この記事をまとめると
■今も昔も日本の路上にはモタモタぐずぐず運転のドライバーは多い
いまどきのクルマでやってたらドン引き! 時代遅れ感満点の「昭和のドラテク」5つ
■運転スキルの差は運転経験の多少によるところが大きい
■的確な状況判断と常に先を読む洞察力が上手な運転のキモだ
昔も今もニッポンの道路には“下手くそ”ドライバーがわんさか!
ここ最近の交通事情では、「煽り運転」というモノが問題視されています。高速道路上(一般道路でさえも!)で前のクルマに著しく接近して脅迫まがいのプレッシャーを与えたり、あるいは他車を無理矢理停めて恫喝したり……と、マナー&ルール云々ではなく、人として常識を逸脱している運転ともいえます。
また、高齢ドライバーに多く見られる「暴走」も、昨今は深刻な問題になっています。狭い駐車スペースなのにアクセル全開で店舗に突っ込んでしまったり、逆に猛烈にバックして駐車場から飛び出してしまったり……。事故を起こした運転者は皆、「アクセルとブレーキを踏み間違えた」と口を揃えているんですがね……。
「煽り運転」や「暴走」のような特殊な事例まで行かなくても、道路上には危うい運転をしているドライバーはウヨウヨ居ます。たとえばかな~り遅いスピードでノロノロ走って無駄な渋滞を作っていたり、あるいはモタモタと右左折に戸惑って後続車に迷惑をかけていたり、さらには急な進路変更をして前後のクルマをヒヤッとさせたり……。「無駄な渋滞」や「後続車への迷惑」や「ヒヤッとさせる」くらいならまだ良いですが、それらが事故を誘発するということを当の本人たちがちっとも認識していない……、これがじつはもっとも危険なのです。
こうした危ない運転を目にすると、「いやぁ、最近は運転テクが未熟のドライバー多く、マナーもなっちょらん輩が多くなったな」と嘆くベテランドライバーは少なくありません。が、ダメダメな運転をするドライバーは最近に限ったことではなく、昔からたくさん存在していたのです。
たとえば、高速道路の料金所がETCじゃなかった昔は、チケットやお金の受け渡しでモタモタするドライバーが後続車をイライラさせたもんです。そういうヤツに限って支払いが終わると「ごめんね~」という意思表示でハザードを点滅させるもんですから、「ハザード点けるヒマがあったら、とっとと加速しろっつうの!」と憤慨した経験がおありの方も少なくないでしょう。
また、ナビシステムがない時代ですから、地方から来たドライバーは、都会の猥雑な道路にパニックになって、右左折も進路変更もモタモタしてしまいがち。そういうモタモタぐずぐずドライバーは、とくに長期休暇=お盆や年末(=暮れ)の休みにたくさん出没するため、昔は「ボンクレ族」または「ボンクレドライバー」と揶揄されたもんです。
また、昭和の男性ドライバーは「ちっ、運転が下手だと思ったら、女のドライバーだったのか」と舌打ちしていたように、女性ドライバーもボンクレ同様に蔑視されていましたっけ。これ、いまの世の中だったら完全にアウトです。そうそう、日曜しか運転しない「サンデードライバー」は昔も今も変わりませんね。
さて、ボンクレ族やサンデードライバーに共通するのは、「運転時間が短い」こと。サンデードライバーは文字どおり日曜だけしか運転しませんし、ボンクレ族は夏休みと年末年始だけわざわざクルマで出かけますが、普段はほとんど運転しませんから。
筆者が懇意にしているモータースポーツのベテランカメラマン(ドラテクはプロレーサー並み)は、「ボンクレドライバーに運転が下手な人が多いのは、運転する機会&時間が決定的に少ないだけであって、決して運動神経が劣っているわけじゃない! だってさ、俺らみたいなクルマのカメラマンは各地のサーキットと自宅を毎日のように往復してるうえに郊外のロケもあるから、年間8万kmは平気で走っているし、モータージャーナリストなんて新車の試乗を繰り返しているから年間10万kmはざらだろ。俺らとボンクレドライバーの差は、スキルとかセンスとかよりも『慣れ』なんじゃないかな」と語ります。
では、その『慣れ』は、運転にどんな好影響を及ぼすのでしょうか? 先ほどのモータースポーツのベテランカメラマンを始めとして、運転歴&運転時間が長い人たちに聞いてみました。彼らの経験や考えを例として、上手な運転について考察してみましょう。
的確な状況判断と先を読む洞察力が上手な運転の秘訣!
