グループBカーとは
FIAは複雑になりすぎた車両のクラス分けを整理するため、それまでのグループ1~9からグループA~Nに再区分して1982年から施行する。ラリーカーではそれまで義務生産台数が400台だったグループ4から、義務生産台数が連続する12カ月間で200台のグループBに移行し、専用のマシンの開発を容易にさせる規定へ再編された。
『ランチア・デルタS4ストラダーレ、1億円超えで落札』すべての画像をみる
このグループBに真っ先に対応したのがランチアで、アバルトが開発した鋼管スペースフレームにミドシップというレーシングマシンそのものの構造を持つ後輪駆動の037ラリーを送り出し、1983年のマニュファクチャラーズ・チャンピオンを勝ち取る。
しかしグラベルや氷雪路では4輪駆動車が優位であることが明白となり、ランチアもミドシップ4WDのデルタS4を投入する。このデルタS4の開発もアバルトが担当し、ミドに積まれるDOHC直列4気筒1759ccエンジンはスーパーチャージャーとターボチャージャーの2段掛けとし、ストラダーレで250hp、ワークスマシンでは最終的に600hp超まで高められ、テストでは1000hpを越えていたという。
こうしてトップレベルの戦闘力を手に入れたランチアは、デビュー戦となったWRC1985年最終戦のRACラリーでデビューウインを飾り、翌1986年シーズン開幕戦のモンテカルロ・ラリーも制し王者は確実かと思われた。
しかし第5戦のツールド・コルスでエースドライバーのヘンリ・トイボネンがコントロールを失いコースアウト、炎上して亡くなるというアクシデントが発生してしまう。
シャシーナンバー155 デルタS4ストラダーレとは
トイボネンの事故の前からもハイパワーゆえの事故が続いていたこともあり、FIAはグループBによるラリーは1986年をもって終了し、1987年からは量産モデルをベースとしたグループA規定で行われることになり、究極のマシンによる闘いは幕を閉じることになってしまった。
今回RMサザビーズ・エッセン・オークションに出品されたシャシーナンバー155のデルタS4ストラダーレは、新車でイタリアのオーナーにデリバリーされ、後年フランス、ドイツに移るが、再びイタリアに戻るというヒストリーを持つ。
注目したいのは2200kmという走行距離で、30余年のドキュメントが付帯し、2018年には重整備が行われているという完璧なコンディションにあることから、最終的に新記録となる104万ユーロ/1億3208万円で決着がついた。
もともとの生産台数が限られ、当初からコレクターズカーとしてガレージに収まっているものがほとんどで、なかなか売り物件が出ないモデルの代表格といえる。それだけに、以前のオークションで6000万円程度まで上がっていたが、今回は驚きの額で終えたことは愛好家の間で語り継がれるに違いない。
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