現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > こんなクルマがほかにあるか? 小型車に革命をもたらした「ローバーミニ」

ここから本文です

こんなクルマがほかにあるか? 小型車に革命をもたらした「ローバーミニ」

掲載 16
こんなクルマがほかにあるか? 小型車に革命をもたらした「ローバーミニ」

ローバーミニには今も魅了される!


岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第197回

価格は31億円!? 「ロールス・ロイス」が製造した究極のフルオーダーモデルとは?


ローバーミニ(初代ミニ)は1959年に生まれた。僕が19才の時だ。そして2000年、、僕が60才になった時まで、一度もモデルチェンジすることなく生産され続けた。

もちろん、マイナーチェンジはあったし、進化も続けた。しかし、移り変わりの激しい時代に、基本を変えず41年間も生き続け、加えて、多くの人たちに愛され続けたのだから素晴らしい。

いや「愛され続けた」のは2000年までではない。生産が終了してから22年経った今でもなお、多くから愛され続けている。

それも、ガレージの奥に置かれ、大切に保護されているといった形でではない。日々を楽しく過ごす相棒として愛されている、、そんな形が少なくない。

僕の友人も1992年のクーパー1.3 i を持っているが、日常の足として使っている。メルセデスベンツ Cクラス ステーションワゴンとの2台持ちだが、素敵なコンビネーションだ。

軽井沢に別荘を持っていて、夏はほとんど東京にいないが、軽井沢での日々の足として重宝しているようだ。

使い方も「旧いクルマを大切に、、」といった節はまったくみえない。「なにも気にせず使いっぱなし」のように見える。


わが家に遊びに来る時はたいていミニで来る。その理由を聞いたことはないが、ミニで来ると僕が喜ぶと思っているからだろう。

たしかに、ミニで来てくれるとうれしい。ミニの音が聞こえると、僕は反射的に駐車スペースまで迎えに出て行く。

そして、ミニの周りを回りながらおしゃべりをする。他愛のないおしゃべりなのだが、これが楽しい。

僕が最新のEVに乗っているのを指して、彼は「さすが岡崎さんは進んでる!」という。でも、ローバーミニを前にソワソワしている僕を見て、なんと思っているのだろうか。

もし問われたら、「新しかろうが旧かろうが、いいものはいい。好きなものは好きなんだよ!」と答えるしかない。

しばらく「ミニトーク」を楽しんだ後、彼は必ずキーを差し出す。僕も遠慮せずキーを受け取る。

エンジンはスッとかかる。、、が、クラッチは重く、ミートポイントも狭い。この種のクルマを知らない人が乗ったら、エンストを繰り返してしまうかもしれない。

足がヤワになっている人が渋滞にはまったら、、ちょっと大変だろう。彼は定義上では後期高齢者だが、ゴルフが大好きな健脚の持ち主だから、なんとも思っていないだろう。

クーパー 1.3 i の排気量は1271cc。62hp/5700rpm、9.6kgm3900rpmのパワー / トルクを引き出す。加えて、スムースにトップエンドまで回るし、引っ張るのが楽しいエンジンでもある。

4速MTとのコンビネーションもよく、690kgの重量を軽快に引っ張る。タイム的にはさほど速くはないだろうが、回転感と伸び感と音がいい。なので、気持ちがいいし楽しい。

身のこなしもキビキビ、、とにかく、街乗り領域は楽しい。ふつうに運転しているだけでも、なんとなく心が弾んでくる。

ワインディングロードを追い込んだ時の挙動はわからない。だが、昔、兄が持っていたクーパー1275Sの走りを重ねて想像すると、、、ある程度のドライビングスキルがなければ持て余すかもしれない。

もちろん、友人の1.3 i でそれを試す気はない。でも、乗っているとムズムズしてくる。半世紀以上前、1275Sで、兄や走り屋仲間と箱根を攻めまくった記憶が蘇ってくる。

それにしても、、1959年に誕生して、1度もモデルチェンジ(フルモデルチェンジ)しなかったクルマが、ステアリングを握る人を今なお、これほど楽しくワクワクさせる、、素晴らしいとしか言いようがない。

ミニクーパー ブームは、1964年、モンテカルロ ラリーを初制覇した頃から始まった。そして、1275Sのデビューが、一気に熱気を押し上げた。

当時のわが家には連日クルマ好きが集まっていたが、その中からも1275Sのオーナーが3人誕生した。トヨタのワークスチーム入りを果たした高橋利明、若き日の松田芳穂(世界的自動車コレクター)、そして義兄(家内の兄)の3人だ。

ミニクーパー 1275Sはヤンチャでジャジャ馬だった。下手な運転でコーナーを追い込んだりすると、タップリ冷や汗をかかされた。

まずは強烈なアンダーステアに見舞われる。そこで慌ててアクセルを戻すと今度は強烈なタックインが、、。後輪が軽く浮き上がるくらいならいいが、それを越すと転倒の危険が待ち受けている。