まずは某輸入車の広報からタクシードライバーに転職し、現在は大手エネルギー会社の広報として活動しているA氏の発言。「以前は右左折のずいぶん手前からきちんとウィンカーを出すのが普通でしたが、ここ3年ほどは流行なんでしょうか? 曲がる寸前で数回ウィンカーを点滅させるドライバーが目立ちます。これは本人はカッコいいと思ってやっているんでしょうが、じつはかなり危険な所作だと思います。とくに左折時にウィンカーを点滅させないと、歩道寄りを走っている自転車を巻きこむ可能性がありますから」と、注意喚起します。
また、信号待ちでは停止線のかなり手前で停まったり、前のクルマとの車間を空け過ぎて停まったりするドライバーにも苦言を呈します。「おそらくハイブリッドカーなどが停止寸前でアイドリングをストップするから、想定していたところよりも手前で停車してしまうんでしょうね。その分だけ車列が長くなり、渋滞を誘発する可能性が高くなりますから、停止線や車間を守って停止したほうがいいでしょう」と語るA氏。
こうした何気ない所作(運転ミス)は、自分のまわりの状況をしっかり把握できていないことによるミスなのです。前走車、後続車、対向車、そしてバイクや自転車の動きを見極めて、ウインカーを早めに出すなどして自分のドライビングの意思をまわりに明確に伝えれば、おのずとスムースかつスマートな運転になるのです。
そして、そのスマートな運転によって、事故やトラブルを回避できるのです。また、自分と自分のクルマの状態をきちんとチェックしておくことも大事。とくにスイッチやレバー、ペダルといった操作系パーツとその操作方法を把握しておけば、冒頭のペダルの踏み違いによる「暴走」を防ぐことになるのです。
事故やトラブルの回避といえば……、長年にわたって肉や野菜などを都内の飲食店に配達してきたドライバーのT氏のアドバイスが効果的。「混雑した都会の街なかを早くまわるには、事故やトラブルを絶対に回避しなければいけません。そのためには常に先の先を読んだ運転が必須です。自分のクルマの4~5台前まで見渡し、さらにはいろいろとシミュレーションしながらドライブするんです。たとえば、『左を走ってる黒いベンツはさっきから車線変更を繰り返しているから、近づくのはやめよう』とか、あるいは『3台前のトラックは中央車線寄りを走行しているから、もしかして急に右折するかもしれないな』とか」
先の先を読んだ状況判断はスムースな運転の基本だが、車種やそのクルマの挙動によって状況をシミュレーション(想像……妄想?)をすることは、より効果的な裏技といえるでしょう。「どんな人が乗っているのか?」「その人はどうしたいのか?(早く行きたいのか?)」と想像して運転すれば、冒頭に述べた煽り運転を避けることができるでしょう。
また、日本各地の名所や峠道を記事にするために高速道路を走る機会が多いモータージャーナリストに、高速道路をスマートかつ安全に運転するコツをうかがってみました。すると「工事などで車線規制があってどちらかに合流しなきゃいけないシーンがままあります。その場合、規制のかなり手前から合流しようとするドライバーが少なくありませんが、あれは良くありませんね。どのクルマも車線規制ギリギリで合流するように心がければ、どちらもスムースに進んで渋滞しなくなるんですけどね……。ヨーロッパでは常識ですよ。ただ、空いている状況での合流は、手前でもOKの場合もあります。手前で車線変更して、さらにもうひとつ向こうの車線に移動すれば、後続車のためにスペースを空けることができますから」と、少しばかり高等な裏技を伝授してくれました。
高速道路における合流や車線変更でも、先に述べた「的確な状況判断」と「先を読む洞察力」が大切なのです。そうした運転をすることによって、おのずとクルマの流れに乗ることができ、ときには流れをリードすることもできます。すると、自分自身「おっ、いまの俺ってスマートに運転できているな」と実感できるでしょう。そのとき、まわりからは、あなたの運転は「キビキビしてる!」と見えるのです。
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運転においては、自分の能力を過信しないことが大事です。