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登場が早すぎたか!? 今の時代なら大人気になれた!? 惜しまれる名車ビッグホーンという存在

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登場が早すぎたか!? 今の時代なら大人気になれた!? 惜しまれる名車ビッグホーンという存在

 かつては「ベレット」や「117クーペ」といったモデルから、SUVでは「ビックホーン」や「ミュー」をラインナップしていた「いすゞ」。しかし、1993年にはSUVを除く乗用車の自社開発・生産から撤退、2002年には国内での乗用車製造・販売を中止、完全撤退をしている。

 とはいえ、いまだ新興国向けには乗用車(ピックアップトラック)を製造しており、マツダにもOEM供給を行っている。日本のファンのなかには、技術は健在のいすゞの復活を期待している人は多いのではないだろうか。

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 今回はそんないすゞがかつて販売し、多くの日本のファンに愛された名車「ビッグホーン」をピックアップ。いすゞのモデルたちとともにその歴史と横顔を振り返る。

文/片岡英明
写真/ISUZU

【画像ギャラリー】いすゞが誇ったフラッグシップオフロードSUV「ビッグホーン」の歴史をプレイバック!!

■昭和の自動車史に残る傑作「ビッグホーン」

 世界中でSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)が人気となっている。その火付け役となったのは日本のSUVだ。早い時期から4WDシステムの優位性に注目し、本格派のオフロードSUVを数多く送り込んでいた。

 今はトラックとバスの専門メーカーと思われているいすゞ自動車も、昭和の時代から自動車史に残る傑作SUVを多く生み出している。そのなかで最高傑作と言え、海外でも高く評価されたのが「ビッグホーン」だ。

 いすゞは戦前から自動車の生産に携わり、トラックやディーゼルエンジンの開発においては卓越した技術力を見せつけた。戦後間もなくにイギリスのルーツグループと技術提携を結び、「ヒルマン・ミンクス」のノックダウン生産を開始。トヨタ、日産とともに自動車御三家のひとつに数えられるようになった。

 1960年代になると提携業務を通して得られた技術と経験を駆使して「ベレル」と「ベレット」を設計し、発売している。

 いすゞは、当時としては珍しいヨーロッパ風味のクルマづくりを売りにし、ベレットはハンドリングも軽やかだった。1968年秋に発売した「117クーペ」はデザインの分野でも新境地を切り開いている。1971年にゼネラルモーターズ(GM)と資本提携を結び、ベレットの後継として送り出した「ジェミニ」はスポーティな走りを売りにした。また、時代に先駆けてディーゼルエンジン搭載車も設定する。

 1981年、117クーペの後継となる「ピアッツァ」を市場に投入。この年には本格派のクロスカントリー4WD「ビッグホーン」を発売した。

■ライバルほどの大ヒットとはならなかったがSUV市場に種をまく

 いすゞ製SUVの歴史は古い。SUVルックの「ユニキャブ」を発売したのは1967年夏だ。デザインはジープ風だが、メカニズムはベレットの商用車版として開発された小型トラックの「ワスプ」のものを使っている。だから駆動方式は4WDではなく後輪駆動のFRだ。解釈によっては、今につながるクロスオーバーSUVの先駆車と言えなくもない。チャレンジ精神の旺盛ないすゞらしい新感覚のマルチパーパスRVだった。

 この後継が小型ピックアップトラックの「ファスター」だ。いすゞの4ドアセダン「フローリアン」をベースに誕生したトラックだからFR車だったが、1978年に「ファスターロデオ」を名乗ったパートタイム4WDを追加設定している。

 4WDシステムは、ハイとローの2速の副変速機を備えた本格的なものだった。ファスターシリーズは1980年秋に初めてのモデルチェンジを実施し、2代目となっている。

 このロデオ4WDのシャシーとパワーユニット、4WDシステムを用い、レンジローバー風の力強いデザインのSUVに仕立てたのが「ロデオ・ビッグホーン」だ。1981年9月に登場したときは4ナンバー登録のバンタイプだけで、2ドアのショートボディとロングボディが用意された。エンジンは117クーペから譲り受けた2.2Lの直列4気筒ディーゼルと2LのOHCガソリンエンジンがある。

アウトドアライフを楽しむ人々が増加傾向にあった1981年、そうした時代背景にマッチした新感覚の多目的4輪駆動車として「ロデオ・ビッグホーン」が発売された

 副変速機付きの4WDで、タイヤも悪路の走破性に優れた大径タイヤを履いていた。サスペンションもダブルウイッシュボーン/トーションバーにリーフスプリングのリジッドアクするだからオフロードでは非凡な走りを見せている。だが、最初はジャーナリストから「プアマンズ・レンジローバー」と揶揄され、売れ行きも今一歩だった。

