち上がりを記録した。加えて、2017年には販売台数が11万7299台となり、SUV新車販売台数第1位を獲得。
スピード感れあふれるキャビン形状やダイヤモンドをモチーフに強く絞り込んだボディなど、個性が際立つスタイリングは若者を中心に大きな支持を得たが……SUVブームがまだまだ続く状況のなか、2023年7月下旬に生産が終了した。
確かに、個性的なスタイリングを優先させたこともあって居住性や積載性といった実用面における使い勝手はライバルのコンパクトSUVに比べて難アリで、決して万人受けするクルマではなかったC-HR。
優等生然としたラインナップが大半を占めるトヨタ車のなかでC-HRは異色の存在だったことも間違いないが、TNGAによる新プラットフォームを採用した低重心パッケージ、レスポンス・リニアリティ・コンシステンシーを突き詰めた優れた走行性能、エコカー減税の免税対象となるハイブリッド車の30.2km/Lという低燃費性能など大きな魅力であった。
2019年10月に行われたマイナーチェンジでは、TOYOTA GAZOO Racingがモータースポーツ活動を通じて得た知見やノウハウを市販モデルに生かした“GR SPORT”を設定。車両本体価格も300万円前後と比較的リーズナブルだったが……。
そんなC-HRは国内販売こそ終了したものの、2023年6月に欧州で2代目が発表されている。こちらも超がつくほどのアグレッシブなスタイリングで話題となったが、日本での販売は果たして?
■日産のマーチは世界に誇るコンパクトクラスのフラッグシップだったのに…
初代から続くDNAである“フレンドリー”を受け継ぎ、さらなる運転しやすさと楽しさに加え、クラスNo.1の低燃費性能を実現したマーチの最終型4代目モデル
日本車の海外進出がそれまで以上に盛んになった1982年にデビューしたマーチ。
その初代から2022年8月に生産が終了した4代目までの全世代モデルはともに老若男女から好かれた国民的なコンパクトカーだったことは周知のとおりだが、クルマ好きやスポーツカー好きにも強烈なインパクトを残した1台だったこともまた事実だ。
1982年のデビュー当時、絶大な人気を誇っていたスーパーアイドルの近藤真彦さんをCMに起用したことで一気に知名度を高めた初代マーチでは、今もなお語り継がれるようなホットハッチが登場。
1985年にはターボモデルが、1989年にはスーパーターボと名付けられたスーパーチャージャーとターボチャージャーを組み合わせたモデルが発売されて大きな話題となった。
1992年にフルモデルチェンジを受けて2代目へと進化を果たしたが、その評価はきわめて高く、日本カー・オブ・ザ・イヤーとRCJカーオブザイヤーの2冠を達成。また、海外でのセールスも好調で、全世代を通じて最多となる約254万台の販売を記録した。
2代目では初代のようなホットなスポーツモデルの販売はなかったものの、1996年にはレトロチックな装飾を施したタンゴを、1997年に電動ソフトトップを採用したカブリオレを、2001年には無印良品ブランドでおなじみ良品計画とコラボしたMuji Car 1000など、丸みを帯びたキュートなスタイリングを活かした派生モデルが発売された。
2002年にデビューした3代目ではエンジンの高出力化に加えて専用サスペンション、エキゾーストシステムをトータルチューニングして走行性能を向上させたスポーツモデルの12SRやコンプリートカーのNISMO マーチ S-tune COMPLETEなどが登場。
最終モデルとなった4代目ではシリーズ初となるNISMOバージョンも発売になるなど、クルマ好きやスポーツカー好きの記憶に残るような爪痕を残した。
国内のEVシーンをけん引する日産だけに、今後はマーチのEVモデルが登場するのではないかという期待もあるが……。
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みんなのコメント
○○より売れているとかそんなことは別にどうでも良い事で、利益がどれだけ出ていて、それがグローバルに見てどこで儲かっているのか。
これだけが判断の基準だと思います。
その観点で見ると日本は「旨味が無い」市場だと判断されただけ。
「人気誌だったはず…」
なんて、口が裂けても言いたく無い