Sではなく唯一「R」を与えられたモデル
STIの手掛けるコンプリートカーには大きく分けて、tS(tuned by STI)シリーズと、Sシリーズのふたつが存在する。tSシリーズはおもにフレキシブルシリーズや専用サスペンションといったシャシー系を中心としたチューニングが施され、エンジンはベース車と同一スペックというモデルがほとんど。ATやCVTといった2ペダルモデルやアイサイト装着車もあり、ベースモデルもレガシィやWRX以外にもフォレスターやエクシーガといった豊富なボディ形状のモデルが設定されており、比較的ライトに扱える印象だ。
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一方SシリーズはすべてMTで、シャシー系チューニングのほか、エンジンも専用スペックが与えられる究極のコンプリートカーだ。そんなSシリーズのなかで、唯一Rの称号を持つモデルがR205。インプレッサWRX系のコンプリートカーに与えられる20Xの連番に組み込まれるが、なぜかS204とS206に挟まれた205だけはRとなっている。
究極のロードゴーイングカーを意味する「R」
Rと聞くと、RacingやRallyの頭文字を連想するが、実はR205は究極のロードカーの意味を込めたRoadの頭文字なのである。2010年に400台限定で発売されたR205は、専用チューニングECUや専用エキゾーストパイプなどの採用で、最高出力320ps、最大トルク431N・mを実現。サーキットはもちろん、実用速度域の公道でも最高のパフォーマンスを発揮することで、その名に恥じないオールラウンドで楽しめるクルマとして仕立てられている。
足まわりは専用STI製倒立式フロントストラット&スプリング、専用STI製リヤダンパー&スプリング、専用チューニング・フロントスタビライザー。そしてSTIコンプリートカーではお馴染みのフレキシブルタワーバー、フレキシブルドロースティフナー、フレキシブルサポート・リヤなども採用しシャシー性能も向上している。
ブレーキはフロントにブレンボ製モノブロック対向6ポットブレーキキャリパーに18インチ2ピースタイプ・グルーブドディスクローターを装着。リヤには同じくブレンボ製モノブロック対向4ポットブレーキキャリパーに18インチグルーブドディスクローターを採用し、コンプリートカーならではの止まる、曲がる、気持ちよく走るの3点を極めているのが特徴だ。
エクステリアの専用アイテムは意外と少なめ
それでいて、エクステリアやインテリアは控えめ。STI製フロントアンダースポイラー、リヤアンダースポイラー、ブラック塗装大型ルーフスポイラー、専用フロントグリル、専用サイドガーニッシュ、STI製18インチ鋳造アルミホイールが専用装備だが、基本的にはSTIパフォーマンスパーツとして購入できるものがほとんど。ベースであるGRB型WRX STIで酷似したエクステリアにすることも意外と簡単だ。この辺りはとくに、Sシリーズとの違いともいえるだろう。
ベースモデルのGRB型インプレッサWRX STIスペックCは1000台の限定車で、R205は「リミテッドオブリミテッド」ということになる。インタークーラーウォータースプレーやボールベアリングターボ、アルミ製ボンネットフードといったスペシャルアイテムを装備しており、軽量化だけでなくコンプリートカーのベースとして一級品のモデルであることも注目のポイントだ。
スペックCベースのコンプリートカーとしては最後
R205以外でスペックCをベースとしたコンプリートカーはS202(GDB型)、インプレッサWRX STIスペックCタイプRA-R(GDB型)、WRX STI tSタイプRA(GVB型)と少ない。専用スペックのエンジンを搭載するスぺCベースのコンプリートカーはR205が最後のモデルであり、GRB型のコンプリートカーでいえばインプレッサWRX STI「STI 20th ANNIVERSARY」とR205だけというのも希少性に磨きをかけている。
もちろんその走りはコンプリートカーならではの圧倒的なパワーとトルク、気持ちの良いハンドリングなど所有したものだけが得られる至福の愉しみはほかのSシリーズなどと変わりない。スペックCベースという一見スパルタンな印象ながら、じつは“STI味”に調律されたフルコースを気張らず楽しめるモデルなのだ。
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