この記事をまとめると
■ヒョンデ・アイオニック5に続き、BYDアット3が登場
知れば知るほど驚異でしかない! 中国のEVメーカー「BYD」が日本を席巻する可能性
■両メーカーの日本における販売方法について解説
■フリート販売への積極的なアプローチは控えているという
BYDはディーラー網の整備を進めている
韓国ヒョンデ自動車のBEV(バッテリー電気自動車)となるアイオニック5に続き、中国比亜迪(BYD)汽車のBEV、ATTO3(アット3)が日本国内で正式発売されて話題となっている。アイオニック5がオンライン販売のみとしているのに対し、BYDはディーラー網の整備を進めており、その姿勢を“古風な販売戦略”と表現する関係者もいる。
アイオニック5はオンライン販売のみながらすでに国内で500台以上を販売しており、先日韓国ソウルを訪れた時には現地関係者も「日本で比較的好調に売れている」と喜んでいた。韓国ではすでに新車販売においてオンライン販売というものが主流になろうとしている。日本国内での販売規模も考慮してオンライン販売のみという販売スタイルをヒョンデは取ったものと見られる。日本でのターゲットは韓国に対して特別なイメージを持たず、目線がフラットであったり、日本並みかそれ以上の先進国との印象を持つ人も少なくない若年層をメインに見ていることもあり、そのような世代にもオンライン販売のみとしたほうが、より効果的と考えているのかもしれない。
一方のBYDは、母国中国でもEC(電子商取引/ネット通販など)で新車を購入するのも当たり前のようなデジタル社会となっているが、4S(新車販売、部品販売、アフターサービス、情報提供ができるディーラー/日本での一般的な新車ディーラーと同じようなもの)と呼ばれる新車ディーラー網も確立されている。人口が多く新車需要も多様なニーズがある市場なので、新車販売のスタイルもEC偏重というような状況でもなく、口コミでも新車がよく売れる市場だと聞いている。また日本がデジタル社会への対応に大きく出遅れていることも十分リサーチした上で、しっかりしたパートナーにディーラーを経営してもらい、口コミでのBYDの認知度アップも狙っているように見える。
BYDのアット3では価格設定も注目されている。税込みメーカー希望小売価格で440万円。これを高いと見るか、割安感が高いと見るかで意見がわかれている。中国はじめ新興国で生産するから安く作れるというのはもはや通用しない。ベトナムあたりでも「日本より安くものを作りたいから東南アジアで作るというのはもう過去の話。良質な生産拠点としてどこを選ぶかのフェーズに入っている」といったようなことを報じていた。
フリート販売には難しさも
タイでもBYDのアット3は販売されており、日本とほとんど価格は変わらない。そのなか、同じくタイで販売されサイズ的に同クラスといえるトヨタ・カローラクロスやホンダHR-V(日本でのヴェゼル)のHEV(ハイブリッド車)がほぼ同価格で販売されている。日本車でアット3と同クラスのBEVを開発した際に、果たして同価格帯を実現できるのかは疑問が残るところである。
ヒョンデ・アイオニック5は日本でもすでに大手タクシー会社にタクシー車両として納入していたりする。BYDアット3もタクシー向けフリート販売を考えているのかと事情通に聞くと、「フリート販売向けには台当たり400万円を切る価格設定にしていると聞きます」とのこと。法人タクシー車両としては東京都内ではすでに主流となっているLPガスハイブリッド車トヨタJPNタクシーのメーカー希望小売価格は333万8500円から356万4000円となっており、「タクシー事業者としてはアット3で400万円を切れば、車両導入メリットは高い」と事情通は語っている。
ただフリート販売において、ヒョンデやBYDから「買ってください」といったアプローチでの動きは行わず、あくまで「使いたい」と事業者側から話があれば販売するようである。これだけ聞くと、「高飛車だな」と思われる人もいるかもしれないが、そこはスタンスが異なるようだ。「仮に“買ってください”と売り込んで、実際使っている時に故障でも起きれば、日本の世の中には韓国や中国に対してことさら感情的になる人が多くいて、“それ見たことか”というバッシングも起きかねないので、あくまで事業者個々の自主判断で導入を決めてもらうようにしているようです」とは事情通。
日本メーカーのBEVへの取り組みが遅々として進んでいないように見えて久しいが、乗用車よりも商用車のほうが状況は深刻で、すでに日本メーカーからの商用BEVの積極的なラインアップを待てない状況にあると聞く。ただ世論や中国に対する、ある種の不安(クルマ以外でも製品に何かを仕込んでいるのではないかと言うもの)を見ると、とくに「それじゃ中国メーカー車で」と安易に選択することもできないのも事実。
四面楚歌のように見える日本のBEV普及をスムースに進めるには、やはり日本メーカーに、遅れを取り戻すようなペースで頑張ってもらうしかないようだ。
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