自動車業界は、カーボンニュートラル、自動運転や、CASEなど大きな変革の時代を迎えている。フォードT型の大量生産方式から100年以上たった今、内熱機関はもちろんのこと、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)が誕生した。
いまもなお、各メーカーがしのぎを削り、新たなクルマ、新技術を開発し続けている。
今までになかった技術やコンセプトが日本から!! 自動車史に名を残す革新的なクルマたち
そこで本稿では、日本車に絞り、「革命」、「維新」を遂げたクルマやエンジンなどの技術を紹介。どこが偉業だったのか、解説していく。日本から生まれたクルマたちが織り成す歴史の一片をお届け。
文/御堀直嗣、写真/HONDA、TOYOTA、NISSAN、MITSUBISHI、ISUZU、MAZDA
1970年の排出ガス規制に最初に成果をあげたホンダのCVCC
実現不可能と言われた排ガス規制(マスキー法)を世界で最初にクリアしたシビックCVCC
革命とか維新とか、その意味は従来に比べ新たになることだが、多少の差がある。革命とは、抜本的に改まることが短期間に行われることだ。維新とは、すべてが新しくなることをいう。
自動車技術において、革命と維新を明確に意味づけることが難しい場合もある。1886年にガソリンエンジン自動車がカール・ベンツによって発明されて以降、そこから数十年の間に、進化のための発案はさまざまにあったからだ。ただし、それが実用化されたかどうかはまた別である。
そうしたなかで、日本車における革命や維新といった動きはどうであっただろう。
日本はもちろん、世界を震撼させたのは、1970年の排出ガス規制だ。これに最初に成果をあげたのが、ホンダのCVCC(複合渦流燃焼調速方式)であり、この技術を採用したガソリンエンジンを搭載したシビックは、自動車史に名を残す一台だろう。
CVCCの原理は、かつてのディーゼルエンジンで使われた副燃焼室のガソリンエンジンへの応用であり、通常の燃焼室と別に小さな副燃焼室をシリンダーヘッドに設け、そこでガソリンの濃い混合気に点火プラグで着火し、その火炎伝播を利用して主燃焼室の薄い混合気を燃やす考えである。
これによって、全体的には少ないガソリン使用量でクルマを走らせることになり、排出ガスの量を根本から減らし、排出される有害物質を少なくする。とはいえ、少ないガソリンで走らせるので、動力性能はある程度落ちざるをえない。CVCCを採用したシビックにはじめて乗ったとき、加速の物足りなさに愕然としたものだ。
のちに、排出ガスを後処理する考えで、三元触媒が発明・実用化されたことで、今日に続く排出ガス浄化が進む。だが、CVCCの考えは、希薄燃焼の実現という観点で、現代の燃費向上につながっている。後処理はいまなお不可欠だが、そもそもエンジンでガソリンを燃やす原点から解決策を見出さなければならないとしたのが本田宗一郎の考えであり、それがいまにつながっている。
トヨタはハイブリッド車、日産・三菱は電気自動車を世界に先駆け実用化!!
環境性能のなかでも燃費に的を絞り、大きく躍進させたのが、ハイブリッド車(HV)の誕生だ。1997年の初代プリウスがこれを実現した。開発目標は、ガソリンエンジン車の半分のガソリンで走る、つまり燃費性能を2倍にすることだった。
ガソリンエンジンと電気モーターを併用することで、エンジンが燃費を悪化させる発進と、加速で、モーターが駆動力を補助する機構である。逆に、エンジンの燃費がよい一定速度での走りでは、バッテリーに充電する。減速でも、充電を行い、次のモーター駆動に備えて電力をバッテリーに蓄える。これは、モーターと発電機が同じ機構であることで可能になる。
エンジンとモーターの得意な面を有効活用したのがトヨタのハイブリッド方式であり、それには動力分割機構と緻密な電子制御が不可欠だった。いっぽうで、エンジンのほかに、モーターやバッテリーなど追加部品があるため、原価が高くつく難点があった。
そこで、主に欧州の自動車メーカーは、HVに疑念を示した。そしてディーゼルターボエンジンで燃費向上に臨んだが、結局、ディーゼル排出ガス偽装問題を起こし、ハイブリッド化、電気自動車(EV)化へ大きく転換することになった。
日産は、HVとは別に電気自動車(EV)の実用化へ動いた。それが2010年の初代リーフ誕生につながる。
