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赤旗後のレース延長で「勝利を奪われた」と主張するフェラーリ。抗議とその棄却の背景/WECスパ

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赤旗後のレース延長で「勝利を奪われた」と主張するフェラーリ。抗議とその棄却の背景/WECスパ

 フェラーリAFコルセのドライバー、ジェームス・カラドとアントニオ・フォコは、赤旗後のレース延長の決定によって、WEC世界耐久選手権第3戦スパ・フランコルシャン6時間レースでの勝利を「奪われた」と感じている。

 また、レース後にフェラーリはこの件に関して抗議を行ったが、スチュワードによって棄却されている。

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■「『スパ7時間45分レース』は僕らの計画にはなかった」

 5月11日にベルギーのスパ・フランコルシャンで行われたレースで、ワークスチームの2台のフェラーリ499Pは後方スタートから追い上げを見せ、残り2時間を切って導入された赤旗によるレース中断の際には、ワン・ツーを形成して勝利に近づいていた。

 この赤旗はケメル・ストレートでキャデラックのアール・バンバーが発端となり引き起こされた接触によるものだが、この時点ではアレッサンドロ・ピーエル・グイディがドライブする51号車フェラーリ(ピーエル・グイディ/ジェームス・カラド/アントニオ・ジョビナッツィ)が、僚友50号車のアントニオ・フォコに約25秒の差をつけ首位に位置していた。

 赤旗中断中も当初のフィニッシュ時刻に向けて時計のカウントダウンは進み、ガードレール等の修復が続けられた。その時計が残り10分に近づく頃、スチュワードは「残り1時間44分でレースを再開する」との裁定を下した。

 これにより赤旗直前にピット作業を行い給油を済ませていた12号車ポルシェ963(ハーツ・チーム・JOTA)と6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)が優位な立場となり、結果的にこのポルシェ勢がワン・ツーを飾ることとなった。

 一方、赤旗からセーフティカー(SC)先導の下でレースが再開されると、燃料が底をついた51号車フェラーリのピエール・グイディは規定で許されるSC中の8秒間のエマージェンシー給油のためピットへ向かうことを余儀なくされた。SC退去後にはもう一度本来の給油とピット作業を行う必要が生じ、51号車は6番手へと後退。最終的には4位まで追い上げてフィニッシュしたが、表彰台を逃した。

 カラドは「ショックだった。僕らは最速のマシンだったし、マシンは素晴らしかった。僕の視点から言うと、これは奪われたレースだ」と語っている。

「僕はリードを奪い、すべてを完璧に管理できていた。そのスピードは信じられないほどだった。レースが延長され、『(中断時間含め)スパ7時間45分レース』になることは、僕らの計画には入っていなかった」

「僕の目には、今日僕らは(優勝の)25ポイントを獲得するべきだったと映るが、そうならなかった理由は明白だ」

 一方、金曜日にポールポジションを獲得した後に車両規定違反で失格となり、ハイパーカークラスの最後尾からレースをスタートした50号車のフォコは、ミゲル・モリーナ/ニクラス・ニールセンとともに3位表彰台に登壇している。

 50号車はフェラーリの2台が同じ周回でピットインするのを避けるため1周オフセットしてレースを進行していた。このため、フォコはエマージェンシー給油を行わずに済んだのだ。

「(レース延長が)正しい選択かどうかは、僕が言うつもりはないが、チームとして、ドライバーとして、レースは6時間以内に終了すべきだと考えている」とフォコは語った。

「僕らが1位と2位であることは明らかだったと思う。これ以上は言えない」

 フェラーリの耐久レース部門責任者、フェルディナンド・カニッツォは、レース延長の決定には「疑問がある」と述べた。

「我々は、グリッド後方からスタートした車両をリーダーボードのトップまで引き上げ、レースを確実にリードし、3台のフェラーリ499Pが上位4位に入るほどだった」と カニッツォは述べている。

「残念ながら、その時点でのアクシデントにより赤旗が提示されたが、レースを6時間を超えて延長するという決定には疑問があると考えている。我々はリザルトが違うものになっていたはずだと信じているので、とても残念だ」

 51号車のカラドは、クラッシュにより赤旗で中断されなかったとしても、セーフティカーが出動し規則上ピットインできなかったであろうことから、自分とチームメイトが優勝争いから除外されていただろうと付け加えた。

「最悪のタイミングだった」とカラド。

「赤旗は何の意味もなかった。グリーン下で1周、セーフティカーランなら2周の燃料しか残っていなかったため、エマージェンシーストップは避けられなかった」

■レース延長決定と抗議棄却の規則的根拠

 レース後、フェラーリAFコルセは、『スチュワードによるレース延長の決定』と『暫定結果』に対して抗議を行った。

 スチュワードが当初のレース終了時刻19時の11分前、赤旗中断中の18時49分に下した裁定No.71は、「WECスポーティング規則14.3.1に基づき、19時10分に1時間44分のレースを再開する」というもの。

 この裁定の根拠となったスポーティング規則14.3.1は赤旗時の一般的な原則にまつわる条項で、その中には、赤旗中断中に「状況に応じて、スチュワードはレースの中止および/または設定されたレース時間を変更する決定を下す場合がある」と記された一文がある。

 フェラーリAFコルセはこの裁定No.71と暫定結果に対して21時46分に抗議を提出したが、24時を回って公開された裁定No.80では「スチュワードの裁定(結果)は、FIA国際スポーティングコード13.2.1に定める抗議の対象にならない」として、スチュワードは抗議を棄却している。

 なお、FIAの国際スポーティングコード13.2.1で明示されている抗議の対象項目は、以下のとおり。

・競技者またはドライバーのエントリー
・コースの長さ
・ハンディキャップ
・ヒートまたは決勝の構成
・競技中に発生した疑いのあるエラー、不正行為、または規則違反
・車両が規制に準拠していない疑い
・競技終了時に発行される暫定結果

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みんなのコメント

1件
  • kz4********
    昨年のトヨタはもっと理不尽な理由で勝利を奪われたんですがね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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