■2021年12月に初公開された15台のBEVはいつ登場する?
2023年2月13日、トヨタが東京都内で記者会見を開きました。会見の主な内容は2023年4月1日付の役員や幹部職人事による新体制についてです。
13年間にわたってトヨタのトップとして走り続けた豊田章男社長からバトンを受けることになる佐藤恒治次期社長が、「これからのトヨタ」について説明しました。
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新体制のテーマは「継承と進化」。そのなかで、クルマづくりのテーマとして「電動化」「知能化」「多様化」を挙げ、さらに重点事業3本柱を掲げています。
会見中の筆者(桃田健史・オンラインで参加)を含めた記者との質疑応答の内容も踏まえて、これからのトヨタについて深堀りしてみたいと思います。
まず、記者からもっとも質問が多かった電動化についてです。
佐藤氏は、クルマの評価を行うマスタードライバーでもある豊田社長とともに「トヨタらしいBEV(バッテリーEV)」「レクサスらしいBEV」に向けて、開発の準備を進めてきた経緯を振り返りました。
そのうえで、製造の方法や工程については、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車でも変化が必要だと認識。さらにBEVについては「2026年を目標に、電池やプラットフォームなどのクルマの作り方、さらに販売・サービスまでBEV事業のあり方を大きく変える必要がある」と言い切ります。
これをレクサスから始めるといい、製造については、現在はSUV系レクサスの主力工場を持つトヨタ自動車九州での事業再編も進めます。
トヨタやレクサスのBEV戦略といえば、2021年12月14日、今はなき大型施設のメガウェブ(東京・お台場)で、豊田社長が「2030年にBEVのグロール販売台数で年間350万台」、またレクサスについては「2030年までにすべてのカテゴリーでBEVをラインナップし、欧州、北米、中国でBEV新車100%」発表。さらに2035年には日本を含めて「グローバルでBEV新車100%」を目指すとし、世界の自動車産業に大きなインパクトを与えました。
加えて、「bZ4X」を含め、トヨタとレクサスのBEVが一気に15モデル披露されという、自動車産業界では前代未聞の出来事でした。
佐藤氏は今回、この「2021年12月14日発表」を基本的に継承する姿勢を示し、そのうえで、レクサスBEVがものづくりや顧客向けサービスでトヨタBEVを先導するともいいます。
確かに、昨今の世の中におけるBEVシフトは、テスラやポルシェ、メルセデス・ベンツ、そしてアウディなどのプレミアムブランドが先行しており、日本では150kWの高出力型の急速充電器をプレミムブランドがこぞって設置するなど、市場で大きな変化が起こっています。こうしたトレンドにレクサスも対抗せざるを得ない状況だといえるでしょう。
また、BEVのコストについては、業界関係者から「想定以上に蓄電池のコストが下がらない」という指摘があり、当面の間は価格が比較的高いプレミアムブランドがBEVシフトを牽引するのではないかという見方が一般的です。
トヨタとしては、まずはレクサスでBEV関連ビジネスの基盤を作りながら、並行してトヨタBEVの多モデル化を加速させていくことになりそうです。
そのなかには、「2021年12月14日発表」で注目された、「コンパクト クルーザーEV」や2ドアスポーツカーの「スポーツ EV」が含まれることを期待したいところです。
■「知能化」「多様化」はどうなる?
2つ目は、知能化です。ここで注目されたのは、「ソフトウエア基盤のArene(アリーン)が、販売店との連携やアプリを通じた新しいサービスにもつながる」という指摘でしょう。
これまでのトヨタの説明では、アリーンは、アップルのiOSやグーグル(親会社はアルファベット)のアンドロイド オートモーティブOSなどと同じ、車載OS(オペレーティング・システム)という解釈でした。
今回の説明では、社会インフラという観点で、アリーンをどのように使うのかという出口戦略を明確にすることを強調しています。実証試験の場としては、ウーブン・シティを活用すると言います。
ウーブン・シティについてはこれまで、2020年1月に米・ラスベガスの家電およびITの世界最大級見本市CESで世界公開され、その後に静岡県裾野市での工事着工などが話題なりましたが、最近はその進捗について外向けの情報発信がほとんどない状況でした。
2020年代中頃にはウーブン・シティの初期工事が完成する模様なので、これにあわせてアリーンによるサービスが具体的にどのようなものなのか、ユーザーが知ることになるのではないでしょうか。
これまでのクルマでは考えられないような、日常生活に大きな変化を及ぼす新サービスが始まる可能性があります。
そして、3つ目は多様化です。パワートレインについても、トヨタが「マルチパスウェイ」という言葉で表現するように、国や地域によって社会情勢や各種の規制の動向は大きく異なります。
これまでも多様なクルマをラインナップしてきたトヨタですが、例えば主に海外市場をターゲットとして開発されたクルマが、日本でのライフスタイルの変化によって、日本仕様に変化するといった多様化が今後あるかもしれません。
また、「アジアのカーボンニュートラルの実現」についても、タイ最大の民間企業OPグループとのパートナーシップを軸に、電動化やモビリティ関連の官民連携の実証を進めると言います。これは、近年アジア圏へのBEVを軸に積極的な進出を始めている中国への対抗策だとも考えられるでしょう。
※ ※ ※
佐藤氏は、新体制では「チーム経営」だと強調します。そのうえで、「適材適所」、または「肩書より役割」を重んじ、サッカーチームのように、柔軟にフォーメーションを変えるフレキシブルな体制を心がけると言います。
トヨタの新体制で、はたしてどんなクルマが生まれるのか、今後のトヨタの動向を注視していきたいと思います。
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