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「怪物」の異名を持つ衝撃の姿 アルファ・ロメオRZ(2) エンターテインメント性は歴代1番

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「怪物」の異名を持つ衝撃の姿 アルファ・ロメオRZ(2) エンターテインメント性は歴代1番

衝撃的で目を逸らせないような存在感

アルファ・ロメオRZでは、上部のスリットが省かれたボンネットが与えられ、サイドシルのデザインを僅かに変更。フロントポイラーの形状も異なり、下辺が持ち上げられている。フロントの低さは、SZの悩みの1つになっていた。

【画像】「怪物」の異名を持つ衝撃の姿 アルファ・ロメオSZ/RZ ブレラと8C、4Cも 全120枚

生産数は、当初500台が計画されていたものの、程なく350台へ削減。しかし市場の反応は鈍いままで、1993年までにラインオフしたのは242台だった。1994年に追加で32台が生産されているものの、予定には届いていない。

英国では、RZの正式販売はなかった。それでも、並行輸入され少なくない数が存在している。今回のイエローの1台も、それだ。

シルエットは、クーペとスパイダーで好みがわかれるだろう。クーペのSZは当初のコンセプトに純粋。RZは、ダブルバブル・ルーフを彷彿とさせるリアデッキなど、ザガートらしいと評価することができる。筆者はどちらも好きだが。

RZを離れた場所から眺めると、2024年でも不足なく衝撃的。イエローという鮮烈なカラーも相まって、他のモデルと見間違えることはない。純粋に美しいとは表現できないかもしれないが、目を逸らせないような存在感がある。

ソフトトップは、リアヒンジのトランクリッド内へ美しく折りたたまれる。テールライトはスモーク処理され、四角いヘッドライトは片側に3灯。フロントガラスはSZより低く、ボンネットの後端はワイパーへ当たる気流を考慮し、跳ね上がっている。

ダイレクトに鑑賞できるブッソ・ユニット

ドアを開きシートへ腰を下ろすと、ベルトラインはドライバーの肩の辺り。車内はSZより豪華に仕立てられている。ホワイトの文字盤にブラックの文字があしらわれたメーターが、グレーのパネルに並ぶ。雰囲気はイタリアンだ。

ダッシュボードやセンターコンソールは、レザー張り。ただし、フィット感はさほど高くない。クーペのSZではシート後方へ荷室が備わるが、RZはバルクヘッドで仕切られている。小さなパネルを開くと、その奥の収納へアクセスできる。

人間工学的には、不完全といわざるを得ない。平均的な身長のドライバーでも、ロールバーを兼ねたフロントガラス上端のフレームは、視界にかかる。

走り出せば、喜びに満ちている。アルファ・ロメオ75だけでなく、GTV6などとも共有するオールアルミ製のV6自然吸気エンジンは、ジュゼッペ・ブッソ氏による設計。スパイダーでは、芳醇なサウンドをダイレクトに鑑賞できる。

マン島TTレースで走るコースと、ほぼ同じルートを運転する。回転数を高めない限りうるさくないが、間違いなくソウルフル。車重はSZより100kgほど多く、1356kgある。
圧倒されるほどの加速力ではないが、興奮を誘う。

アルファ・ロメオ75譲りのトランスアクスルは、増えた車重を想定しギア比がショートに改められているが、最高出力は210psと驚くほどではない。かつて、0-96km/h加速は7.0秒で、230km/hの最高速度が主張されたが、本当に届くのだろうか。

親しみやすい本物のスポーツカー

RZの真価は、コーナーで現れる。SZの最大の武器は、シャープな操縦性とグリップ力だった。それは、RZでも受け継がれている。

コニ社製のダンパーは、手元で車高を調整可能。1番低くすると乗り心地は硬めになるとはいえ、路面の凹凸で手荒い衝撃に襲われることはない。落ち着いていて、フワフワと揺れることもない。

マン島自動車博物館からお借りした貴重な車両だが、活発なRZへ深く惹き込まれる。加減速時のピッチングはほぼ皆無。ワダチによるワンダリングもない。シャシーは至ってニュートラル。ステアリングホイールは、コミュニケーション力に長けている。

過去の経験から、オーバーステアへ持ち込むには、相当まくし立てる必要があるはず。しかし、そんなスタイルはRZに似合わない。

初めはスローに感じられたステアリングだが、ペースが速まれば充分クイック。パワーアシストが控えめだったに過ぎないようだ。ヘアピンカーブでは、僅かにアンダーステア傾向にあるが。

ピレリ・タイヤを鳴かすことなく、フルパワーを展開できる。不思議なほど、圧倒感が薄い。いつまでも運転し続けたいと思える。

公道で許容しきれないほど、パワーがあるわけでもない。硬すぎるサスペンションが、乗り心地や楽しさを削ぐこともない。本物のスポーツカーとして、RZは親しみやすい。

歴代1番のエンターテインメント性

人影のない公道で、眩しい陽光と乾いた風を浴びながら、V6エンジンのサウンドに浸る。クルマの素晴らしさを、再認識できる。身のこなしに、クーペのSZへ並ぶ鋭さや正確さはないかもしれないが、現実世界での差は殆どないといっていい。

エンターテインメント性で評価すれば、RZ以上のアルファ・ロメオは登場していないように思う。8Cや4C、ジュリア・クアドリフォリオも、これを超えてはいないだろう。

ソフトトップを閉めると、視界は著しく悪くなる。塗料がのりにくいメタクリル樹脂だから、ボディには気泡が生じがち。リアの荷室は、グローブボックス程度の大きさしかない。それでも、運転は望外に楽しい。

怪物の異名を持つRZだが、決してそんなことはない。ずっと一緒に時間を過ごしたい、アルファ・ロメオだ。

協力:マン島自動車博物館
撮影:リチャード・ドレッジ(Richard Dredge)

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