八方美人なホットハッチ
text:Richard Lane(リチャード・レーン)
photo:Luc Lacey(リュク・レイシー)
いまどきのもっとも洗練されたホットハッチ、さもなければ、かつては存在しなかった、より完成された対抗馬のひとつ、と説明することは難しいだろうか。それこそが、今回のテストで確かめたいことだ。
ただし、クロスオーバーであることを差し引かなくてはならない。フォルクスワーゲン・ティグアンRも、メルセデスAMG GLB 35も、根本的な部分で、意図的かつ不可逆的な妥協をしているからだ。
ここでいうホットハッチとは、ゴルフRとAMG A 35だ。どちらもパフォーマンスカーとして秀逸だが、とくにゴルフRのほうは、速さだけでなく日常使いでの高い実用性も兼ね備えているという評判を、この10年ほどで確立してきた。控えめだけどエキサイティングなクルマを探すなら、真っ先に名前が挙がるだろう。
とはいえ、その優秀さは壊れやすいものだ。最新のゴルフRに195kgのウェイトを乗せ、地上高を49mm引き上げ、シートをコーラ缶1本分ほど高く設置したら、きっと台無しだろう。そこまであからさまではないにしても、ティグアンRのスペックをおおまかにいえば、そういうことになる。
GLB 35のベースはA 35で、さらに重いのだが、アプローチも似たようなものだ。車両重量はおよそ1800kgで、ティグアンRより99kg重い。どちらもわれわれの理想より重く、背が高く、幅広いが、どちらもエンジンは4気筒で、思い切り妥協したクルマだといえる。
需要を考えれば必然の存在
しかし、ホットハッチに劣る要素に触れるのはここまでだ。明らかに運動性能はベース車に劣るが、静粛性や乗り心地ではずっと有利となるだろう。そして、当然ながら、マーケットでの需要でも上回る。
GLBをはじめ、AMGはいまや10車種ものSUV系モデルをラインナップしているが、これはほかのいかなるボディタイプよりも多い。フォルクスワーゲンもまた、TロックとトゥアレグにRモデルを設定しており、ティグアンRはこれらに続いて登場した。
となると、これらを正しく認識するならば、どういうクルマだといえばいいのか。まずは速い。ティグアンのほうがややパワフルで、加速性能も上だが、どちらも300psオーバーの2.0LターボとDCTを積む4WDで、0-97km/hは5秒以下だ。
どちらもキャビンには、ホールド性の高いシートやパーフォレート加工されたステアリングホイール、ピカピカの金属ペダルが備わり、乗り込んだ時点で速さを期待させるしつらえだ。
装備は充実、ただし高価
エクステリアの演出も似通っている。バンパーの開口部には周囲を威圧するようにラジエーターがのぞき、クラッディングを備えたホイールアーチいっぱいに収まるマンホールカバーのようなホイール越しにブレーキが光る。擬人化するなら、ヤンチャした過去が隠しきれないマイホームパパといったところか。
また、どちらも価格は高く感じられる。ティグアンRは5万ポンド(約700万円)弱で、GLB 35は5万ポンドを超える。多面的なクルマだとはいっても、なかなかの値付けだ。ちなみに、390psのV6を積むメルセデスAMGのC 43ステーションワゴンは、5万3000ポンド(約742万円)をわずかながら下回る。
上級モデルと接近したメルセデスの値付けは、フォルクスワーゲンよりも大胆だと思えるだろう。英国へ導入されるGLB 35は、最上位グレードのプレミアムプラスのみで、2面併設の10.3インチディスプレイや、必要以上といえそうな装備が与えられている。
3列シートのGLB 35
金属調プラスティックの装飾だけでなく、マテリアルにもレイアウトにも、AMGのキャビンはプレミアム感や豪華さが感じられる。
フォルクスワーゲンのアルカンターラを張ったセミバケットに比べると、シートはちょっとばかり平凡で、両ももをかなり熱心に押し付けるが、室内のそれ以外の部分は、長距離ドライブを快適なものにしてくれる。
エルゴノミクスの点では、シート関連のトリックが、エキゾーストの上に隠されている。3列目シートだ。ほぼどの角度から見ても不格好な獣のようだが、スクエアなルーフラインの下には、子どもふたりが座れる折りたたみシートを含めて7人が過ごせる空間が用意されているのである。
2列目シートの広さに関しては、どちらのクルマも否定のしようがない。大人3~4名で乗る機会が日常的にあるなら、後席の同乗者たちは、ドライバーがゴルフRやA 35ではなくこれらのクロスオーバーを選んだことに感謝したくなるはずだ。
どっちつかずのティグアンR
対照的に、ティグアンRは広く開放的に感じられることが話をややこしくする。高く座らされる感覚はSUVなら当然だが、パフォーマンスカーとしては歓迎できない。とはいえ、ティグアンRはそのふたつを両立しようと目論むクルマなのだ。
おそらく、GLB 35のあとだと統一感がないように感じられる理由はそこにある。GLBも広々としているが、シートにはもっと低く座らされる感覚がある。これはずんぐりしたダッシュボードにも一因はあるが、ずっと円熟した乗用車的な雰囲気がこちらでは味わえる。
ティグアンRのドライビングポジションは、奇妙なほどアップライトで、実用車的なセレクターレバーをはるかに見下ろすような感覚だ。大きく突き出したシフトパドルなど速く走るための装備は、このアーキテクチャーの中にあっては矛盾を覚える。
想像してみてほしい、白いテーブルクロスとマホガニーの椅子が、マクドナルドの店内に置かれている光景を。違和感がないわけがない。ティグアンのプラスティッキーなインテリアにあっても、同じようなことが起きている。
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