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完成度が大幅に高められた新型プリウスPHV 詳解と試乗レポート

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完成度が大幅に高められた新型プリウスPHV 詳解と試乗レポート

発売前に先立ち新型プリウスPHVの試乗会が開催され、参加してきた。技術プレゼンもあり試乗レポートと一緒に最新情報をお届けしよう。

■新型プリウスPHVのテーマ
今回行なわれた試乗会に登場したプリウスPHVは、まだ型式認証の取得前の段階のためプロトタイプとされているが、クルマとしては量産試作車であり、生産ラインでのパイロットモデルだ。そのため仕様としては市販モデルと同レベルになっている。

先代30型のプリウスPHVは、2009年12月からリース形式で市販され、2012年1月から発売された。このPHVはノーマル・プリウスが容量1.3kWhのニッケル水素バッテリーを搭載しているのに対し、約3.3倍となる4.4kWhのリチウムイオン・バッテリーを採用。電力のみで走るEV走行距離は26.4kmだった。またパワーは、1.8Lエンジンが99ps/142Nm、モーターが82ps(60kW)/207Nmという組み合わせだった。

一方、プリウスPHVより約1年遅れでデビューしたアウトランダーPHEVは12kWhの大容量のリチウムイオン・バッテリーを搭載し、パワーは118psのエンジンと、出力82ps×2のモーター出力を持ち、EV走行距離は60.8kmであり、その後に登場するヨーロッパ製のPHEVもほとんどが容量7~8kWhのバッテリーを搭載し、EV走行距離が50km以上であった。

結果的に、プリウスPHVはバッテリー容量が小さくEV走行距離が短い、THS-IIを使用するため出力が低く、中途半端な性能となり、成功作とは言い難かった。

新型プリウスPHVは、そのためリチウムイオン・バッテリーの容量の増大と出力の向上が求められた。さらにもうひとつ、これまでのプリウスPHVはエクステリアが標準プリウスとまったく同じで、商品性としてインパクトに欠けたという反省から、新型はPHVモデル専用のデザインをを採用しているのだ。

■デザインとパッケージング
新型プリウスPHVのエクステリアは前後バンパー、リヤハッチのデザインを専用デザインとし、標準プリウスとはまったく別モデルであることが強調されている。デザインテーマは「ICONIC Human-tech」で、標準プリウスより先進性が感じられる表情が与えられ、FCVのMIRAIとも相似性が持たされている。

ヘッドライトのデザインも専用デザインで左右各4個のLEDヘッドライトで、アダプティブハイビームシステム(AHS)を採用している。通常はハイビーム照射を行ない、歩行者やクルマをカメラで検知すると、その部分だけを自動でカットするシステムだ。

リヤは、カーボン樹脂製のリヤハッチにダブル・バブルウインドウ、つまり二つのふくらみを持つリヤガラスが採用され、リヤデザインも一新されている。このカーボン樹脂製ハッチドアは、カーボンファイバーチップをレジン樹脂で固めて成形する製法で、レクサスL-FAでも採用された経緯もあって、L-FA工房で製造される。

カーボン樹脂製のハッチドアは、SMC樹脂のドアより部分補強スチールの使用量も少なく、軽量で高い剛性を備えている。また剛性が高いため、リヤガラス両サイドのトリムを廃止し、結果的に標準プリウスより後方視界も左右方向に拡大されている。

■プリウスより、ひと回り大きく見えるPHV
ボディサイズは、標準プリウスより全長が105mm延長され4645mmに。つまりフロントのオーバーハングが25mm、リヤのオーバーハングが80mmも長くなっている。そのため見た目の印象も一回りボディが大きく感じられるのだ。乗車人数は4人乗り(従来型は5人乗り)となっている。

インテリアでは11.6インチサイズの縦型の大型ディスプレイがインスツルメントパネルの中央に配置されている。スマートフォン同様のフリック&スワイプ・タッチで操作でき、SDナビとT-CONNECTが内蔵される。

パッケージングでは、より大型になったリチウムイオン・バッテリーがリヤのラゲッジスペース床面に搭載され、リヤシート下には小型の燃料タンクと充電システムを搭載している。このためトランク部のフロア面は高くなり、イメージ的には標準プリウスの2/3程度の容量になっているようだ。

ちなみにプリウスのTNGAプラットフォームと同様に、モジュラー・プラットフォームを使用しているゴルフGTE、アウディA3 etronの場合は大容量のバッテリーをリヤシート下に配置し、薄型燃料タンクをリヤラゲッジスペースの床下に配置しているため、ラゲッジスペースへの侵入容量は少なく、重心の低下効果も大きい。