1990年代、トヨタはHVの早期の実用化を視野に、ニッケル水素バッテリーの実用化を優先した。いっぽうの日産は、EVを視野にリチウムイオンバッテリーに集中し、当初はソニーと、次にNECと共同開発することで、自社での生産に漕ぎつけた。世界的にもまれなラミネート型リチウムイオンバッテリーを量産し、リーフの市販へつなげたのである。
リーフの1年前に、三菱自動車工業はi-MiEVを発売した。日産と同様に、リチウムイオンバッテリーの可能性を追求し続け、世界初となるEVの市販が成ったのである。しかし、リチウムイオンバッテリーの生産はGSユアサに依存する体制であった。軽自動車で450万円相当という車両価格により、販売で苦戦した。それでもi-MiEVの価値は欧州でも認められ、プジョーやシトロエンがOEM導入した。
日産も三菱自も、EV販売は当初の想定を果たせずにいたが、それでも日産はリーフで世界累計60万台を販売した。その知見が、のちのEVやHVのe-Powerに活かされている。また、日産と三菱自の10年を超えるEV販売が、最新のサクラやeKクロスEVの、こなれた価格での販売に結び付いた。
SUVブームのきっかけはビッグホーンやパジェロから
本格的な悪路走破性を有しながらも、日常使いでも乗りやすいモデルとして登場した初代パジェロ
今日のSUV(スポーツ多目的車)人気の発端となるのは、トヨタ・ハリアーの誕生からといえる。前輪駆動(FWD)の4ドアセダンであるカムリを基に、4輪駆動車の外観を組み合わせた新商品の誕生だ。
しかし、そこに至る前の段階、日本では1980年代初頭に、いすゞビッグホーンや三菱パジェロといった4輪駆動(4WD)車が一世を風靡した時代があった。
それまで、4WD車といえば、米国のジープに代表されるような悪路走破に長けた車種という概念があった。三菱自動車工業も、米国ウイリス・オーバーランド社からのノックダウン生産で三菱ジープを製造してきた。
しかし、ビッグホーンやパジェロは、走行性能はジープなどに劣らないと同時に、乗り心地は乗用車に近い快適さを備えた。それでも、現在のSUVに比べれば武骨な印象はあったが、悪路走破の実用性重視のジープなどに比べれば、はるかに優れた快適性を備えていた。そして街にはそうしたレクリエイショナル・ヴィークル(RV)が溢れ、スキーやキャンプなどへ出かける際のあこがれのクルマとなったのである。
SUVはそこからさらに、乗用車的な快適性を高め、逆に悪路走破性は、ある水準は保っても二の次の要件になった。たとえば前輪駆動(FWD)のSUVも車種構成に加えられるほどだ。またSUVの人気は、ポルシェなどスポーツカーメーカーにも影響を及ぼした。そのようにSUVという商品性は、商品性に幅を持つようになった。
それでも、4WD車という悪路走破の原点から、多様な商品性を引き出すきっかけとなったのは、ビッグホーンやパジェロではないかと思う。
マツダが社運を賭けて実用化したロータリーエンジン
ドイツで生まれたヴァンケル型ロータリーエンジンは、NSU(今日のアウディにつながる)によって実用化された。市販もされたが、大量生産されるまでには至らず手を引いている。そして、社運をかけ実用化と量産化へ向け開発に力を注いだのが日本のマツダだった。
コスモスポーツを経て、ロータリークーペ、ルーチェ、カペラ、サバンナといった車種へ展開し、10Aにはじまった2ローターエンジンから順次排気量を増やし、高出力化を行い、最終的には3ローターの20B型へ至る。3ローターエンジンを搭載したのは、ユーノスコスモだった。
レースでは、1991年に4ローターのエンジンを搭載したマツダ787が、フランスのル・マン24時間レースで日本の自動車メーカーとして初めて勝利を収め、歴史に名を残すことになった。
いっぽう、ロータリーエンジンは、燃焼室形状がレシプロエンジンの円形と異なり長方形になることで、燃焼効率が悪く、燃費で苦戦してきた。RX-8での搭載を最後に、マツダのエンジンはSKYACTIVに譲るのである。
ロータリーエンジンは、燃焼温度が低いことにより、水素エンジンには適しているといわれた。また、EVの走行距離を延ばす発電機として、レンジエクステンダーの動力に活かせる可能性を持つ。MX-30のEVに追加搭載される計画である。ロータリーエンジンは、レシプロエンジンのような上下運動がないため、静かで滑らかな走行が特徴のEVに利用しても、振動や騒音を損なわずに済むことが期待されている。
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みんなのコメント
燃費なんて良くないし良く壊れたw
それでもトヨタ信者が挙って買ったお陰で今のプリウスがあるw