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かつての「ジェネレーションY」向けブランド「サイオン」を覚えているか! 個性派モデルたちを振り返る!!

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かつての「ジェネレーションY」向けブランド「サイオン」を覚えているか! 個性派モデルたちを振り返る!!

 かつて北米にはトヨタがジェネレーションY(X世代の前世代)の若年層向けに展開していたサイオンブランドがあった。すでにトヨタブランドに吸収されているのだが、一定の存在感を放ったモデルを振り返ってみたい。

文/永田恵一、写真/トヨタ

かつての「ジェネレーションY」向けブランド「サイオン」を覚えているか! 個性派モデルたちを振り返る!!

■ジェネレーションY向けの若者ブランドが「サイオン」

2007年のシカゴショーでのサイオンブース

 トヨタは現在、「トヨタ」と「レクサス」という社内ブランドに加え、クラウン、ランドクルーザー、センチュリーといった歴史や名声のあるモデルに派生車を増やし、ブランド化するという戦略を進めており、成果が現われつつある。

 そんなトヨタながら、廃止になったブランドというのもある。代表的なのが日本で異業種合同プロジェクトを展開したWillだが、Willには現在のコネクテッドカーにつながるサイファの存在など、少なからず功績もあった。

 トヨタで廃止になったブランドにおいて存在が薄かったのが、北米での展開というのもあったにせよ、「サイオン」である。

 ここではサイオンの車種を振り返りながら、サイオンが残したものを考えてみた。

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■サイオンとは?

米国でのジェネレーションY向けブランドとして誕生したのが「サイオン」だった

 サイオンがアメリカで開業した2003年当時、アメリカでは「ジェネレーションY」と呼ばれる1981~1998年生まれの世代(当時で5~22歳)、自動車業界で見ればこれからクルマを手にする層やビギナー層が、2010年に7000万人に達するという背景があった。

 一方、当時トヨタはアメリカでユーザーの高齢化や若者からの支持の低下といった課題があり、簡単に言えばアメリカでのトヨタの若者向けブランドとして加わったのがサイオンだった。

 サイオンはトヨタに対するレクサスのようなトヨタとは別のディーラーではなく、トヨタディーラー内にブースか別店舗があるという形態だった。車種は後述するように若者に向けたものが揃い、販売戦略も豊富なカスタマイズパーツの設定、広告もテレビCMよりも人が集まる場所できめ細かい対応を行うといったチャレンジを行った。

■唯一のオリジナルモデルはtCのみだったが

初代サイオンtCは2004年にデビュー。2010年に2代目に切り替わるまで販売されたカジュアルスポーティなFFクーペ

●サイオンtC

 サイオンでは唯一となるオリジナルモデル。2004年登場の初代モデルは当時のカルディナなどのプラットフォームを使ったFF車で、その意味ではセリカの後継車的な存在にも感じる。

 価格は2.4Lエンジンを搭載しながら2万ドル以下(当時のレートだと200万円以下)と安く、リアシートがフル4シーターに近い点は仲間との移動も重視したい若者向けな部分だったのかもしれない。

2011年に登場した2代目サイオンtC

 2011年登場の2代目モデルはキープコンセプトながら、プラットフォームや2.5Lとなったエンジンなど基幹部分を一新。また、2代目モデルは「ゼラス」の車名で中国や中東でも販売された。

●サイオンxA→xD

初代イストの北米仕様となるサイオンxA

 xAはサイオンの開業時からラインナップされた、日本では初代ヴィッツより車格が半分ほど上のコンパクトカーとなるイストの北米仕様で、日本仕様との違いはほとんどなかった。

 2007年登場のxAも若干ながらクロスオーバーの雰囲気があった2代目イストの北米仕様で、初代モデル同様日本仕様との違いはほとんどない。しかし、2代目イストの日本仕様に1.5Lに加え1.8Lがあったのは、「サイオンxDのついでだったのか」ということを今さらながら思い出す。

●サイオンxB

 こちらもサイオン開業時からあったモデル。2003年登場の初代モデルは日本の初代bBの北米仕様で、初代xBは日本の初代bBを基準にするとベンチシート+コラムシフトが普通の独立したシート+フロアシフト、MT設定あり、それに伴ってパーキングブレーキは足踏み式からレバーと、初代イストとxAよりは日本仕様と北米仕様の違いは大きかった。

 2007年登場の2代目モデルは日本のカローラルミオンベースで、コンセプトは近いながらも車格は向上。2代目xBは日本のカローラルミオンが1.5Lと1.8Lなのに対して2.4Lを搭載した。日本のカローラルミオンの存在感は薄かったが、2代目xBはアメリカの水に合ったモデルだったようだ。

●サイオンiQ

サイオンiQ。日本でもトヨタiQとして売られたほか、バッジ違いでアストンマーチンシグネットとしてもOEM販売された

 日本のiQの1.3Lをほぼそのまま北米仕様化し、2010年に投入。若い都市生活者向けとのことだったが、あまりにも小さいiQを北米に投入したことに少々疑問も残る。そのわりには短命に終わらず、サイオンがブランド廃止となる2016年まで販売は続いた。

●サイオンFR-S

サイオンFR-S。初代86の北米仕様としてサイオンブランドで販売された

 幻に終わったコンパクトFRのコンセプトカーS-FRと車名が紛らわしいFR-Sは、2012年に投入された初代86のアメリカ仕様。左ハンドル化と装備内容以外は日本仕様の初代86と違いはない。

●サイオンiA

 2015年に投入されたメキシコで生産されるマツダ2セダンのサイオン版。マツダは工場稼働率の維持、サイオンはラインナップ強化という思惑が一致し、マツダからサイオンへの供給が始まった。クルマ自体はマツダ2セダンと変わりないが、マツダ2に当時のトヨタ顔をつけた点には違和感が残った。

 なお、iAはサイオンブランド廃止後もトヨタブランドでヤリスiA、ヤリスセダンと車名を変え、5ドアハッチバック(つまりマツダ2)のトヨタ版も追加された。

■サイオンの終焉とサイオンが残したもの

2代目サイオンtCの発表会で

 サイオンはピークとなった2006年には約16万台を販売したが、2015年に販売は約5万6000台と低迷したこともあり、翌2016年にブランド廃止となった。サイオンで販売されたモデルの多くはブランド廃止を期にアメリカでは絶版となったが、86に車名を変えたFR-Sや前述のiAのようにトヨタブランドで販売が継続されたものもあった。

 サイオンが廃止となった理由は、サイオンを通じたトヨタブランドへの移行が大きかったようで、それには特に2010年代に入ってトヨタ車がよくなってきたことも関係しているのだろう。

 つまり、サイオンは好調だった時期に加え、長い目で見てもトヨタ車のアメリカでの拡販に貢献しており、その意味では存在感は薄かったにせよ、合格点以上の成果は残したと言えるのではないだろうか。

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