■アメリカで話題の「BOSOZOKU」カスタムって何?
2018年11月、筆者(加藤久美子)が西海岸最大の自動車博物館「ピーターセン自動車博物館」を訪れた際、日本の族車に遭遇しました。
【画像】アメリカ人が作ったクレイジーな族車カスタムをもっと見る
ピーターセン自動車博物館は、常設展示エリアにも多くの日本車が展示されていますが、2018年当時は特別な企画展として、トヨタ「2000GT」やマツダ「コスモスポーツ」、ホンダ「N600クーペ」など、歴史的価値の高い日本車も多数展示されていました。
80年代の族車として典型的なスタイルの「竹やり出っ歯」仕様のトヨタ車は、そのなかにありました。
1980年型のトヨタ「クレシーダ(日本名クレスタ)」をべースに、当時感あふれる暴走族スタイルにカスタムされたクルマです。
隣にはトヨタ「マークII(GX81)」も一緒に置かれていましたが、こちらは日本から展示のために送られてきた車両で、オーナーは日本人だということでした。
説明文を読んで驚いたのは、「BOSOZOKU」がカスタムカテゴリーのひとつとして紹介されていたことです。
ちなみに日本車の高級セダンをベースにした「VIP」も、同様に日本的でユニークなカスタムスタイルのひとつだと紹介されていました。
さらに驚いたのは、このクルマがアメリカのビルダーによって製作されたクルマであることでした。ビルダーはカリフォルニア・オレンジ郡の「MOONLIGHT RUNNERS」と説明文に書かれていました。
「族車仕様のクレスタ」を作ったのはどんなビルダーなのでしょうか。
■YouTubeで暴走族の走行シーンを見て族車の作り方を学ぶ
ピーターセン自動車博物館で見かけてからおよそ1年後となる2019年の冬、ビルダーである「ムーンライトランナーズ」に直接取材をすることができました。
アメリカのチューニングショップや制作現場はこれまで何度か取材をしていましたが、こちらのムーンライトランナーズは、自宅の裏のガレージで車両を製作しているようで、まさしく本物の「バックヤードビルダー」でした。
ちなみに、80年型クレスタは博物館からの依頼を受け、わずか5週間で完成させたそうです。
近年、アメリカでは日本車がたくさん登場するレーシングゲームや、『ワイルド・スピード』など映画の影響で80年代から90年代の日本車人気が年々高まっています。
またアメリカでは、製造から25年経過した車両は米国の保安基準を満たさずとも輸入、販売、登録が可能になる「25年ルール」という制度が存在します。
各州の規制をクリアすれば右ハンドル車でもOKになるというもので、右ハンドルの日本車が解禁になるのを楽しみに待っている人もたくさんいるようです。
しかし、ムーンライトランナーズのメンバーに話を聞くと、族車を作ろうと思ったのは、単なる日本車ブームや25年ルールの流れに乗ったわけではないことが分かりました。
何がきっかけだったのでしょうか。ムーンライトランナーズ代表のジョンさんに聞いてみました。
――族車スタイルのクルマを作ろうと思ったきっかけは何だったのですか。
作り始めたのは2014年頃からで、きっかけはあるメディアで日本の暴走族を知ったからです。
「日本にもこんなユニークなクルマに乗る人がいるのか!」と驚き、また同時に親しみも感じました。アメリカでこのようなクルマを作ってみたいと思ったのがきっかけです。
当時はアメリカ人がアメリカで作った族車はおそらく存在しなかったと思います。
――どうやって作り方を知りましたか。
すでに、族車を日本から輸入して販売している業者はアメリカにもいたのですが、彼らに聞いても教えてくれませんでした。それで、YouTubeで暴走族が走っている動画を一所懸命探しました。日本語が分からないので探すのは大変でしたね。
エンジンチューニングについては仕事で何度も携わっていたので知識がありましたが、ボディワークや外装、FRPの扱いについての知識はゼロでした。
動画の再生と一時停止を繰り返しながら、どうやって作っているのかを必死で覚えようとしました。
アメリカにも中途半端な族車カスタムのクルマはこれまでもありましたが、どうせ作るなら完璧に、忠実に作りたいと思って完成させました。
アメリカ人でも作れるんだということを証明したかったのです。
――日本のステッカーがたくさん貼ってありますね。
日本で族車カスタムをしているお店に教えて欲しいとお願いのメールを出しました。彼らはとても親切に作り方や材料の扱い方、入手方法などを教えてくれました。
アメリカの先駆者からは知識を得ることができませんでしたが、日本のショップの人にとてもお世話になりました。
――BOSOZOKUカスタムの魅力はなんですか。
とてもユニークなクルマだということです。ほかにない、唯一無二の存在に魅力を感じています。
アメリカ人はクルマをカスタムして乗ることが大好きですが、できればほかの人が乗っていないようなカスタムカーに乗りたいと思っています。
アメリカでは、日産「スカイラインGT-R」やトヨタ「スープラ」やホンダ「シビック」などがとても人気ですが、それらのクルマとも違う、独自のスタイルだと思っています。
――このような改造はアメリカでは問題ないのでしょうか。
州によってはとても厳しいところがあります。カリフォルニアはエンジン交換と排ガス検査が非常に厳しいですね。
街道レーサースタイルの族車は、車高が低いことや竹やりなどの突起物がNGになるでしょう。見つかると改善命令が出されます。
従わないでほったらかしにしておくと、そのうち没収され、クルマを目の前で破壊されてしまうんですよ。
※ ※ ※
博物館に展示されたことをきっかけにカリフォルニアで開催される日本車のイベントなどでも一躍有名になった、限りなく本物に近いMADE IN USAの族車。
ほかにないユニークなカスタムを好む日本車好きのアメリカ人の間で、じわじわと人気を拡大しているようです。
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この言葉を特別な有能集団だと思ってそう。忍者をスペシャルエージェントだと思っているのと同じで…。