短期間で閉じてしまったのは残念だが、タイトで難しいコーナーが連続する船橋サーキットでは、、ヒヤリの3輪走行、ウァーッの2輪走行、ヤッターの転倒を何度も見た。

でも、そんな光景が僕にはすごく刺激的だったし魅力的だった。そして、とても小さいクルマなのに、たいていの大きなクルマより強烈な存在感を放つことに強く惹かれた。

英国では、「ミニがファーストカーでRRがセカンドカー」だとアピールする人を雑誌等でたびたび見たし、エリザベス女王もミニのオーナーだったとのこと。

ローバーミニは、庶民、中間層、富裕層、富豪、そして女王までを惹きつけ虜にしてしまう、、、そんな、規格外、想像外の引力を持っていたということに他ならない。

こんなクルマが他にあるだろうか。僕には思い当たらない。

ローバーミニが小型車の世界に多大な影響を与えたことも忘れてはならない。いや「多大な影響」、、ではとても言葉は足りない。そう「革命をもたらした」というのが妥当な言葉だろう。

ミニの誕生と成功は、その後の小型車を一気に「エンジン横置きの前輪駆動」へと転換させた。そしてその波は、中型車から大型車にまで波及していったのは知っての通りだ。

ローバーミニの成功は、合理性 / 経済性に秀でていたからだけではない。ローバーミニの成功の理由として絶対見過ごせないのは、世界中の多くから「愛されたこと」にもある。

そして、愛された理由の最上位に挙げられるのが「ルックス」だ。

「どんなに才能あるデザイナーをもってしても、ミニをより魅力的な姿に変えることはできない」と言われるが、僕も無条件で頷く。

ある意味「究極の合理的デザイン」ともいえるが、それにもかかわらず「無表情でも無機質でもない」。ミニは、愛らしく豊かな表情を持っている。明るくほのぼのとしたキャラクターを演じるのも得意。そしてなにより、人々をハッピーにする。

そんなことを強烈に印象付けられたイベントがある。1989年、シルバーストーン サーキットで行われたミニ30歳の誕生パーティーだ。

集まったのは2.5万台のミニと15万人のミニファン。僕はただ圧倒されるばかりだった。

ビカビカのミニからサビサビのミニまで、結婚式のパーティーに出るような身なりの人から、エプロンを付けたままキッチンを飛び出してきたような人まで、、、ミニがいかに多くの人々、多層な人々から愛されているかを、改めて思い知らされた。

パーティーには様々なプログラムが用意されていた。、、が、集まった人々の多くは、セレモニーやアトラクションとは無関係に、自由に気ままにパーティーを楽しんでいた。

解放された広大な芝生の駐車場では、いろいろなパフォーマンスが演じられ、家族や友人たちがピクニック気分を楽しみ、子供達が元気に走り回っていた。

「ミニ蚤の市」も最高に楽しかった。サビついたネジ、潰れかけたようなマフラー、ひんまがったホイール、、、ありとあらゆるものが並んでいた。ミニファンなら、一つや二つの宝物は必ず見つかるはずだ。

僕の見つけた宝物は、雪のチュリニ峠?を走る「小さなブロンズのミニ」。台座には、「MINI COOPER 1st 1967 MONTE CARLO RALLY」と刻まれたプレートが。ゼッケンナンバーはついていないが、僕は大好きなアルトーネンのミニと決めつけている。

1989年のあの日、広大なシルバーストーンはハッピーな風、、熱風!? に包まれていた。

ローバーミニが誕生して63年。世界の様々な人たちと無数の物語を紡いできた。愛らしさと類い稀な個性によって紡ぎ出されてきた物語は永遠のもの、、僕にはそう思える。

● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト


1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

こちらの記事も如何ですか?
● RX-7とはいかに素晴らしいクルマだったのか?


Club LEONの最新情報から人気・最新記事などお得な情報をお届け! 