 元気になるのは1984年1月にワゴンを投入してからだ。乗用車登録のワゴンは2.2Lのディーゼルターボを積み、オフロードから高速道路まで、余裕ある走りを披露した。リアシートの両側には大きなアームレストが装備され、左右のシートを畳めば広くてフラットな荷室スペースが生まれる。観音開きのバックドアも使い勝手がいい。1985年6月の改良でパワーステアリングが装備され、その直後にはロングボディを乗降性に優れた4ドアとしている。

 ブレイクするのは1987年だ。ヘッドライトを角型とし、秋にスポーティな「イルムシャー」と「エクスポート」を設定した。イルムシャーは、ドイツの名門チューナーがサスペンションをファインチューニングし、レカロのスポーツシートやモモ製の本革巻きステアリングを標準装備する。2.8ℓのディーゼルエンジンも加わった。

ドイツ イルムシャー社との共同開発によるサスペンションやヨーロッパの高品位ブランドを採用したスポーティーグレード「イルムシャー仕様」

 1988年にはオーバーフェンダーを装着し、ワイドタイヤを履いた「イルムシャーR」を設定している。全幅は1700mmを超えているが、登録は意外にも1ナンバーの普通貨物だった。

 業務提携していたスバルでもビッグホーンを扱うようになり、この直後にワゴン登録のイルムシャーRとSを送り込んでいる。

 エンジンは2.8Lのインタークーラー付きディーゼルターボを搭載した。また、ラグジュアリー仕様として登場したエクスポートは、1990年1月に「スペシャルエディション・ハンドリング・バイ・ロータス」へと進化する。2LのガソリンエンジンやイルムシャーRにロングボディのワゴンが加わるのも、この時だ。

オンロードでの操縦安定性と乗り心地を向上させ、高級感を向上させた「スペシャルエディション・ハンドリング・バイ・ロータス」

 初代モデルは三菱「パジェロ」やトヨタ「ランドクルーザー」のように大ヒット作とはならなかった。が、ビッグホーンが種をまいたSUV市場は、アウトドアレジャーブームを追い風に、1980年代後半から大きな盛り上がりを見せるようになる。

■いすゞの技術の高さを示した2代目の走り

 そこで1991年12月、ライバルのパジェロを追うように2代目を投入した。「高性能・高品質」を掲げた2代目は、街中にも似合うデザインになり、風格も増している。海外を意識してすべて3ナンバーのワイドボディとなり、基本はワゴン車だ。ロングボディの主役はハンドリング・バイ・ロータス、2ドアのショートボディの主役はイルムシャーRSである。

 強靭なフレーム構造を受け継ぎ、リアサスペンションはラテラルロッド付きの4リンク式のリジッドアクスルへと進化した。トランスミッションはハイ/ローのギア比を持つ副変速機を備え、5速MTと電子制御4速ATが選べる。

1991~2002年に発売されていた2代目ビッグホーン。写真は後期型だが、街中にも似合うデザインになり、風格もある

 度肝を抜かれたのはパワーユニットだ。ガソリンエンジンは3.2LのV型6気筒DOHC4バルブ、ディーゼルターボは3.1Lで、インタークーラー付きとなっている。

 その走りは鮮烈で、V6のガソリン車は重いボデイを苦もなく加速させ、ハンドリングもスポーティだった。その気になれば、スポーツクーペを追い回せるほど、高い実力を秘めている。

 とくにイルムシャーRSは俊敏だ。だからビッグホーンのショートボディをベースに、1997年に新しいタイプのSUV、「ビークロス」を送り出している。デザインに目がいくが、走りも鮮烈だった。V6エンジンはパワフルだったし、電子制御トルクスプリット4WDトルク・オン・デマンドの冴えた走りも光っていた。

いすゞ「ビークロス」。リアに3.2L V6ガソリンエンジンを搭載、215ps/29.0kgm。10・15モード燃費7.8km/L、4人乗りだった

 いすゞは高い技術力を誇ったが、20世紀をもって乗用車部門から撤退し、ビッグホーンも2002年9月に販売を終えている。海外では今も「ミュー」が頑張っているが、それを知る人は少ない。

2013年10月に登場した「mu-X(ミューX)」。いすゞのピックアップトラック「D-MAX」をベースとして開発された。操安性・快適性・安全性をさらに高めている

 クロスオーバーSUVが持てはやされる今こそ、良質で高性能なSUVを出せば、多くの人は目を向け、欲しいと思うはずだ。高品質を売りにしたいすゞが生んだ20世紀の名作がビッグホーンである。

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みんなのコメント

4件
  • いやいや、当時は、パジェロやランクルは、ミーハーで、本物の男前は、ビックボーン一択でしたよ。
  • 「クルマは、どこの乗ってるの?」
    A「僕、トヨタ」
    B「私は、日産よ」
    C「僕、マツダだね」
    D「俺、いすゞ!」←ちょっぴりカッコいい♪
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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