■ゴージャスなイタリアン3大ブランドとのコラボ500
2020年3月6日に、第3世代となるフィアット「500」がワールド・プレミアされた。今回のフルモデルチェンジではFCA初の電気自動車になったことが大きなトピックだが、イタリアのリーディングブランド3社が作った3台のワンオフカーも見逃せない。
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2代目の500は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に永久保存されるほど完成されたデザイン。そのデザインを踏襲している最新の500をオートクチュールの手法で新しい特別なクルマに仕立てたのは、アルマーニ、ブルガリ、カルテルの3つのブランドだ。ゴージャスに仕上がった新生500をご紹介しよう。
●B.500「MAI TROPPO」
ブルガリのワンオフ500は、職人技と美しさへのオマージュとなっている。ブルガリは、ジュエリーの世界に新風を巻き起こし、新しいトレンドを自らが生み出すことで長年に渡って革新的ブランドとして世界をリードしてきたブランドである。
フェデリコ・フェリーニ監督の映画『甘い生活』は、イタリアを代表する美と芸術のアイコン的な映画だ。この映画の劇中車として初代500が重要な役割を果たしている。
イタリアの洗練されたブランドであるブルガリは、この劇中車である500を再解釈し、最高品質の素材を使い、インテリアの細部にまで最新の注意をはらって、ブルガリ誕生の地であるローマを想起させるカラーとモチーフのユニークな組み合わせで、真の宝石と呼ぶに相応しい500に仕立てた。
「MAI TROPPO(あふれる豊かさ)」というネーミングも、頷ける話である。
このワンオフカーは、サフランカラーのパール塗装だが、これは色彩豊かなローマの落日に刺激された色調であり、ブルガリがアイコンとして多用するカラーでもある。
この塗料は、ジュエリー製作において生まれた端材で作った金粉が混ぜられており、「宝石」としてクルマのキャラクターが強調されている。高度な職人技が生み出す塗料の配合によって、環境にやさしく、独自の輝きを放つクルマが誕生したわけである。
サイドシルとフロントモールディングには、ガラス加工技術が用いられている。ホイールは伝統的にブルガリのシンボルとされてきた星形デザインに、ブラックのラッカーとゴールドのトリムの組み合わせだ。サイドには、光沢のあるゴールドにダイヤを埋め込んだ「B.500」ロゴを組み合わせる「jewel(宝石)」バッジが装着された。
資源再利用のフィロソフィーはインテリアにも反映され、ダッシュボードパネルは、過去に販売されたブルガリのシルクスカーフを使った張り地が採用されている。シートは青緑色の鴨の羽色をした本革に「Diva」パターンのエンブロイダリー刺繍を施し、ゴールドのロゴ刺繍とスカーフ生地のインサートが施されている。
インテリアにおける真のハイライトは、ブルガリが擁する金細工職人がアメジスト、トパーズ、シトリンという3種類の半貴石を組み合わせて製作し、ステアリングホイール中央に設置した、取り外し可能なブローチだ。
●500 Giorgio Armani
イタリアン・エレガンスの帝王といえば、ジョルジオ・アルマーニが有名だ。アルマーニが主催するオートクチュールハウスは、EVへと変化する500に独自の解釈を加え、時代を超越した仕立てとサステナビリティを表現した。
アルマーニは、レーザー技術を駆使し、服飾生地の3次元にできるだけ近づけることを目指し、車体のスチールパネルに専用のマイクロシェブロン(杉綾)模様仕上げ(エッチング)を施した。その結果、オリジナルカラーであるアルマーニ・グレイグリーンが、「シルキー効果」によって引き立てられている。
エクステリアには、革新的な不透明塗料である「トップコート エアライト」が使われている。この塗料には酸化チタンが含まれ、公害物質や臭いが吸収され、空気を浄化する効果がある。この新500に使用された塗料の空気清浄能力は、10立方メートルの植物の葉に相当し、およそ1本の樹木分の空気が浄化されるのに値するという。
一方、ホイール・デザインには、おなじみのGAロゴが力強いエレメントとなり、ソフトトップに使うファブリックもロゴでカスタマイズされている。アンバー色のウィンドウは環境との調和感と洗練度を表現している。
シート地はポルトローナ・フラウにより供給されたフルグレインの認証済み天然皮革を採用。カラーは「グレージュ(グレイのニュアンスのあるベージュ)」で、装飾要素としては最高品質の皮革製品に施される手作業からヒントを得て、マイクロシェブロン模様のウールバンドと組み合わせられている。
素材の自然さと高級感は、なめらかで彫刻的な美をもつダッシュボードインサートによっても強調されている。それは木目を活かした再生材で薄いアルミニウム製インレイで縁取られ、Armani/Casaラインのエレガンスと現代性によってインスパイアされたデザインだ。
●500 Kartell
1949年にジュリオ・カステッリによって創立されたカルテルは、優れたデザインの家具・雑貨・照明・装飾品を生み出す、イタリアンデザインを代表する企業である。
プラスチック素材を活用して実験と研究を重ね、新しい美と機能を追求しているカルテルは、近年、持続可能なプラスチックの開発にも熱心に取り組んでいるようだ。
500 Kartellは、現代的デザインのオブジェといえる製品に生命を吹き込む素材の理想的な組み合わせを体現している。
エクステリアは「モノブロックカラー」コンセプトに基づき、金属、ガラス、ラバー、プラスチック、ファブリックといった異素材を組み合わせ、全体のカラーをカルテルブルーに統一している。このカラーは有名なイヴ・クライン・ブルーに源を持つもので、カルテルのアイコンともいえるカラーだ。
ボディパネルの表面は、環境に優しいクロム塗料を採用した、ミラーエフェクト・カルテルブルーで塗装。フィアットとカルテルのロゴはボディから浮き出して見えるが、これは素材感と深みを生み出すためにサンドブラスト加工を施したポリカーボネイト素材ならではの効果だ。
カラーエフェクトと並ぶエクステリアの象徴的な要素としては、パラボリックプロジェクターから回収されたポリカーボネイト素材を使用した、フロントグリル、ホイール、ミラーキャップなどが挙げられる。
これらのコンポーネントはカルテルの「カブキランプ」にヒントを得たもので、この新世代自動車のアイデンティティを表現するモチーフとして、フェルーチョ・ラヴィアーニがデザインと開発を担当した。
それらのディテールはカブキランプの質感を連想させ、クルマにとって特別な装飾要素となっている。カブキランプが採用する透明なレースのような質感は車内にも適用され、ダッシュボードにインサートされたポリカーボネイト製カバー、シートのデザインなどに活用されている。
エクステリアのカルテルブルーとインテリアの明るさが作り出すコントラストは非常に印象的で、暖かい色調と冷たい色調を組み合わせ、クリアで軽快な環境を生み出している。
インテリアに採用される手触りのよいテキスタイルのプラスチック素材は、最新のカルテル製のチェアと同様に100%リサイクルのポリプロピレンだ。ファブリックはナチュラルで暖かい雰囲気を醸し出しているが、これもリサイクル・ポリエステル100%の素材となっている。
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