■PHVシステム
新型プリウスPHVのリチウムイオン・バッテリーはパナソニック製で、電力容量は8.8kWhと、従来型の2倍にアップ。また電池セルの出力もより高められ、351.5Vの電圧を持つ。バッテリーの重量は120kgで、車両重量は標準プリウスより150kgほど重く、車両重量は1510kgとなっている。

またこの新型バッテリーは内部にヒーターによる昇温装置を備え、寒冷地でのバッテリー出力性能を確保している。バッテリーの冷却は室内の空気を圧送する空冷式だ。

この電池容量のため、EV走行距離は60km以上とされているので、平均的なクルマの使用パターンではEV走行のみで走ることができるわけだ。EV走行での最高速は135km/hと、ライバルと同等レベルまで高められ、高速道路でも余裕を持ってEV走行ができる。

バッテリーの容量アップと同時に、パワーコントロールユニットを改良し、昇圧コンバーターの出力を従来比1.8倍に高めることでEV走行での性能を向上。リヤシート下に配置される充電器の出力を高め、急速充電、200V充電、100V充電に対応している。

充電時間は、急速充電では20分で80%充電ができ、200V/16A充電で2時間20分、100V/6A充電では約14時間で満充電となる。また車内のコンセント、車外用のビークルパワーコネクターを使用した給電では、バッテリー電力のみで1500Wを使用して約3時間、エンジンによるバッテリー充電モードを使用すると1500W使用で2日間程度の家庭電器製品を作動させることができる。

ちなみに、搭載エンジンはこれまでと同じ2ZR-FXE型1.8Lアトキンソンサイクル・エンジンで、98ps/142Nm。

ハイブリッド・トランスアクスル部はPHV用にデュアルモータードライブ方式を新採用して、モーターからの出力をアップしている。これまでのTHS-IIは、駆動モーターと発電ジェネレーターの役割が分けられたいたが、新型プリウスPHVは動力分割機構にワンウェイクラッチを追加しジェネレーターを駆動モーターとして使用することができるようになったのだ。

このワンウェイクラッチは、フライホイール部に一体化された薄型で、エンジン逆転方向はロック、正転方向にはフリーとなるように働く。このワンウェイクラッチはフライホイール一体型のため、従来からのトランスアクスルケース内に収めている。

このため、従来の駆動用モーター出力72ps(53kW)に、ジェネレーターが駆動モーターとして31ps(23kW)が加えられ、最大モーター出力は103psとなる。なお2個のモーターはアクセルの踏み具合、負荷によって自動的に制御され、軽~中負荷では1個のモーター、それ以上では2個のモーターが駆動する。このためシステム総合出力は122psとなる。

日産リーフのモーター出力は109ps(80kW)、ゴルフGTEも109ps(80kW)だから、プリウスPHVもこれらと肩を並べたことになる。ただし、ゴルフGTEはモーターがDSGトランスミッションを組み合わされているため、低速~中速ギヤの範囲ではより強力な加速力が得られる特徴を持っている。ゴルフGTEはシステム最高出力も204psと、エンジン出力が強力な分だけパワーも強力だ。

■ソーラー充電という新装備
従来型プリウスPHVにオプション設定され、他社でもソーラー充電システムは存在していたが、使用目的は駐車中の室内自動換気などに限られていた。今回の新型プリウスPHVではより強力な、世界初となる太陽光発電&充電システムをオプション設定している。

パナソニック製の大型太陽光発電パネルをルーフに乗せ、単結晶シリコン式の太陽光発電の出力は180W。これと組み合わせ新たにソーラー発電用のニッケル水素バッテリー、DC-DCコンバーターを内蔵した発電制御ECUを採用している。専用バッテリー、ECUはセンターコンソール部に格納される。ここが新型ソーラー発電のポイントなのだ。

駐車中はパネルで発電された電力を専用バッテリーに蓄え、蓄電されるとまとめて駆動用バッテリーに送る。走行中は電装機器用の12Vバッテリーが使用する電力に相当する電力を駆動バッテリーに送る役割を果たす。

このシステムは平均的な日照時間相当でEV走行が2.9kmできる能力を持っている。

■暖房機能を強化する新装備
ハイブリッドカー、EVでは冬季の暖房に大きな電力を使用することが課題となっていたが、ガスインジェクション機能付きヒートポンプ・エアコンでは、EV走行中の暖房機能を確保し、エンジン作動を抑制する効果がある。

