世界を虜にした「ワイルド・スピード」に登場する日本車を振り返る
ふんだんな予算をベースとしたド派手なカーアクション映画の金字塔といえば「ワイルド・スピード」です。押しも押されぬヒット作であり、2001年からの世界累計の興収は5500億円を突破。毎作品、度肝を抜かれるカースタントの引き出しの多さには、さすがはハリウッド流のエンタメの真髄を感じます。
1000万円でも激安! 3000万円の個体も複数! R34GT-Rが異常価格に高騰しているワケ
これまで20年間の歴史の中でスピンアウト作品を含め、全9作が作られてきました。現在、公開中の「ジェットブレイク」は、日本公開前の全米ランキングでは首位独占。550億円を超える興収を叩き出した上での日本上陸。シリーズ累計10作目という記念すべきアニバーサリー作品らしく、それに見合ったシナリオとなっています。
ワイルド・スピードのシリーズにおいていまだ人気が高いのが、ファンの間では「前3部作」と称されるまだヤンチャなストリートの香ばしさが残る「ワイルド・スピード」(2001年)、「同X2」(2003年)、「同X3 TOKYO DRIFT」(2008年)の3作品です。
新作「ジェットブレイク」では、このころから引き続き出演しているキャストのほか、TOKYO DRIFTにおいて高校生役で主役を張った俳優ショーン・ボズウェルが、クルマ大好き少年の心のまま大人になった姿も確認することができます。往年のファンをしっかりとフォローする心憎さが随所に散りばめられています
しかし何といってもワイルド・スピードが証明してくれたのは、海外における日本車のチューニング人気の凄まじさでした。2000年代前半は時あたかもスポコン全盛期。西海岸らしいキャンディカラーにバイナルグラフィックを貼り込み、外観を整えた上でエンジンはフルチューン。夜のストリートファイトにも映える仕立てでした。
日本ではとても「コンパクト」に分類されないサイズのR34GT-Rや80スープラですが、劇中では当時のスポコンの文脈でカスタマイズされていました。日本車が主役級として登場するだけでもアガりますが、ボディパーツなどが日本でなじみ深いブランドだったり、よく見るパーツメーカーのデカールが貼られた姿はとても誇らしく鼻高々な気分になったものです。
外国人目線のフィルターを通し伝わってくる日本車の雰囲気も一風変わったエキゾチシズムで、クルマのイジリ方ひとつをとっても国によって異なる走り屋カルチャーを感じることができました。ワイスピの世界観に虜になったファンも多く、劇中車両を趣味でレプリカしているオーナーも少なくありません。
そんなスクリーンで大活躍した日本車を紹介していきましょう!
ブライアン役を演じた故ポール・ウォーカーがプライベートでも所有
【NISSAN スカイラインGT-R(BNR34)/オーナー:主人公ブライアン】
第1作ではロス市警の巡査というお堅い立場でありながら、潜入捜査のために夜な夜なストリートに繰り出しドラッグレース(薬物ではない)にのめりこむ主人公・ブライアン。走り屋からすれば等身大の存在でした。
シリーズ2作目「X2」の冒頭に登場したのが、ブライアンが乗るスカイラインGT-R(BNR34)でした。まるで、正規でアメリカへ輸出されていたかの如く、ごく普通に登場していました。日本ではおなじみC-WESTのエアロとウイングが装着されていたので、一層親近感が増したものです。
スピンオフムービーではブライアン自ら中古車ショップで購入後、DIYで全塗装までして仕上げています。
また4作目の「MAX」にも登場しているR34GT-Rですが、こちらは警察の押収車を拝借したもの。どちらも出自が震っています。ブライアンを演じたポール・ウォーカーは役柄通りのジャパニーズ・チューンドカー好きで、プライベートでも保有していました。
北米のSUBARU人気の高さゆえ? 各世代のWRXが続々登場!
【SUBARU WRX STI(GRB/VAF)/オーナー:リトルノーバディ】
いろいろあって巡査としての職を失ってしまった主人公ブライアン。その後、裏取引があったりしながら結果的にFBI捜査官へ転身。4作目「MAX」では黒ベースのボディにシルバーの加飾が施されたGRB型インプレッサWRX STIを足としたが、こちらも元押収品。
7作目「SKY MISSON」ではWRブルーをベースとしたGRB型インプレッサWRX STIにも乗っていたのですが、敵の銃弾により結果として蜂の巣状態に。ちなみに同作ではGDB型のWRXもチョイ役で登場していました。
8作目「ICE BREAK」では秘密組織(味方)の一員(演じたのはクリント・イーストウッドの息子)がVAF型(北米仕様なので2.5L)を駆り、迫力の氷上バトルを繰り広げていました。
日本のエアロ界の雄「Veilside」のエアロをまとって登場!
【HONDA S2000(AP1)/オーナー:スーキー】
シリーズ1作目、そして2作目「X2」に登場していたS2000。X2は女性ストリートレーサーのスーキーさんの愛車ということで、サイドにはポニーテールの女性が描かれた全身ピンクのバイナルでラッピングされ、過剰すぎるほどのレディース感を演出していました。
エアロキットはヴェイルサイド製で、監督が同社のファンだったこともあり、ワイルド・スピードとの結びつきは次作「X3」はさらに濃厚なものになっていきます。
主人公ブライアンのパートナーのミアさんなど、シリーズを通じて息長く出演する女優さんが多いなかスーキーさんが出たのはこの作品のみ。とてもレアですが、強烈なインパクトを残していました。
ワイスピでは日本車はもちろん和製パーツブランドも大活躍!
