希少なモデルがズラリと展示!
2022年6月に開催されたヴェルナスカ・シルバーフラッグの取材行程を調整している段階で、ダラーラの本社に、創設者でレーシングカーデザイナーのジャンパオロ・ダラーラさんの作品を展示しているエリアがあることを知り、急遽、取材スケジュールに組み込みました。
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そしてミラノ到着初日にモデナのカーサ・エンツォ・フェラーリ博物館とパニーニ・モーター・ミュージアム、さらに前回紹介したモデナのフェラーリ・マラネロ博物館を駆け足で巡り、当初は移動日としていた翌日(ツアー2日目)に訪れることができました。
ジャンパオロ・ダラーラさんのクルマ愛にあふれた展示車両たち
ダラーラ・アカデミーを紹介する前に、それを運営しているダラーラ・アウトモビリについて触れておきましょう。ダラーラ・アウトモビリは1972年に創設されたレーシングカーのコンストラクター(車両製造社)です。
創設者はジャンパオロ・ダラーラさんで、ミラノ工科大学では航空工学を専攻、卒業後にはフェラーリへ入社。その後マセラティ、ランボルギーニ、デ・トマソを経て1972年にダラーラ・アウトモビリを興しました。そしてグループ4のランチア・ストラトスやグループ5のランチア・ベータ・モンテカルロなどの開発をメーカーから請け負いながら、その一方で自身の名を冠したレーシングカーを鋭意開発しています。
1980年より製造を開始したF3マシンが、ラルトやレイナードなどのライバルに打ち勝ち、世界各国のチャンピオンシップで優位に立って1990年代後半には寡占化を進めていきました。またGP2(現FIA-F2)やGP3(現FIA-F3)などにオフィシャルサプライヤーとしてコントロール・シャシーを供給。現在ではインディカー・シリーズやフォーミュラE(現FIAフォーミュラE世界選手権)、日本国内で開催されているトップフォーミュラのスーパーフォーミュラ(SF)などにワンメイクのシャシーを供給しています。
ここまでシェアを拡大させることを可能とした大きな要因としては、早い段階から空力の重要性に注目し、他に先駆けて風洞実験設備を導入したことと、さまざまな新素材を先行開発して最初の主力商品となったF3ではライバルに先駆けてカーボンファイバー・モノコックを採用したことが挙げられます。2023年シーズンから採用されるSF用のニューカウルにバイオコンポジット素材を採用し、シーズンを通してテストが続けられたことは、モータースポーツファンにはお馴染みとなっています。
ダラーラの愛情に包まれたクルマたちを展示
そんなダラーラ・オートモビリは、本社に併設されたビルにおいて次世代の自動車技術者を育成するプログラムを進めており、ダラーラ・アカデミーで学生向けの“授業”が実施されています。そして彼らのクルマに対する興味をさらに引き上げるために(?)、ここに併設されたのが博物館、という訳です。
展示されているクルマはジャンパオロ・ダラーラさんがサラリーマン時代に手掛けたクルマから、ダラーラ・アウトモビリとして製作したモデルまで、そしてロードゴーイングのスーパースポーツからレーシングスペックのスポーツカー、F1GPマシンを筆頭としたレーシング・フォーミュラまで、実に多岐に渡っています。
そのクルマの出自を確認していくと、この博物館はダラーラ・アウトモビリの企業博物館、と見ることもできますが、じつはそれだけではありません。すべてにおいてジャンパオロ・ダラーラさんの、高いレベルのエンジニアリングと、溢れんばかりの愛情に包まれたクルマたちばかりです。こう書いてくると、ここはもうジャンパオロ・ダラーラさんのプライベートコレクションじゃないか? とも思うのですが、これを見た学生たちが、こうしたクルマたちに触発されてクルマの技術者に育っていったとしたら……。これはもう自動車界の未来はバラ色です。
今回が初対面のレーシングスポーツと、ジャンパオロさんとの握手でわれを忘れる
それでは前置きが長くなりましたが、ダラーラ・アカデミーに併設された博物館の展示モデルを紹介していきましょう。チケットカウンターの横を通り過ぎて展示エリアに足を踏み入れると、一番手前にはランボルギーニ・ミウラが展示されています。時折、展示車両の入れ替えなども行われているようで、そう断定するのは早計かもしれませんが、個人的にはミウラがここにあることには納得させられます。
ジャンパオロ・ダラーラさんに直接お話を聞いたのですが、彼が手掛けたロードカーでベストはやはりミウラとのこと。ご自身でも最近、ロードカーを手に入れたというほど思い入れも高いようです。レーシングカーのベストモデルも聞いてみました。
「レーシングカーは新しいのがベストモデル。新しくなれば間違いなくより速くなっていますから」
と即断するジャンパオロ・ダラーラさん。
同じロードカーでもミウラの対極、というか最新モデルがダラーラ・ストラダーレです。ミウラでやり残したポイントをカバーする、と開発を進めてきた究極のロードカーで、その出来栄えには「自信があります」と胸を張るジャンパオロ・ダラーラさんですが、ロードカーのベストモデルについて再度聞き直しても「ベストはミウラ」と微笑みながら力強くコメント。すべてを自分でデザインしたのは、ミウラが初めてとの理由からで、彼にとってミウラは“初恋の人”なのかもしれません。
ロードカー以外のレーシングマシンも展示
もちろんロードカーだけでなくレーシングマシンも数多く展示されています。なかには1988年のBMSと2018年のHaas VF-18の新旧2台のF1GPマシン、1998年のダラーラIR7や2003年のIR03(インディカー)、あるいは2018年のFormula-E Gen2など数多くのトップフォーミュラも気になるところですが、やはりダラーラといえば=F3。
1980年の初代モデル、ダラーラF380からF3での事実上の最終モデルとなった2012年のF312まで各種展示されているからマニアックなF3ファンでも納得のラインアップということになります。ただ、個人的にはスポーツカーに興味津々で、1975年のフィアットX1/9 Group5仕様の“DALLARA ICSUNONOVE”や1977年のCan-Amマシン、ダラーラ WD1=Wolf-Dallara シボレー V8、そして1978年のランチア・ベータ・モンテカルロGroup 5 仕様の“SILHOUETTE”などは、その存在は知っていましたが対面するのは今回が初めてで、とても感激しました。
もっとも、展示ルームを観覧したあとで、この日のもうひとつの仕事であるジャンパオロ・ダラーラさんへのインタビューで、いきなり握手されたことに感激MAXとなり、もともとが英会話など苦手なのですが、完全にとっ散らかってしまいプロとしては恥ずかしい限りの取材となりました。恥ずかしついでに白状すると、感激のあまり取材後に建屋の写真を撮り忘れてしまいました。ただし、取材を終えてダラーラ・アウトモビリの本社を出た時には小雨が降っており、ちゃんとした写真は撮れなかったかもしれないのですが……。
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みんなのコメント
ダラーラ氏はパンテーラの開発にも携わっていたし多くのレーシングカーも生み出している天才。
ブーメラン型を組み合わせた様なライト周りのミウラが絶対良い。型式は知らんが。