ガスインジェクション機能付きとは、通常は空気と冷媒ガスが混合された状態で使用されるのに対し、冷媒ガスを分離させ、直接コンプレッサーに送ることで暖房能力を高める方式で、-10度~-20度といった寒冷地でのエンジン使用率を下げ、実用燃費を向上させることができるのだ。

ヒートポンプ式エアコンは家庭用エアコンに使用されているように、冷房では外部に車内を放熱し、暖房では外部の熱を車内に取り入れるという機能を持つ。ただこの方式は-20度といった低温では暖房能力が大幅に低下するという問題がある。

■試乗レポート
さて、試乗はクローズドの袖ケ浦フォレストレースウエイでのテストドライブ。新型と現行型の乗り比べというやり方のため、違いが解りやすかった。

最初は新型でスタートする。ピットレーンをゆっくり動き出すとノーマルモードの設定でもEVで走り出す。そのままアクセルを踏み込んでメインストレートに合流。まだEV走行のままだ。1コーナーを抜けて加速してみるとEVらしい力強いトルク感がある。

加速フィールはEVそのもの。アクセルを踏み切るまで踏まなければエンジンがかからない。サーキットをそれなりに高速走行してもエンジンが稼働しないのだ。また、モーター駆動がずっと続くのでスロットルレスポンスもよく、気持ちよくサーキットを走行する。

この袖ケ浦フォレストレースウエイの舗装状況は非常に綺麗で、路面のミューは一般道路と大差ない舗装がされている。サーキットとしてはミューが低いといいう表現になるが、一般道路と同じ環境という言い方もでき、試乗テストとしては、そのフィーリングに乖離が小さいので参考になる。

もっとも綺麗すぎて乗り心地がわからないという弱点がある。路面に凸凹がないから入力によってどんな乗り心地なのか?ハーシュネスはどうか?などのフィールチェックができない。乗り心地の印象はどのクルマに乗っても、滑らかで乗り心地がいいという判断になってしまう。

さて、旧型に乗り換えてみる。ピットから出ていくとすぐにエンジンがかかる。「アクセルを踏みすぎたかな?」と思い、右足を緩めてみる。1コーナーを抜け立ち上がりで再び、ゆっくりとアクセルを踏む。が、やはりエンジンがかかる。「あれ?」と思うが、どこの場面でも車速が高いせいなのか、エンジンが頻繁に稼働し、EV走行で無音の状況になかなか遭遇しない。

再び新型に乗り換えてコースイン。やはり、EV走行をする。現行型と同じようにアクセルを開けみるとやはりエンジンは稼働せずEV走行のままだ。この違いが新型の特徴なのだ。よりEV走行を積極的にしようという制御になっているのが、新型プリウスPHVということになる。

さらに、この新型は2モーター駆動になったため、エンジンパワーを使わなくとも力強い加速が得られる。エンジンが稼働しないから、当然静かな室内は確保され高級車に匹敵する静粛性を持っていると思う。また大型化したリチウムバッテリーは重量があり、その重さのためか重量感がいい方向に働き、どっしりとした印象を受け、それも高級に感じる要因の一つだろう。

リヤに重量物を搭載しているにもかかわらず、ハンドリングにはなんら影響を感じない。先代プリウスの弱点とも言えた操舵応答性や操安の気持ち良さなどが、新型では満足のできるレベルになっていると思う。ステアしてフロントに荷重がかかった状態でのアクセルオン・オフでも、また、ブレーキングしてもステアしている方向にクルマは動く。アンダーやオーバーが出たり、巻き込むような動きは見当たらない。

4代目のプリウス・ハイブリッドも操安性能が格段に向上しているが、そのハイブリッドとの軽快さとは違い、重厚感のある高級な印象を受けるのはPHVだ。やはりバッテリーの重さがいい方向に効いていると思う。

また、バッテリーチャージモードも備え、バッテリー残量がなくなると、強制的にエンジンを始動し、充電させることが任意でできる。しかも、このモードで充電を満タン状態にまで充電できる機能があるから便利だ。充電環境がないときに、このチャージモードは役立つ。

さて、新型プリウスの価格、詳細スペックなどは、現時点でも未発表のままだ。発売は今冬(2016年)と発表されているので、おそらく11月頃にはこれらは発表されるだろう。


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