MARELLI IMPUL ZがひさびさにスーパーGTの表彰台に戻ってきた。直近に行われた鈴鹿と富士の2ラウンドで、ともにニッサンZニスモGT500の最上位となる4位と5位を記録するなど、調子の上向きを感じさせるなかで第6戦SUGOに臨んだ2022年王者は、雨に翻弄された週末の決勝で3位を獲得し1年3カ月ぶりに表彰台に上がった。レース後、12号車MARELLIの平峰一貴に聞いた。
「調子としては悪くありませんでした」と平峰が言うように、12号車MARELLI IMPUL Zは9月21日(土)午前の走り始めから上位につけた。悪天候が予想されたため、事前に午後の予選に代わって決勝レースのグリッドを決めるセッションになる可能性があるとされた公式練習で、平峰が1分26秒115の5番手タイムを記録。その後、実際に予選がキャンセルされたため12号車MARELLIは3列目5番グリッドから決勝レースをスタートすることとなった。
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84周で争われた決勝ではスタートを担当したチームメイトのベルトラン・バゲットがウエット路面で好走を見せ、セーフティカー(SC)ランで始まったスタート直後から順位をふたつ上げ3番手に。その後、ペースを上げてきたライバルにかわされ一時6番手まで下がったものの、33周目に5番手のポジションを取り戻し42周目にピットイン。平峰にバトンをつないだ。
ピットで僚友の力走を見ていた平峰は「めちゃくちゃ楽しかったです」と振り返る。「バゲット選手はやっぱりすごいなと思いましたね。そのひと言に尽きます。あれだけ難しいコンディションなか、しかも相手はスープラとか僕たちより力強いペースのクルマが走っているなかで、ああやって粘り強い走りができるのは、さすがバゲット選手だなと思いながら見ていました」
■滑りやすいコンディションのなか、スリックタイヤで2番手を走行
平峰のスティントはレースの折り返しとなる43周目から。雨量としては少なく、路面を濡らすほどではないもののスタート時点では上がっていた雨がふたたび落ちてくるなかで迎えたレース中盤の路面は、まだ湿り気の残るダンプコンディション。2度目のSCが出る直前に他の多くのGT500車両と同じタイミングでルーティンのピット作業を行ったTEAM IMPULは、ドライ用のスリックタイヤでバゲットから乗り替わった平峰をコースに送り出す。
徐々にドライアップしていく難しいコンディションのなかでチームと平峰は、終盤のタイヤのタレを考慮して柔らかすぎず、かといって低気温の中でもグリップが得られるように硬すぎるコンパウンドを避け、3種類のコンパウンドの中で、ミディアム側のウエットタイヤを選択したようだ。
それでもピットアウト後、タイヤに熱が入るまでに「数周かかった」と明かした平峰。「まだコース上で水が出てるところがありましたし、ヒヤヒヤする場面もありました。とにかくそこに足を引っ張られないように」と注意深く自身のスティントを開始した彼は、その後ミスのない走りを続け、SC明けの50周目に36号車au TOM’S GR Supraと14号車ENEOS X PRIME GR Supraをパスし8番手から6番手に浮上する。
その2周後にはルーティン未消化のマシンがピットに入ったため、もうひとつポジションを上げ、さらに3台のマシンがルーティン作業とウエットタイヤからスリックタイヤへの交換のためピットインしたことにより、37号車Deloitte TOM’S GR Supraに次ぐ2番手に躍り出ることとなった。
これと時を同じくして大湯都史樹がドライブする38号車KeePer CERUMO GR Supraとのバトルが勃発。最終的には、最終コーナーで12号車MARELLIはGT300のマシンに引っかかって一瞬スピードが緩み、その隙を見逃さなかった38号車KeePerに軍配が上がったが、この2番手争いは今回のGT500のハイライトのひとつになった。
「38号車との戦いはすごく楽しかったです。僕がちょっとGT300に引っかかったタイミングで抜かれてしまったのですけど、その後のペースは向こうが速かったので、(あのままバトルが続いても)ちょっと敵わなかったかな」と大湯とのバトルを振り返った平峰。それでも、抜かれた後も諦めずに38号車の背後を窺い、抜き返しを狙うようなシーンも見られた。
「(SUGOの)インフィールドは大好きなのですが、ハイスピード区間はスープラのほうが明らかにダウンフォースがあって速い印象を受けました。ストレートスピードはだいたい同じくらいでしたね」
■ニスモ勢のタイヤメーカー変更による恩恵
週末をとおしての感想を求められた平峰は、前述のように調子は悪くなかったとしつつ今回は「スープラには勝てなかった」とSUGO戦を総括した。「ニッサンZの中では調子がよかったと思います。ただ、1位を獲るには(ライバルに)スープラやシビックがいるなかで、そこには敵わなかったというのが正直なところです」
とはいえ、TEAM IMPULにとって1年ぶりとなる表彰台獲得は、2022年の王座獲得以降、苦しいレースが続く12号車MARELLIのふたりにとって価値のある結果であることは間違いないはず。平峰は詳細こそ明かさなかったが、今回ポディウムフィニッシュが実現するにあたり星野一樹監督とタイヤメーカーの努力と貢献があると語った。
「久々の表彰台でした。とにかく今は“キング”一樹監督がすごく頑張ってくれていて、もう本当にそれに尽きます」
「クルマはまだ全然完璧ではないのですが、今回みたいなコンディションでは大変ではありつつも結果を残すことができました。それはやはり一樹さんとブリヂストンがすごく頑張ってくれているおかげですね。それにバケット選手も」
今季はこれまでミシュランタイヤを履いていたNISMOとNISMO NDDPの2台が、ミシュランのGT500タイヤの供給休止にともないブリヂストンタイヤ(BS)にスイッチしたことでニッサン陣営の中でBS装着車が計3台に増加した。この変化はデータ共有などを通じ、もともとBSユーザーである12号車MARELLIにとって恩恵となっていると考えられ、平峰曰く「良いところや悪いところが、お互いに確認できているのではないか」と振り返る。
その効果もあってか、接触に泣いた開幕戦を除く全戦でポイントを稼ぎ、このSUGOラウンドで昨シーズンの第3戦鈴鹿以来となる3位を獲得したMARELLI IMPUL Zが次に目指すのは、表彰台の頂点だ。シリーズチャンピオンとなった一昨年の第5戦鈴鹿以来遠ざかっている美酒を乞う平峰は、次戦以降の戦いに向け「しっかり勝ちます」そう力強く宣言した。
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