LEON.JP公式ニュースレター

こんな記事も読まれています

いやこれは凄いわ……[EV]の歴史に残る一台が韓国から出ている件
いやこれは凄いわ……[EV]の歴史に残る一台が韓国から出ている件
ベストカーWeb
軽自動車ってのが凄すぎる…! 世界に誇れる自動車と言えば[スズキ ジムニー]でしょ! 
軽自動車ってのが凄すぎる…! 世界に誇れる自動車と言えば[スズキ ジムニー]でしょ! 
ベストカーWeb
レッドブル&HRC密着:突貫工事でリヤウイングを修正。マシン性能を出し切っての予選5番手にフェルスタッペンも満足
レッドブル&HRC密着:突貫工事でリヤウイングを修正。マシン性能を出し切っての予選5番手にフェルスタッペンも満足
AUTOSPORT web
ポールのラッセル「壁に接触、望みが消えたかと思った」マシンの速さについては「理由が分からない」/F1第22戦
ポールのラッセル「壁に接触、望みが消えたかと思った」マシンの速さについては「理由が分からない」/F1第22戦
AUTOSPORT web
次期デリカD5はこうなってほしい!! 唯一無二の価値を持つSUVミニバンへの期待
次期デリカD5はこうなってほしい!! 唯一無二の価値を持つSUVミニバンへの期待
ベストカーWeb
フェルスタッペン予選5番手「ベガス用リヤウイングを作らないという方針がハンデに」タイトルには有利な位置を確保
フェルスタッペン予選5番手「ベガス用リヤウイングを作らないという方針がハンデに」タイトルには有利な位置を確保
AUTOSPORT web
佐藤万璃音、2025年もユナイテッド・オートスポーツからWEC世界耐久選手権にフル参戦
佐藤万璃音、2025年もユナイテッド・オートスポーツからWEC世界耐久選手権にフル参戦
AUTOSPORT web
やっぱたまらんなV型エンジン!! [スカイラインNISMO]とレクサス[IS500]の[パンチ力]にひれ伏した件
やっぱたまらんなV型エンジン!! [スカイラインNISMO]とレクサス[IS500]の[パンチ力]にひれ伏した件
ベストカーWeb
【角田裕毅F1第22戦展望】ファクトリーと現場の連携で活きたレッドブル製リヤサスペンション。改善の継続が7番手に繋がる
【角田裕毅F1第22戦展望】ファクトリーと現場の連携で活きたレッドブル製リヤサスペンション。改善の継続が7番手に繋がる
AUTOSPORT web
エバンスとの実質的な一騎打ちもタナクはトップ譲らず。ヌービルは7番手に挽回【ラリージャパン デイ3】
エバンスとの実質的な一騎打ちもタナクはトップ譲らず。ヌービルは7番手に挽回【ラリージャパン デイ3】
AUTOSPORT web
メルセデス・ベンツCLE 詳細データテスト 快適で上質な走りが身上 動力性能と燃費効率はほどほど
メルセデス・ベンツCLE 詳細データテスト 快適で上質な走りが身上 動力性能と燃費効率はほどほど
AUTOCAR JAPAN
WRCラリージャパンSS12恵那での車両進入事案について実行委員会が声明。被害届を提出へ
WRCラリージャパンSS12恵那での車両進入事案について実行委員会が声明。被害届を提出へ
AUTOSPORT web
2024年も記録保持中!? カローラ ロードスター…… ギネスブックに登録された「日本のクルマの世界一」【10年前の再録記事プレイバック】
2024年も記録保持中!? カローラ ロードスター…… ギネスブックに登録された「日本のクルマの世界一」【10年前の再録記事プレイバック】
ベストカーWeb
80年代バブル期に日本で人気だったMG「ミジェット」に試乗! 英国ライトウェイトスポーツの代表格はいまもビギナーにオススメです【旧車ソムリエ】
80年代バブル期に日本で人気だったMG「ミジェット」に試乗! 英国ライトウェイトスポーツの代表格はいまもビギナーにオススメです【旧車ソムリエ】
Auto Messe Web
【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP予選
【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP予選
AUTOSPORT web
角田裕毅が予選7番手「大満足。アップグレードへの理解が改善につながった」努力が報われたとチームも喜ぶ/F1第22戦
角田裕毅が予選7番手「大満足。アップグレードへの理解が改善につながった」努力が報われたとチームも喜ぶ/F1第22戦
AUTOSPORT web
勝田貴元、木にスピンヒットも間一髪「メンタル的に難しい一日。明日はタイトル獲得を最優先」/ラリージャパン デイ3
勝田貴元、木にスピンヒットも間一髪「メンタル的に難しい一日。明日はタイトル獲得を最優先」/ラリージャパン デイ3
AUTOSPORT web
クラッシュで50Gを超える衝撃を受けたコラピント。決勝レースの出場可否は再検査後に判断へ/F1第22戦
クラッシュで50Gを超える衝撃を受けたコラピント。決勝レースの出場可否は再検査後に判断へ/F1第22戦
AUTOSPORT web

みんなのコメント

16件
  • 初代ミニがローバー・ミニを名乗るのは、誕生からずいぶんと後のこと。
    ブリティッシュ・モーターから発売された当初はオースチン・ミニやモーリス・ミニ・マイナー。
    ブリティッシュ・モーターがレイランドと統合してブリティッシュ・レイランドになり、さらにブリティッシュ・レイランドがブランドをローバーに統一したことによってローバー・ミニにになった。
  • ミニがここまで延命できたのは、日本のおかげ。
    もっと言うと、ミニ丸山の社長 丸山和夫さんのおかげと言っていい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

178.9209.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

79.0495.0万円

中古車を検索
ミニの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

178.9209.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

79.0495.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村