【MITSUBISHI ランサーエボリュション7・9(CT9A)/オーナー:主人公ブライアンほか】
三菱の誇ったメーカー謹製チューンドカー、ランエボシリーズも劇中で華を添えていました。主人公・ブライアンが潜入捜査のために選んだのはダムドのフルエアロをまとったライムゴールドのランエボVIIは、2作目「X2」の公道バトルを象徴するアイコンに。また相模原(神奈川)のエアロコンストラクターの知名度が一気にワールドワイドになった瞬間でした。
3作目「TOKYO DRIFT」ではランエボIXが登場しました。立体駐車場でのドリフトバトルという、アンダーグラウンド感に満ちた演出に自然に溶け込んでいました。
ドリフト練習機ということでどうやらFRに魔改造されていたようですが、チームオレンジのようにエンジンを縦置きにしていたかどうかは定かではありません。赤いボディに、TOYO TIRES(トーヨータイヤ)、EXEDY(エクセディ)、RAYS(レイズ)など、おなじみのパーツブランドのデカールに萌えたものです。
不慮の事故で他界した主演のひとりポール・ウォーカーが愛した1台
【TOYOTA 80スープラ(A80)/オーナー:主人公ブライアン】
第1作から登場し、見る者に鮮烈な印象を与えてくれたのがトヨタ・スープラです。ボディパーツは、我らがジャパンを代表するエアロブランド「ボメックス」。これをクールなオレンジカラーでコーディネート。劇中ではボロボロのベース車から作り上げる様が映し出されていましたが、当時人気だったMTVの番組「ピンプ・マイ・ライド」ともオーバーラップしました。
ノーマルではタルガトップはNA車でしたが躊躇なく捨て去り、ビッグタービンで武装した2JZ-GTEをNOSでさらにドーピングしつつフルチューン。フェラーリF355に後塵を浴びせるジャパニーズロケットに仕上がりました。
そして、7作目「SKY MISSION」に登場するスープラは特別な意味を持っています。
残念ながら不慮の交通事故でこの世を去ってしまった主人公ブライアン役のポール・ウォーカーが乗っていた本物の愛車が登場しています。亡くなったことを踏まえた上で見るスープラの出演シーンは、涙なしには見ることはできません。
スープラと一緒に日本の銘菓「柿ピー」もオフィシャル出演!?
【TOYOTA GRスープラ(A90)/オーナー:ハン】
そして最新作「ジェットブレイク」ではスープラが復活しています。センターを黒が貫くオレンジ2トーンのカラーに見覚えがあることでしょう。
3作目「TOKYO DRIFT」に出ていたヴェイルサイドのエアロコンプリート「RX-7フォーチュン」と同じカラーなのです。ということは、このクルマに乗っていたキャスト「ハン」も復活したのです。事故で死んだことになっていたハンですが、じつは生きていたのです。
その還ってきた秘密は劇中で明かされていくのですが、ご都合主義でも何でもなくファンの喜びを第一に考えた、練りに練られたシナリオなのです。
いつもスナック菓子をぽりぽりと食すシーンが印象的だったハン。今作ももれなくぽりぽりやっているのですが、何とこのお菓子、日本が誇る亀田製菓の柿の種、ということを配給元のユニバーサルが公式に認めています。
日本車だけでなく日本のお菓子も愛してくれているなんて、ますますハンのことが好きになってしまいます。
日本のチューニングショップ、ミルキーホワイトがハンをトリビュートした車両を作って世界観をアピールしています。エアロに頼らず筑波サーキットを1分フラットで走れるガチの仕様で、リアル・ワイスピを地で行くメイクとなっています。モデルのゆきちゃんにも、ハンのように柿の種をぽりぽりしてもらいました。
スポコン仕様のエクリプスでストリートバトルに潜入捜査
【MITSUBISHIエクリプス(D32/D53A)/オーナー:ブライアン】
これまで紹介してきたクルマのように、シリーズが続いていくにつれ同じクルマもフルモデルチェンジを経て新旧2世代が登場するケースがあります。主人公ブライアンといえばオレンジ色の80スープラと強烈に結びついていますが、じつは最初に乗っていたのは三菱エクリプスでした。
1作目に登場したエクリプスは、ストリートバトルの主催者側へ、警官という身分を隠し潜入捜査するため、あえてそれっぽく仕立てたスポコン仕様でした。
負ければ、勝った相手にクルマを献上するという無茶なルールでした。ボルトオンターボに大容量インジェクター、NOSなど勝つためのひととおりのことがやってありましたが勝負には負けてしまいます。さらにこのNOSがクセモノで、銃撃を受けボンベに引火、爆発炎上してしまいます。
ルールはルールということで、差し出すクルマを急きょ作らねばということで出来上がったのが、前述のオレンジのスープラでした。
もう1台のエクリプスは、2作目「X2」に登場しました。主人公・ブライアンとバディを組むローマンが乗っていました。軽犯罪を繰り返していた前科者ですがストーリー中ではお笑い担当、ともいうべきキャラクターで、歴代作品では緊迫したシーンを上手に緩和してくれています。 全身にわたってにぎにぎしくメイクされたエクリプス・スパイダーがとても似合っていました。
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